「人の悪口を言わない人間」を絶対に信用してはいけないワケ。

プロ野球界を代表する名将・野村克也さん。データを駆使した「ID野球」の他、歯に衣着せぬ物言いでもおなじみです。

プロ野球チーム・楽天の監督を務めた2009年を最後に一線から退いたものの、いまも多くの野球ファンから厚い支持を集めるのが野球解説者としての「ぼやき」解説。球界きっての理論派だけに、現役選手の「理解できない」プレーには厳しく苦言を呈します。ただそれは、野村克也さんがより良い人間関係を築くために貫いてきた姿勢によるものなのです

構成/岩川悟、清家茂樹(ESS) イラスト/小西真樹

美辞麗句を並べる者に ろくな者はいない

かつてに比べ現代社会においては、どうも口が達者で、如才なく立ち回れる人間が得をする傾向がある。才気煥発であることがもてはやされて、人物の器さえないがしろにされてしまっているのだ。それがますます強くなっているような気がして心配でならない。

こちらの調子がいいときにすり寄ってきてご機嫌を取り、おべんちゃらを次々と口にするような連中とつきあっても、後々、掌を返されて不快な思いをしたり、痛い目に遭ったりするのは自分自身に他ならない。

そういう連中は、金儲けに利用しようと考えているか、面倒を見てやったと自己満足に浸りたいだけなのだ。うまい話には裏があるように、調子のいいことばかり言う連中には、なにかしらの思惑があることが大半だろう

人間、チヤホヤされるのはたしかに心地いいことかもしれない。ましてや、自分が調子のいいときにもてはやされると、噓だとわかっていてもうれしくなってしまうものだ。しかし、そういうときほど一歩引いて、自分と相手をしっかりと見るべきだろう。

美辞麗句を並べる者にろくな者はいない真実味も徳もない

このような者はできるだけ遠ざけるべきだとわたしは思っている。

人の悪口を言わないような人間は、 信用するに値しない

わたしは、人の悪口を言わないような人間は信用できないと考えている

悪口というのは、その人なりの視点や考え方があるからこそ出てくるものである。つまり、その人は、対象となる人物や事象に対してしっかりと自分の考え方を持っており、本心を語っていると捉えることができる。自分の本音をまったく言わない人間よりも、そういう人のほうがわたしは信用できる。

人の悪口とは、本来は否定的なものであるが、わたしは、悪口を言うか言わないかを信用度をはかるバロメーターとしても使っている。周囲との対立を極端に避ける人間は、自分の意見を押し隠したり、相手によって意見を翻したりする傾向がある。その人の本心が読み取れなければ、信用するかどうかの判断もできないではないか。もちろん悪口の内容にもよるが、ただ批判するだけでなく、十分に信用に足る意見なら、わたしはいつも耳を傾けていた

たしかに、反対意見や批判的な意見を言うのは気が引けるものだ。場の雰囲気を乱すことだってある。しかし、相手の顔色を窺っていては正しいことさえ伝えられなくなる。特にリーダーと言われる人は、相手が誰であれ「わたしはこういう考え方だ」という明確な哲学を伝えるべきである。たとえ陰で文句を言われようとも、そこを妥協してはならない。

*** 協調性があることが美徳とされ、人との「和」を重んじる傾向が強い日本人には、他人に面と向かって反対意見を言うことに抵抗を感じる人も多いでしょう。でも、野村さんはなにも「誰彼構わず食ってかかれ」と言っているわけではありません。その真意は、「自分に正直であれ」ということ。

自分の意見を押し隠し、周囲の雰囲気や状況によってときに嘘をつく人間より、常に正直な人間のほうが信用を得るのは当然のことです。そして、自らの意見を口にするためには、自身の確固たる考えがなくてはなりません

周囲の信用と自らの考え――。社会人として成果を出し、ステップアップしていくためにも重要なものであるはずです。

※今コラムは、『野村四緑 不惑の書~生涯現役の理念~』(セブン&アイ出版)をアレンジしたものです

【野村克也さん『人生強化塾』シリーズ ほかの記事はこちら】 成長し続ける一流、失敗を繰り返す二流……決定的な差を生む2つの思考習慣。 “最強の知将” 野村克也はメモ魔だった。「紙に書く」がスキルアップに効く納得の理由。

【プロフィール】 野村克也(のむら・かつや) 1935年、京都府に生まれる。京都府立峰山高校を卒業し、1954年にテスト生として南海ホークスに入団。3年目の1956年からレギュラーに定着すると、現役生活27年にわたり球界を代表する捕手として活躍。歴代2位の通算657本塁打、戦後初の三冠王などその強打で数々の記録を打ち立て、MVP5回、首位打者1回、本塁打王9回、打点王7回など、タイトルを多数獲得。また、1970年の南海でのプレイングマネージャー就任以降、延べ4球団で監督を歴任。ヤクルトでは「ID野球」で黄金期を築き、楽天では球団初のクライマックスシリーズ出場を果たすなど輝かしい功績を残した。現在は野球評論家として活躍中。

『野村四録 不惑の書 生涯現役の理念』

野村克也

セブン&アイ出版(2018)

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