『逃走中』の企画はこうして実現した。「周囲に差をつける企画」に絶対不可欠な要素とは

高瀬敦也さん「周囲に差をつける企画に絶対不可欠なもの」01

ありきたりの企画と、「周囲に差をつける企画」——両者を分けるものとはなんでしょうか。一流の企画者が練った企画であれば、企画書を見た瞬間に「これはすごい!」と思わされるようなこともありそうです。

ところが、フジテレビ在職中にテレビ番組『逃走中』などをヒットさせたことで知られるコンテンツプロデューサーの高瀬敦也(たかせ・あつや)さんは、「アイデアレベルでそう思われるような企画はほとんどない」と言います。『逃走中』の企画が生まれた経緯と絡めながら、「周囲に差をつける企画」に欠かせないものを解説してくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

『逃走中』はサッカー中継のカウントダウンから生まれた

私がフジテレビ在職中に企画したバラエティー番組『逃走中』は、「ハンター」と呼ばれる黒いスーツ姿のアスリートから出演者が逃げるという、簡単に言うと大規模な鬼ごっこです。でも、その着想のスタートは、鬼ごっこではありませんでした。企画の取っかかりとなったのは、サッカー中継で観た試合の残り時間のカウントダウンです。

いまのサッカー中継では試合の残り時間はカウントアップ方式で表示されますが、当時はカウントダウン方式でした。観ていたその試合はさほど興味があるものではなかったものの、カウントダウン方式だからこそ「あと3分だったら最後まで観るか」と思ったのです。

いまでこそバラエティー番組などで、「○○まで30秒!」といったあおりがよく見られますが、当時はまだありませんでした。そこで、カウントダウンだけで視聴者の興味を引っ張り続けられる番組をつくったらおもしろいのではないかと考えたのです。

でも、視聴者が知らないことをやっても響かないでしょうし説明にも手間がかかります。リストアップした「誰もが知っているもの」のなかのひとつが、鬼ごっこだったというわけです。

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企画に差を生む最大の要素は、企画を実現させる「突破力」

私には、「ゼロから1は生まれない」という考え方のベースがあり、あらゆる企画は既存のものを結びつけたものに過ぎないと思っています(『“企画ストック数1万以上” の凄腕が教える「企画を出せる人・出せない人」の決定的違い』参照)。『逃走中』であれば、ただ「カウントダウン」と「鬼ごっこ」を結びつけただけのことです。

この結びつきを見てもらえればわかると思いますが、じつはアイデアの段階から「この企画はすごい!」「すごいことを思いつくなあ」なんて周囲から思われるようなことはほとんどありません。

では、企画というものはどこで差がつくのでしょうか? それはもう「結果」しかありません。最初は「こんなものがウケるはずがない」と周囲のみんなに思われた企画であっても、ヒットさせてしまえば勝ちです。

そう考えると、「何がなんでも企画を通すんだ!」「どんな手を使ってでも実現させるんだ!」という、ラッセル車(※)のような「突破力」こそが周囲に差をつける一番の要素ではないでしょうか。企画を通して実現することができなければ、結果を出すことは絶対にできないのですからね。(※雪をかき分けながら進む除雪車)

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『逃走中』の企画実現の裏にあった、しつこさや泥臭さ

そんな突破力を身につけるには、もう諦めないということに尽きます。フジテレビ在職中の私の場合もそうでした。『逃走中』に限らずほとんどの企画は、最初はボツにされています。

それでも、しつこく上司や上層部に提案を続けるのです。『逃走中』の企画を提案していた当時は、BSフジに地上波のためのパイロット番組を放送する枠がありました。一般の視聴者にはほとんど気づかれない、地上波で放送するかどうかのお試し番組というわけです。そして、私があまりにしつこいものだから、「だったら、そのお試し枠でやらせてやるよ」と上層部は根負けしてくれました。

そのあとに地上波の枠をもらったものの、それもまた人知れず放送されるような単発の深夜枠でした。『逃走中』は、いまでこそ人気コンテンツのひとつに成長しましたが、その裏にはそんなしつこく泥臭い提案の繰り返しがあったのです。

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しつこさや泥臭さは、若い世代こそ発揮できるもの

しつこさだとか泥臭さというと、スマートに格好よく働きたいなんて思う若い世代にはなかなか響かない言葉かもしれません。でも、みなさんが企画で周囲に差をつけたいと考えるのなら、これは絶対に欠かせないことです。

私はユーチューバーのアドバイザーという仕事もさせてもらっていますが、本当に強く感じるのは、「みんな、諦めが早すぎる」ということ。ヒカキンさんだって中田敦彦さんだって、人気ユーチューバーに至るまでには長い時間がかかっています。でも、ほとんど誰も観ていないという時期にだって、とにかく動画をアップし続けたからこそいまがあるのです。

でも本来は、若い人こそしつこさや泥臭さを発揮できるのだと思います。私の場合、徐々に年齢を重ね、しつこさより合理性を優先しようとしてしまうこともあります。過去の経験や経営者という立場から、「この企画に必要な時間が200時間で、収入につながる確率が5%だとすると……これはやめておこうか」なんて考えてしまうこともあるのです(苦笑)。

もちろん、そのたびにしつこさや泥臭さの重要性をあらためて自分に言い聞かせているのですが、若いみなさんの場合ならそんな必要もありません。若い身体に宿るありったけのエネルギーと情熱を注いで、しつこく泥臭く自分の企画の実現に向かって突っ走ってほしいと思います。

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【高瀬敦也さん ほかのインタビュー記事はこちら】
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企画 「いい企画」なんて存在しない

企画 「いい企画」なんて存在しない

  • 作者:高瀬 敦也
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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【プロフィール】
高瀬敦也(たかせ・あつや)
1975年11月16日生まれ、東京都出身。コンテンツプロデューサー。株式会社ジェネレートワン代表取締役CEO。フジテレビ在職中に『逃走中』『ヌメロン』『有吉の夏休み』などを企画。プロデュースしたゲーム版『逃走中』は累計100万本を達成し、「ヌメロンアプリ」は350万ダウンロードを記録。アニメブランド「ノイタミナ」を立ち上げ、「ノイタミナ」を命名。独立後は多分野でヒットコンテンツを企画。「とにかくつくって世に出しまくること」を信条とする。漫画・絵本原作脚本執筆、オリジナル家具ブランド「notos」の運営の他、ボディーチューニングブランド「DEMENSIONING」やソフトウェアプロダクション「POSTURBAN」を共同創業するなど幅広く活動。また、他業種にわたって新事業・商品企画、広告戦略策定などコンサルティング業務も行なっている。著書に『企画 「いい企画」なんて存在しない』『人がうごくコンテンツのつくり方』(ともにクロスメディア・パブリッシング)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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