ビジネスパーソンには、頭の回転の速さが求められるシーンが多いと思います。
例えば、「では、今から5分間で、できるだけアイデアを出してください」といきなり言われたとき。みなさんは思考停止せずに、いくつのアイデアを考えることができますか? いきなりそんなこと言われても、難しいですよね。
また、会議でほかのメンバーはポンポン意見を言っているのに、自分はなかなか頭の回転がついていかず、どうも議論に取り残されてしまう、という経験をしたことのある人もいるかもしれません。
こうした場面でものを言うのが、頭の回転速度です。頭の回転が速くなりたくても、そう簡単に速くできるものではない、と思えるでしょう。しかし、実はそんなことはありません。頭の回転速度は、ノートの書き方を工夫するだけで、簡単に鍛えられるのです。
今回は、頭の回転を速くするためのノート術について考えてみたいと思います。
ノートを見れば、その人の思考回路が分かる
ビジネスパーソンならば必ず1冊以上はノートを持ち、仕事に使っているでしょう。そのノートの中身はどうなっていますか? 言われたこと、ホワイトボードなどに書かれていたことをそのまま走り書きしたものでしょうか。それとも、項目ごとに場所を区切ったり、図を使ったりしながら、丁寧な字で書かれたノートでしょうか。
実は、ノートのまとめ方には、書いた人の思考回路がそのまま表れるといわれています。リクルートグループで人材の採用や転職支援に携わり、営業成績トップの実績を挙げてきた森本千賀子さんは、このことについて次のように語ります。
ノートのまとめ方は、その人の思考回路そのものです。自分なりの論理で要約したり、フレーム化することもなく、「聞いたまま」を雑然と記すだけではビジネススキルを疑われます。
(引用元:名言DB|森本千賀子の名言)
内容を整理せずにとりあえず書いたようなノートでは、後で見直しても意味が分からないということは起きがちです。思考がまとまっていないから、ノートに書く内容も雑然としてしまう。だから、後から見ても何のことだか分からなくなってしまうのです。
これは、仕事に限らず学生が勉強で取るノートでも同じことが言えます。講義の話を話をよく理解できていないまま書き留めたノートは、後から見返しても、どんな内容だったのかしっかり思いだすことはできないものですよね。また、レポートに書く内容がまとまらず、考えが散漫になりながら書いたノートには、頭の中の混沌ぶりが表れているでしょう。
このように考えると、整理されたノートを書くことができるということは、つまり、頭の中もすっきりと整理されている状態であることが分かります。したがって、頭の回転を速くするためには、情報が整理されたノートを素早く書けるようになればよいのです。
では、頭の回転を速め、整理されたノートを素早く書くには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか?
ノートのサイズはA4以上
まず気をつけたいのは、ノートのサイズ。
B5サイズやA5サイズのように、コンパクトなもののほうが持ち運びには便利ですよね。筆者もそうですが、小さめのノートを愛用しているという人は多いと思います。
しかしながら、マインドマップやゼロ秒思考などといった有名な思考整理ツールでは、多くの場合、A4やそれ以上の大きさの紙を使うことが推奨されているのです。また、トヨタの資料ではさらに大きいA3の紙を使っていて、有名な経営コンサルタントである大前研一氏はA2の模造紙を使っているのだそう。
数々の思考法で大きい紙を使うことが推奨されているのは、大きい紙を使えば、全体像が一目で分かるようにまとめることができるからです。
記憶力などを高める「青ペン学習法」を考案した相川秀希さんは、仕事には大きい紙を使うことが有効であるとし、その理由を次のように話しています。
ひとつのテーマが複数のページにわたっていると、ノートをめくって、行ったり来たりする必要が出てきます。すると内容が俯瞰できないため、理解力が落ちてしまうのです。(中略) たとえばロジックツリーなどを書くとき。ページが3ページ、4ページ……と複数の見開きにまたがると、、関係性がわかりにくくなり、思考が妨げられる。
(引用元:東洋経済ONLINE|頭のいい人は「青ペン×A3見開き」だった!)
道に迷ったとき、私たちは大きな地図を見ることで、自分の現在位置から目的地までの道筋を一目で理解します。同様に大きなノートを使うことによって、物事の全体を俯瞰してとらえられるため、項目間の関係がつかみやすくなり、思考が整理しやすくなるのです。
ただ、A4以上のノートは、大きくて持ち運びが面倒だと思います。そのため、例えばスケッチブックのようなA3サイズのノートを使う場合は仕事場や家のなか限定にし、持ち運ぶノートは見開きでA3の大きさになるA4サイズのノートにするとよいでしょう。
内容は、1ページを分割してまとめよう
用紙のサイズも大事ですが、肝心なのはノートの中身ですよね。頭の回転を速めるノートを書くには、ノートの1ページを分割して、情報を整理して書くのが有効です。
『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』の著者である高橋政史さんは、ノートをルールに従って分割することで、論理展開のわかりやすいノートを作ることができると述べています。
方眼ノートで、本棚の仕切り棚のように「3分割」して「黄金の3分割」というルールでノートをとることで、後から振り返っても、右から論理の展開がひと目でわかるように書かれたノートになるんです。(中略)「黄金の3分割」とは、「事実・解釈・行動」の3つのスペースに分けて情報を整理する「思考のフォーマット」です。
(引用元:ダイヤモンド社 書籍オンライン|頭がよくなるノートのとり方、教えます!)
例えば、ビジネスパーソンのあなたが「最近、読書できていない」という問題を解決したい場合は、ノートを分割して左・真ん中・右のスペースを作り、次のようにノートを書いて解決策を考えてみましょう。
3分割した一番左のスペースに、 ・するべき仕事が多い ・飲み会が多く、夜に空いている時間がない など、事実を列挙します。重要なのは、自分の意見ではなく、問題点そのものを書き込んでいくことです。
真ん中のスペースには、左に列挙した事実をもとにして、 ・すべきことが多すぎるから、読書できる時間がない と、自分なりの考えや解釈を書き込みます。
一番右側のスペースに、 ・飲み会の数を減らす ・仕事を手伝ってもらう など、これからとるべき行動を書き込みます。
このようにしてノートを作れば、左から順に論理が進むため、非常にわかりやすく整理されたノートになるのです。
この方法は応用がきき、「黄金の3分割」に加えて見出しやまとめのスペースを取り5分割する方法や、同じ3分割でも「板書・気づき・要約」に分割することで、セミナーなどのノートを整理して書くこともできるのだそう。
いずれの方法でも、大切なのはノートをルールに従って分割すること。そうすることで、わかりやすく整理されたノートを書くことができますよ。
*** 今回紹介したように、なるべく大きなノートを用意し、1ページを分割してノートを書くことによって、整理された分かりやすいノートをとることができます。そして、整理された分かりやすいノートを早く書けるようになれば、きっと頭の回転も速くなるはずです。ぜひ試してみてください。
なお、「勉強ノート術7選! 東大生・京大生おすすめ」では、ほかのノート術も紹介しています。ぜひご参照ください。
(参考) 名言DB|森本千賀子の名言 東洋経済ONLINE|頭のいい人は「青ペン×A3見開き」だった! ダイヤモンド社 書籍オンライン|頭がよくなるノートのとり方、教えます! PRESIDENT Online|デキる人は方眼ノートをなぜ「5分割」するのか KOTB|【おすすめ】方眼ノートの書き方、使い方とは? リクナビNEXTジャーナル|A4の裏紙一枚で頭スッキリ! モヤモヤをなくし、即断即決できるようになる「ゼロ秒思考」 横田伊佐男著(2015),『一流の人はなぜ、A3ノートを使うのか?:すべてを“紙1枚”にまとめる仕事術』,学研プラス.