ビジネスに必要な「直感」と「感性 」。アートを通して磨いていく方法があった!

アート思考の重要性を秋元雄史さんが解説01

ビジネスにおいて重要な思考とはどんなものでしょうか。一般的には、「ロジカル思考」がその筆頭に挙げられます。

しかし、新刊『アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』(プレジデント社)でも注目される、東京藝術大学美術館館長の秋元雄史(あきもと・ゆうじ)先生は、「ビジネスにおいては、アートの知識や考え方、つまり『アート思考』が重要」だと言います(『アートに全然興味ない人は “3つの力” が伸びない。』参照)。

アートというと、「直感」や「感性」が力を発揮する領域だと考えられますが、それらの力はどのように鍛えればいいのでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

アート思考の重要性を秋元雄史さんが解説02

「食い散らかす」感覚で幅広いアートに触れる

アートはスポーツと似ていると私は考えています。あるスポーツが本当に好きでどんなに努力をしたとしても、プロのスポーツ選手になれることは稀でしょう。それこそ、トップアスリートになれるのは、ひと握りの天才と言われるような人たちです。でも、私たち一般人もスポーツ観戦を楽しむことはできますよね? そのなかで、スポーツを見る目を養うこともできます。

アートだって同じです。表現する側のアーティストとして高く評価されるのはひと握りの人ですが、誰もがアート鑑賞を楽しむことはできる。そうしてアートに触れるなかで、アートを見る目が養われ、直感や感性が磨かれていくのだと思います。

また、あらゆるアーティストに共通しているのは、とにかく「好奇心」が旺盛だということ。たとえ一部のアーティストのような天才的な表現力は持ち合わせていなくとも、好奇心を持つことなら誰にでもできるでしょう。強い好奇心を持って、絵でも音楽でも貪欲に幅を持って触れることが大切なのです。

もちろん、あるジャンルに絞っていわゆるオタク的に知識を追究していくことも悪いことではありませんが、それだと磨かれる直感や感性の幅が狭まるということになってしまいかねません。

音楽なら、ある年代やジャンルの楽曲だけを聴くのではなく、昔のロックや歌謡曲から、いまのポップスも含めて、幅を持って触れることで、直感や感性の幅を広げることができるはずです。表現はちょっと良くないかもしれませんが、「食い散らかす」感覚でアートに触れることをおすすめします

アート思考の重要性を秋元雄史さんが解説03

直感に従うことでうまくまとめられた大仕事

もちろん、こうして磨かれた直感や感性は、さまざまな場面で生きます。ビジネスも間違いなくそのひとつでしょう。私自身も、直感に頼って仕事をすることがあります。

以前、私は建築家の安藤忠雄さんらと一緒に、瀬戸内海の直島に美術館をつくる仕事をしました。大変だったのは、どの作品をどう展示するかという調整です。どちらもメインを張れるようなビッグなアーティストがふたりいたために、どちらかを立てるということもできなかった。そのとき、どちらにどんな場所を提供してどう説得するかということさえ決めないままで、アーティスト本人に会ったその場で直感的に判断して交渉したのです。

そのときの私が考えたのは、相手を説得する会話の内容などではなく、どうすればふたりの作品が一番格好良く見えるかということでした。昔の怪獣映画は、人間にとって敵か味方かということなど関係なく、登場する怪獣たちのどれもが格好良く魅力的に思えるような見せ方をしていましたよね。例えるならそういう方法を考えて提案し、結果的にその仕事をうまくまとめられたわけです。

それこそ、どちらのアーティストをメインにするべきだということは、データなどで判断できるものではありません。直感や感性が力を発揮してくれた場面でした。

アート思考の重要性を秋元雄史さんが解説04

直感や感性に従って常識を疑う姿勢が求められる

私の仕事の例はちょっと特殊かもしれませんが、やったことは自分の直感に従ったというだけのこと。同じようなことは、どんな仕事であっても起こり得るはずですし、その直感に従うことが好結果を生むということもあるでしょう

たとえば、長く続いているビジネスなら、凝り固まった大前提のようなものがあるものです。そういった大前提は重要だからこそ残ってきたわけですが、直感や感性を働かせて、「本当に必要なものか?」と疑問を持つことも大切

もちろん、いきなり大前提のすべてを崩すことは難しいでしょうし、崩すにもやれる範囲とやれない範囲を考える必要はあります。それでも、今後は間違いなくそういう姿勢が大切になると見ています。というのも、時代が動くスピードがどんどん速くなっているからです。

時代が動くにつれ、それまでの正解が不正解になるのはよくあること。そして、これだけ時代が動くスピードが速くなっているなかでは、正解が不正解になるスピードも速くなっています。

常に正解であり続けるためには、これまでの常識を疑ってマイナーチェンジを繰り返さなければならない。そのとき、常識を疑う直感や感性がものを言うのです

そして、その直感と感性を磨くためには、やはり好奇心を持っていろいろなものに触れることが大切です。とは言っても、「触れなければならない」なんて思っていては楽しくありません。そこでぜひ、「おもしろがる」姿勢を意識してほしい。

「現代アートなんてわからないよ」と言う人もよくいますが、そういう人の大半は、わからないというより「わかりたくない」と思っているだけのように思えます。それこそ、自分と趣味がまったく違う人には話しかけないようなことと同じです。

でも、おもしろがる姿勢で話しかけてみれば、意外に興味深い部分が見えてくることもよくありますよね? そんな感覚で幅広いアートに触れ、直感や感性を磨いてください。

アート思考の重要性を秋元雄史さんが解説05

【秋元雄史さん ほかのインタビュー記事はこちら】
アートに全然興味ない人は “3つの力” が伸びない。
日本の経営者たちも好む現代アートには「心のストレッチ」の作用がある。

【プロフィール】
秋元雄史(あきもと・ゆうじ)
1955年生まれ、東京都出身。東京藝術大学美術館館長・教授。東京藝術大学美術学部卒業後、作家として制作を続けながらアートライターとして活動。1991年、新聞の求人広告を偶然目にしたことがきっかけで福武書店(現ベネッセコーポレーション)に入社。「ベネッセアートサイト直島」として知られるアートプロジェクトの主担当となり、開館時の2004年より地中美術館館長、公益財団法人直島福武美術館財団常務理事に就任し、ベネッセアートサイト直島・アーティスティックディレクターも兼務する。2006年に同財団法人を退職し、翌2007年に金沢21世紀美術館館長に就任。10年間の勤務ののちに退職し、現在は東京藝術大学美術館館長・教授、及び練馬区立美術館館長を務める。『一目置かれる知的教養 日本美術鑑賞』(大和書房)、『武器になる知的教養 西洋美術鑑賞』(大和書房)、『直島誕生 過疎化する島で目撃した「現代アートの挑戦」全記録』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『おどろきの金沢』(講談社)、『日本列島「現代アート」を旅する』(小学館)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト