キャリア戦略を見極めるための思考法。渋沢栄一が説く「3つの能力」に着目して

北野唯我さんインタビュー「キャリア戦略を見極めるための思考法」01

今後、どんなキャリアを築いていくべきか――。いま目の前にある仕事とは別に、ビジネスパーソンにとって考えるべき重要なことです。ただ、目の前の仕事の進め方は職場で教わることができても、キャリア戦略の考え方についてなかなか教えてもらうことはできません。

そのためのベースとなる思考法を教えてくれたのは、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」を運営する株式会社ワンキャリアの取締役であり、著書『これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本』(世界文化社)が話題となっている北野唯我(きたの・ゆいが)さんです。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

キャリア戦略を考えるうえで着目すべき3つの力

キャリア戦略を考えるとき、私は「知恵・情愛・意志」という3つの能力に注目することを提唱しています。これらの3つは、「日本資本主義の父」として知られる渋沢栄一氏が唱えたもの。それを、私なりに解釈しています。

1つめの知恵は、頭のよさや知識、そしていわゆるスキルのことです。どれだけ仕事に工夫をもたらすことができるか、という力と言ってもいいでしょう。2つめの情愛は、チームをつくる力や、チームのメンバーのことを思う力。リーダーシップもこれに含まれ、簡単に言えば人間的な魅力ですね。最後の意志は、「こういうふうにしたい!」という強い気持ちのこと。目標に向かうエネルギーや向上心も含まれます。

そして、「これら3つのうちどれか1つでも欠けると、長期的な意味では資本市場のなかで大きな成功をつかむことができない」と渋沢氏は述べています。

たとえば、知恵だけがあってほかの2つの力がまったくない人だとどうでしょう? 頭がよくスキルは高いのですから、短期的には成果を出せるかもしれない。でも、情愛に欠けているために敵をつくりやすく、周囲の誰かに裏切られることもあるでしょう。また、意志に欠けているため、大きな目標を達成するまでに至らず、途中で行き詰まってしまう可能性も。

北野唯我さんインタビュー「キャリア戦略を見極めるための思考法」02

「知恵・情愛・意志」の強さによる4つのキャリア戦略

もちろん、それぞれの力が「まったくない」といったことはそうないかもしれませんが、これら3つの能力のうち、「どれが強みになるか」という違いによって、キャリア戦略は変わってきます。具体的には、次の4つになります。

「知恵・情愛・意志」の強さによる4つのキャリア戦略

  1. 「スキル型」のキャリア:知恵を強みにしてキャリアを積み重ねていく方法
  2. 「チーム型」のキャリア:情愛を強みにしてキャリアを積み重ねていく方法
  3. 「意志型」のキャリア:意志を強みにしてキャリアを積み重ねていく方法
  4. 「バランス型」のキャリア:バランスを重視してキャリアを積み重ねていく方法

ただ残念ながら、自分がどのタイプかを見分ける方法をこの限られたスペースでお伝えすることはできません。それについては、私の著書『これからの生き方。 自分はこのままでいいのか? 問い直すときに読む本』(世界文化社)を読んでみてください。前半の漫画の部分を読んで「どの登場人物に共感できるか」を考えることで、自分のタイプを見極めることができる構造になっています。

とはいっても、上記の1~4を見てもらうだけでも、自分に近いタイプをイメージすることはできるでしょう。たとえば、自分のスキルを最大限に生かすことを重視してキャリアを構築したい人なら、スキル型である可能性が高いというわけです。みなさんはどのタイプが自分に近いと感じますか?

北野唯我さんインタビュー「キャリア戦略を見極めるための思考法」03

スキル型がぶつかりやすいキャリアの壁とその乗り越え方

「キャリア戦略」というキーワードが気になってこの記事を読んでくれているみなさんのなかには、もしかしたらスキル型の人が多いかもしれませんね。キャリアアップという個人の目標を強く意識するのは、やはり個人のスキルを重視している人が多いと推測します。

では、ここではスキル型の人がキャリア戦略を考えるうえで意識しておくべきことについて解説しましょう。重要なのは、次から次へとライバルが出現することが、スキル型のキャリア戦略において壁になりやすいということ。たとえば、弁護士や会計士などの士業の人にはそれこそ自分のスキルでキャリアを築こうとするスキル型の人が多いものですが、そういう職業には次々と若手が現れます。すると、どんな問題が起きるでしょう?

スキル型の人が若いときに顧客から選ばれる理由としては、「単価が安いから」であることも大きいはずです。もちろん、情愛の力にも長けていて顧客と良好な関係を築くことができれば、その後も長く選ばれる存在にもなれるでしょう。ところが、スキルにばかり頼っている場合、年齢とキャリアに応じて単価が上がってしまうと、徐々に顧客に選ばれなくなってしまうのです。

では、そういうスキル型の人はどうすべきか。私は、「応援したい人やテーマを見つける」ことを推奨します。そして、応援したい人やテーマを通じて自分がサポートできる、いわば得意分野を増やしていくことです。AI開発に携わっている人を「応援したい」と思ったなら、おのずとAIに対する知見も増えていきますよね。そうすれば、「AIに詳しい弁護士、あるいは会計士」になることができ、ほかのスキル型の人との差別化を図れるはずです。

北野唯我さんインタビュー「キャリア戦略を見極めるための思考法」04

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【プロフィール】
北野唯我(きたの・ゆいが)
1987年8月21日、兵庫県生まれ。神戸大学経営学部卒業。就職氷河期に博報堂へ入社。ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、採用DXサービスを提供する「ワンキャリア」に参画。現在、株式会社ワンキャリアの取締役として、人事領域、戦略領域、広報クリエイティブ領域を統括。また、テレビ番組や新聞、ビジネス誌など各種メディアに「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『分断を生むエジソン』(講談社)、『オープネス 職場の「空気」が結果を決める』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』(日経BP)、『このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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