悪口を言いたいときの「賢い行動」3つ。“悪口ばかり” も “全然言わない” のもどちらも信用されない

悪口を言いたいときの「賢い行動」3つ。“悪口ばかり” も “全然言わない” のもどちらも信用されない

相性のいい人もいれば、反りが合わない人もいるのが職場。そのなかで、不満や愚痴を我慢したまま日々モヤモヤしてはいませんか?

「人の悪口を言う」ことは、世間一般では悪いことと思われがちですが、じつは意外にもそうとは言いきれないようです。

今回は、人の悪口を “言う“ ことのデメリットと、“まったく言わない“ ことのデメリットについて解説します。私たちは、どのように悪口を扱っていけばいいのでしょうか。

人の悪口を「言う」ことのデメリット

人の悪口を言うことは「道徳的に」よくない、というのはうなずけます。しかし、あまり知られていないかもしれませんが、悪口は実生活にも悪影響をもたらすのです。

周囲からの評判を落とす

株式会社Rising Star代表取締役でビジネスコンサルタントの星渉氏は、ほかの人の悪口や批判を言ってばかりいると、周囲から「人の悪口を言う人だ」と認識されると指摘。

その結果、「私がいないところでは、私の悪口を言っているかも」という疑念を他人に抱かせてしまい、心を開いてくれる人がいなくなるのだそう。

誰しも、自分を攻撃してくる人のことは避けたいもの。悪口を言う癖は、信頼してくれる人を失うという悲しい結果を招きかねないのです。

人の悪口を「言う」ことのデメリット

「悪口依存症」に陥ってしまう

さらに、脳科学的にも悪影響があります。精神科医の樺沢紫苑氏によると、悪口には「依存症に陥りやすい」という問題点があるそう。

樺沢氏いわく、誰かの悪口を言うとドーパミンが放出されるとのこと。ドーパミンとは、やる気や快楽に関与する神経伝達物質です。つまり、人は悪口を言うと快楽を感じやすく、しだいに、より過激な悪口を言わずにはいられなくなるのです。

脳や心の健康を損なう

悪口に依存することで長期的に被る悪影響も、見過ごせません。東フィンランド大学の研究によると、世間や他人に対して批判的傾向の強い人は、認知症のリスクが3倍も高いことが判明。

また、樺沢氏によれば、悪口を言うと同時にストレスホルモンであるコルチゾールも分泌されるとのこと。ストレスが健康に害を与えることは言うまでもありません。

イライラするからといって悪口で発散しようとしても、結局はストレスをためるだけ。悪口に依存することの危険性が、おわかりいただけたでしょうか。

人の悪口を「まったく言わない」ことのデメリット

「悪口はよくない」という世間一般的な認識とは逆に、じつは「悪口をまったく言わない」ことにも意外なデメリットがあります。

「信念のない人」とみなされる

「人の悪口を言わないような人間は信用できない」――この名言を残したのは、プロ野球界の名将・野村克也氏。野村氏は、「悪口を言うか・言わないか」を信用度をはかるバロメーターとして使っていたのだとか。

野村氏が、悪口も言える人を信用していたのには、明確な理由があります。

周囲との対立を極端に避ける人間は、自分の意見を押し隠したり、相手によって意見を翻したりする傾向がある。その人の本心が読み取れなければ、信用するかどうかの判断もできないではないか。もちろん悪口の内容にもよるが、ただ批判するだけでなく、十分に信用に足る意見なら、わたしはいつも耳を傾けていた

(引用元:STUDY HACKER|「人の悪口を言わない人間」を絶対に信用してはいけないワケ。

野村氏の言う悪口とは、人をおとしめるものではなく、その人なりの視点や考え方から出てきた「健全な批判」のことです。他人に同調して本心を隠すだけの人か、「信念に基づく批判」を妥協せずに言える人か。信頼に足る人物と評価されるのは、明らかに後者なのです。

人の悪口を「まったく言わない」ことのデメリット

仲間とより親密になれる

また、心理学の観点で考えると、悪口を言うことは、必ずしもマイナスなコミュニケーションではないようです。立正大学名誉教授で日本ビジネス心理学会会長の齋藤勇氏は、悪口を共有することは親密度を高める効能もあると言います。

通常の人間関係は「悪口を言ってはいけない関係」なのです。その中で悪口を言うということは、言った相手を信用しているという意味になります。つまり、秘密を共有することになるんですね。逆説的ですが、悪口を共有することは親しみや信頼の元なのです。

(引用元:adv.yomiuri|心理学から見た悪口の効用・活用法

この根拠として齋藤氏が挙げるのが、アメリカの心理学者フリッツ・ハイダー氏が提唱した「バランス理論」です。これによると、考え方や好みが一致する相手との関係は良好になるのだとか。

たとえば、AさんとBさんが、Xさんに対しともにプラスの評価をしている場合、AさんとBさんは仲良くなれるということ。Xさんに対する評価がともにマイナスの場合でも、同じことが言えるそうです。そして、AさんとBさんの関係が最もよくならないのは、Xさんに対しお互いが別の評価をもっている場合なのだとか。

ハイダーのバランス理論

(画像は「adv.yomiuri|心理学から見た悪口の効用・活用法」を参考に筆者にて作成)

まわりの人も感じていそうな仕事上の不満をもらしたり、お互いが共感できるようなたわいもない悪口を仲間内で言う程度ならば、有効なコミュニケーションになりえるのですね。ただし、当然ではありますが、過度な中傷は禁物ですよ。

悪口を言いたくなったらどうすればいいか?

人の悪口は、感情任せに言っても、ひたすら我慢して言わなくても、どちらにもデメリットがあるとわかりました。では、「批判したい」「悪口を言いたい」という気持ちが湧いてきたときは、どうすればいいのでしょうか。

【1】相手に悪口を言いたくなった場合「質問で返す」

嫌味や納得のいかないことを言われて、言い返したい……。

そんなときは、言われた事実を質問で返すのが有効です。精神科医のゆうきゆう氏いわく、相手が攻撃心から放った言葉は、じつは言った本人自身が抱えている不満なのだとか。

たとえば、たいして仕事が速いわけではない人から「あなたはいつも仕事が遅いね」と言われたとしたら、そう言ってきた当人も「仕事がなかなか進まない」ことをコンプレックスに思っているということ。

そこで、「すみません、明日までにやりますね。ところで〇〇の件はどうなりましたか?」と質問形式で突いてみるのです。決して「仕事が遅いのはそっちでしょう」と悪口で返すことはしません。

こうすれば、悪口をはっきり言ったことにはならないので、言い合いにならずにその場を収めることができるそうですよ。

【2】雑談で悪口を言いたい場合「言い方に注意する」

先述のとおり、悪口は時にコミュニケーションを円滑にしますが、もし雑談で悪口を言う場面になったら注意が必要。自分の発言に責任をもつようにしましょう。

『大人らしく和やかに話す 知的雑談力』の著者であり国語講師の吉田裕子氏は、以下の注意点を挙げています。

  1. 人と出来事を切り離す
    「もっと早く言ってくれたら対処できたのに。優しい人なんだけどね」「頭のいい人なんだけど、あの言い方は失礼だと思う」など、人と出来事を切り離して語ること。悪口で人格を攻撃してはいけません。

  2. 自分の落ち度も言う
    「あの時点で報告くれたらよかったのに。たしかに私も忙しくしてたけど……」など、自分の側の欠点・落ち度も言うこと。攻撃的な印象が和らぐほか、相手の非だけでなく自分の非も認められる「バランスのとれた人物」に見えます。

  3. 「共通の敵」の悪口にする
    「〇〇さんは……」という主語を「“上の人” は判断を変えがちだから困るな」というように、対象を少し広げて言い換えること。個人ではなく、周囲が共感できる大きな敵の悪口であれば、聞き手も受けとめやすくなるそうです。

【3】直接言えない場合「紙にアウトプットし、客観視する」

もちろん、その場で言うことだけが対処法ではありません。悪口を言えないけれど、モヤモヤが収まらない場合には、悪口を紙に書き出してみましょう。これをすすめるのは、脳科学者の中野信子氏です。

中野氏によれば、嫌な気持ちを抱えたままでいると、物を考えるときに使う脳のワーキングメモリが狭くなり、冷静に振り返る余裕がなくなるのだそう。そこで、不快な気持ちを文字に置き換えると、脳が処理しやすい “記号” に変わり、冷静に客観視することができるのだとか。「なぜ、こんなにあの人を嫌いになるのだろう?」「イライラの底にはこんな気持ちがあったんだ」と新たな気づきを得られるのです。

悪口を言いたくなったときの葛藤に自分で対処できれば、自然と心に余裕をもてるはずですよ。

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悪口をプラスに扱えるかマイナスに扱えるかは、言い方次第です。くれぐれも、ただの “悪口ばかり言う人” にはならないよう気をつけてくださいね。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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