同じような情報を伝えているはずなのに、時と場合によって受け取られ方が違う……。こんな経験をしたことがある人はいませんか?

例えばちょっとしたミスを報告する場合。あるときはこっぴどく叱責されたのに、あるときは怒られるどころか優しくアドバイスまでされた……。あるいは同僚や上司に仕事上の相談を持ちかける場合。あるときは煙たがられて相手にすらしてもらえなかったのに、あるときは親身になって対応してくれた……、などですね。

じつはここには、相手の“感情”が大きく作用しています。そこで今回のテーマは「感情と意思決定の関係」。他者との交渉をスムーズに進めたり、正しい行動を選択できるようになったりするうえで、この関係性に着目するのはとても効果的なのですよ。

感情が異なると意思決定も異なる

同じような情報を伝えているはずなのに相手がそのときに抱いている感情によって反応が違ってくるというのは、きっと多くの人が日常生活の中ですでに実感していることだと思います。特に、頼みづらいことを頼んだり、言いにくいことを言いたい場合は、相手の機嫌がよさそうな頃合いを見計らって伝えに行きますよね。それは、相手の機嫌がよいときのほうが自分の頼みごとや意見を受け入れてもらいやすいことを経験的に学習しているからにほかならないのです。

人間が感情に少しも左右されることなく物事を合理的に判断できるのであればなにも問題はないのでしょうが、そうはいかないのが現実です。そのため、相手になにかを伝えたい場合は、相手の感情に注意をはらって適切に行動することが重要になってくるのです。

そしてこの“意思決定が感情に左右される”というのは、自分自身についてもいえること。わくわくしているときにはリスクを顧みずになんでも軽いノリで決めてしまう一方で、落ちこんでいるときにはリスクばかりが目についてなかなか行動に移せない、などがわかりやすい例でしょうか。感情の影響を過度に受けると、合理的な判断ができなくなってしまうこともあるのです。

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感情別に見る意思決定の傾向

他人に頼み事をしたり、他人とうまく交渉したり、あるいは自分が感情に左右されずに合理的な意思決定をしたりするためには、まずはどのような感情がどのような意思決定につながりやすいのかを知っておく必要があります。ここでは行動経済学の研究をもとに、怒り、恐怖、悲しみといった感情と意思決定の関係性について見ていきましょう。

まず、怒りの感情はリスクを取りやすくさせる傾向にあります。つまり、例えそれが不確実なことであったとしても、確実性が高いと判断してしまうのです。また、周囲の物事を自分で統制できるかのような感覚を抱いてしまう、責任転嫁に陥りやすい、なども特徴として挙げられます。

次に恐怖の感情ですが、こちらは怒りの感情とは対照的に、リスクを大きく感じさせ、自分が周囲の物事を統制しているという感覚を減少させる傾向があるそうです。そのためリスク回避型の行動を取りやすくなると同時に、直観よりも理論に基づいた意思決定を行う傾向が強くなります。

最後に、悲しみの感情を持つと、自分で統制できるという感覚が減少するうえ、短期的視野を持つようになるそう。また、他人を信頼しなくなり、結果として他者と協力することを回避するようにもなってしまうそうです。

このように、感情と意思決定の間には密接な関係があるのです。

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感情と意思決定の関係を活かす

さてここからは、上で述べた感情と意思決定の関係を活かして物事を上手に進めていく際のコツを、具体的なシーンを挙げながら3つ紹介していきます。

1. 相手に何かを頼むとき
相手が今どのような感情を抱いているのかを事前に把握しておきましょう。特に、機嫌が悪い、誰かを叱った直後である、など怒りの感情を持っていそうな場合は要注意。その状態で頼みごとをしてしまうと、例え相手の怒りの原因が自分でなくても、責任転嫁をされて怒りの矛先が自分に向けられてしまうかもしれません。

このような場合は先を急がず、怒りの感情が鎮まるまで待ちましょう。相手の感情が正常な状態に戻ってから物事を頼むことで、不要な衝突を避けることができます。

2. ハイリスク・ハイリターンなプランを提案するとき
このような場合は、リスクよりも先にリターンを伝えるようにしましょう。なぜならば、リスクばかりを先に伝えてしまうと、相手に恐怖の感情を植えつけてしまうことになるから。恐怖の感情はリスクを大きく感じさせます。そのため、例え成功したときにいかに大きなリターンが得られるかをそのあとに説明しようとしても、リスク回避型の選択を取りやすくなっている状態では、提案を受け入れてもらいにくいのです。

したがって、リターンのほうを先に強調することで、リスクの大きさによる恐怖を先に相手に感じさせないように配慮することが重要です。そうすれば、相手の感情に影響されずにスムーズな提案ができるようになります。

3. 自分の感情を客観的に眺める
当然ですが、この「感情と意思決定の関係」は自分のことについても適用できます。特に、なにか重要な物事を判断しなければいけないときは、自分が今どのような感情を抱いているのかをまずは客観的に眺めてみるようにしましょう。

例えばなにかに怒っているときには、リスクをあまり感じないため、リスクのある判断をしがちになってしまいます。普段の正常な状態で考えていれば絶対に取らないであろう向こう見ずな選択や行動をして、あとで後悔する、というのは避けたいところですよね。そのためには、自分の中にある感情を客観的に認識することが大切です。

そしてそれらの感情が意思決定に及ぼす影響を考慮したうえで、改めて物事を判断するようにしましょう。もしもそれらの感情にあまりにも強く支配されている、と感じた場合は、判断を先送りにしてしまうのも手です。そうすることにより、ミスや後悔を防ぐことができます。

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人間は合理的な生き物だといわれますが、私たちが思っている以上に感情に左右されるもの。よい意思決定を行うために、相手や自分の感情を普段からしっかりと意識してみるようにしましょう。

(参考)
日本経済研究センター|経済学で「怒り」とつきあう 大竹文雄の経済脳を鍛える
第6章 行動経済学の挑戦|京都大学大学院経済学研究科教授 依田高典
DIAMOND Online|「罰ゲーム」の経済学ーーコミットメント・メカニズムで「不合理な自分」を変える!