バンドワゴン効果とは? 販売成績を上げる3つのテクニック

バンドワゴン効果とは1

バンドワゴン効果とは「人がもっているものを欲しくなる」「多くの人が支持している商品に価値を感じる」という心理現象です。友だちのもっているゲームが欲しくなったり、行列のできている店に入ってみたくなったり経験は、あなたにも少なからずあるはず。

バンドワゴン効果を利用すれば、消費者の購買意欲をかき立てるような効果的なマーケティングを打ち出せますよ。今回は、バンドワゴン効果の意味と具体例、アンダードッグ効果やスノッブ効果との違い、そしてビジネスにおける活用法を詳しく紹介していきます。

バンドワゴン効果の概要

バンドワゴン効果とは、ある選択肢が多数の人に支持されていることで、その選択肢がさらに選ばれやすくなる現象。

たとえば、ラーメン屋さんなどに行列ができていると、通りかかった人が「きっとおいしい店なんだろう」と判断して、さらに行列が長くなっていくことがあります。私たちの心理は、「多数の人が支持しているのなら、きっと良いもののはずだ」と判断し、つい便乗したくなる傾向があるのです。

ほかには、「人気ナンバーワン!」と書かれた商品が良いものに思えたり、ちまたで流行している商品につい手が伸びてしまったりすることも、バンドワゴン効果の例として挙げられるでしょう。

小学館の「デジタル大辞泉」によれば、バンドワゴンとは「パレードの先頭をゆく楽隊車」、つまり楽器隊(バンド)を乗せて走る大きな荷車(ワゴン)のこと。パレードでは、このバンドワゴンの後ろに行列がぞろぞろとついていきます。その様子が「多数派の意見についていく大衆」の姿に例えられ、「バンドワゴン効果」という名称が生まれました。

バンドワゴン効果の提唱者は、アメリカの経済学者、ハーヴェイ・ライベンシュタイン氏。1950年の「Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand」という論文で用いられたのが始まりです。この論文では、バンドワゴン効果のみならず、後述する「スノッブ効果」「ヴェブレン効果」も提唱されました。

バンドワゴン効果とは2

バンドワゴン効果の実証実験

バンドワゴン効果を実証した実験として有名なのが、「アッシュの同調実験」。“同調実験” という名のとおり、人間は周りの意見にどのくらい影響されてしまうのかを検証した実験です。

被験者は、ほかの参加者たちとともに席に座り、課題にチャレンジします。提示された線と同じ長さの線を選択する、簡単な課題です。

実は、被験者の周りにいるほかの参加者たちは、みな実験者側が用意した仕掛け人(サクラ)。ときどき、誤りの選択肢を満場一致で選ぶよう指示されています。たとえば、正解が明らかに「1番」であるにもかかわらず、自分以外の全員が「3番」と答えたら、被験者は周りの意見に流されてしまうのか……というのを検証するのが、実験の目的でした。

実験の結果、ほかの参加者が一斉に間違った回答を選ぶと、やはり被験者は同調し、明らかに誤った選択肢を選ぶ確率が高まりました。「同じ長さの線を答える」という単純明快な課題でさえ間違えてしまうのですから、バンドワゴン効果の強さがわかりますね。

上記の実験のようなシチュエーションは、日常生活でもたびたび訪れます。

  • 企画Aが多数決で通ったけれど、自分は企画Bのほうが良いと思う。
  • この映画は駄作だと評判だけれど、自分はおもしろいと思った。

周囲が口をそろえて同じことを言っていると、つい「自分が間違っているのかも?」と思ってしまいますよね。しかし、そんなときこそ「いま自分は、バンドワゴン効果で流されそうになっているな」と気づくことで、冷静な判断や振る舞いが可能になります。

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バンドワゴン効果と関連する心理効果

本章では、バンドワゴン効果と関連性の深い心理効果を4つご紹介します。バンドワゴン効果の類義語や対義語について押さえ、さらに理解を深めましょう。

アンダードッグ効果

アンダードッグ効果は、バンドワゴン効果の対義語にあたる概念です。

バンドワゴン効果は「人気者には、さらに人が集まってくる」ことを指す一方、アンダードッグ効果は「不人気な人には、同情票が集まってくる」という現象。日本語でいう「判官贔屓(ほうがんびいき)」にあたります。ちなみに、「アンダードッグ」は英語で「負け犬」という意味です。

たとえば、選挙で「A候補が不利」と報道されると、「A候補を勝たせてやりたい」という心理が大衆に働いて、票が集まることがあります。以下のような現象も、アンダードッグ効果の一例といえるでしょう。

  • 万年最下位の弱小サッカーチームが人気を博している。
  • 売れないバンドに熱狂的な追っかけがついている。

『ブリタニカ国際大百科事典』によると、バンドワゴン効果とアンダードッグ効果は、いずれも「アナウンスメント効果」の一種。アナウンスメント効果とは、選挙の戦況を報道(アナウンスメント)したことにより、大衆の心理が動く現象を指します。

選挙前に世論調査の結果が伝えられると、バンドワゴン効果やアンダードッグ効果が作用し、「A候補が人気らしいから、自分も票を入れよう」「B候補は劣勢なのか。かわいそうだから票を入れてあげよう」という具合に、投票行動に影響することがあります。選挙プランナーの三浦博史氏によると、実際の選挙では、候補者の人柄やその時々の状況、選挙戦略などによって、バンドワゴン効果とアンダードッグ効果のどちらが強く働くかが変わってくるのだそうです。

スノッブ効果

スノッブ効果も、バンドワゴン効果と逆の効果です。

「スノッブ」という言葉は、『大辞林第三版』において「教養のある人間のように振る舞おうとする俗物。えせ紳士」と定義されています。自分の知識や優越性をひけらかしてくる、気取った感じの嫌な人、というイメージです。

スノッブという性向は、誰でも少なからずもっています。あなたも、「世間であまり知られていない名店を知りたい」「ハイブランドの服が欲しい」「まだ無名のアーティストを誰より先に発掘したい」などと思ったことはないでしょうか。こうした、「人とは違うものが欲しい」という心理、または「みんながもっているものなら欲しくない」という心理こそが、スノッブ効果なのです。

日本ビジネス心理学会副会長の匠英一氏によると、スノッブ効果は「他人から自分を差別化したい」という欲求から起こると考えられるのだそう。私たちは、人と同じことをして安心したいという気持ちをもつと同時に、人と違うことをして自分の個性や優越性を確保しておきたいという気持ちも合わせもっているのです。

スノッブ効果は、アンダードッグ効果と少し似ていますが、ニュアンスが異なります。アンダードッグ効果は「人気がないものがかわいそうなので支持してあげよう」という心理ですが、スノッブ効果は「他人と自分を差別化するために、人気がないものを支持しよう」という心理なので、スノッブ効果のほうがより積極性が強いといえるでしょう。

ヴェブレン効果

メンタリストで、一般社団法人・日本マインドリーディング協会の代表理事でもあるロミオ・ロドリゲスJr.氏の著書『気づかれずに主導権をにぎる技術』(サンクチュアリ出版、2017年)によると、ヴェブレン効果とは、価格が高いほど価値があるように感じ、需要が高まる心理効果のこと。バンドワゴン効果の提唱者でもあるライベンシュタイン氏が、社会学者ソースティン・ヴェブレン氏の名にちなんで提唱した概念です。

一般的な感覚だと、商品の価格が安いほど売れやすく、反対に高いと売れにくくなってしまいそうですよね。スーパーマーケットに、100円のキャベツと120円のキャベツが並んでいたら、多くの方は100円のキャベツを買うのではないでしょうか。

しかし、ヴェブレン効果によって、「安いほど売れる」という常識がくつがえることがあります。「値段が高いからこそよく売れる」という現象が起こるのです。

わかりやすい例は、ハイブランドの服。いくら品質が高いとはいえ、服1着が数十~数百万円もするというのは、さすがに高すぎるように感じられます。にもかかわらず、ハイブランドの服を買い求める人は後を絶ちません。

ハイブランドの服が人気の理由は、ヴェブレン効果で説明できます。何十万円という値段がつけられた服は、「こんなに高価なら、きっと良いものに違いない」という感覚を与えると同時に、「これほど高価な服を着ている自分を、周りに見せびらかしたい」という虚栄心をあおり、購買意欲をかき立てているのです。

言い換えれば、値段が極端に高い商品は、高価さそのものが価値になることがあるのです。スーパーマーケットで1,000円のキャベツが置かれていたら、どうでしょうか。「1,000円もするキャベツなんて、きっととんでもなくおいしいんだろう」「1,000円もするキャベツを食べたことを、SNSで自慢できるな」というヴェブレン効果が働き、(お金に余裕があれば)つい手に取りたくなるはずです。

価格を極端に高く設定するだけで、一種の販促戦略になりえます。ただし、高い値段に見合うだけの品質がなければ、詐欺のように思われ、クレームや顧客離れにつながってしまうので、ヴェブレン効果の利用には注意しましょう。

ヴェブレン効果とバンドワゴン効果は、意味的なつながりこそ薄いですが、どちらもライベンシュタイン氏が提唱した概念であり、人の購買行動に関わる心理効果としてセットで扱われることが多いもの。ぜひ覚えておきましょう。

社会的証明

社会心理学の「社会的証明」という概念も、バンドワゴン効果と関連して語られることが多い用語です。心理学者の渋谷昌三氏によると、社会的証明とは、「みんなが良いと言っているもの」を自分も欲しくなることを指し、バンドワゴン効果とほとんど同じ意味で使われているそう。

社会的証明は、社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ氏が、顧客などを説得したいときに有効な「6つの武器」のひとつとして提唱した概念です。以下のように、社会的証明を交えながら商品をアピールすると、信頼性や期待感を高められます。

  • 購入した皆さんから好評をいただいております!」
  • テレビの情報番組でも取り上げられたことがあるんですよ」

バンドワゴン効果と社会的証明をあえて区別するなら、以下のように考えるとわかりやすいでしょう。

  • 社会的証明:みんなが良いと言っているものに便乗したくなる傾向
  • バンドワゴン効果:その傾向が現れた行動

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バンドワゴン効果の活用例

バンドワゴン効果は、ビジネスの場面でどのように応用できるのでしょうか? 3つの活用法をご紹介します。

忙しさをアピールする

大勢の顧客が商品に集まっていることをアピールすれば、バンドワゴン効果が喚起され、商品に対する需要を高められます。「200万人が愛用しているサプリメント」「いま最もライブのチケットが取れないバンド」などと聞くと、「そんなに売れているなら、きっとすごいんだろうな」と興味がわきますよね。

ハーバード・ビジネススクール准教授のディーパック・マルホトラ氏は、通販番組の例を紹介しています。番組の最後で問い合わせ先の電話番号を伝えるとき、「電話がつながらない場合は、再度おかけ直しください」というフレーズを加えたところ、注文の電話の数が急増したのだそう。「電話がつながらないほど、注文が殺到するんだ」と視聴者が認識し、バンドワゴン効果が生じたのです。

マルホトラ氏は、ほかに以下の例を紹介しています。

スケジュールがびっしりのように見せかける

商談や打合せのときは、「来週火曜の3時台しか空いていない」というように、アポイントの日取りをあえて限定しましょう。多くの顧客を抱えているような印象を与えられるので、「そんなに売れっ子なのか」と思ってもらえます。

制限時間を設ける

住宅販売など、顧客が商品を見に来る場合には、あえて制限時間を設けましょう。「内覧は1時間までです」と言われると、まるでその住宅に大勢の購入希望者が詰めかけており、内覧のスケジュールが一日中埋まっているような印象を与えられるのです。

商品の売れ行きをアピールする

バンドワゴン効果によって、商品が売れている様子もアピールできます。以下は、ビジネス心理学講師・酒井とし夫氏が推奨する方法。店舗でのディスプレイやWebサイトでのPRに役立つテクニックです。

「在庫僅少」などのポップを立てる

「在庫僅少」「今、売れてます!」などの売り文句で、商品の売れ行きをアピールできます。具体的にどの程度売れているのかは伝えられなくても、「売れている」という情報があるだけで、安心して手に取ってくれるお客さんも少なくないはずです。

陳列棚の一部をわざと空けておく

陳列棚を商品で埋めつくさず、一部をあえて空けておくことで、商品の売れ行きをアピールできます。たとえば、コンビニの陳列棚で、あるお菓子だけがごっそりなくなっていると、売り切れるほど人気なのだなと思いますよね。

陳列棚は、隙間のないよう詰めてしまいたくなりますが、売れたぶんの空間はあえてそのままにしておくことで、バンドワゴン効果を誘発できるかもしれません。

導入事例を紹介する

購入された商品が他社で導入されている様子は、写真や文章を使ってなるべく具体的に提示しましょう。顧客が商品の活用をイメージしやすいだけでなく、「○○社でもこの商品を使っているんだ」と、商品の販売実績のアピールにもつながります。

社会的評価をアピールする

コンサルタントの越川慎司氏によると、商品が受けている社会的評価も、商品価値のPR材料になるのだそう。「○○賞受賞!」「業界シェアNo.1」などの受賞歴や実績のほか、テレビ・雑誌などのメディア掲載実績も、ポップや広告で積極的にアピールしていきましょう。

筆者は、東京駅のお土産コーナーで、「ヒルナンデス(お昼の情報番組)で紹介されました!」というポスターが貼られたお店にだけ、30分待ちの長蛇の列ができていたのを目撃したことがあります。テレビで紹介されたからといって、必ずしも良いものとはかぎりませんが、「せっかくなら “箔” がついているものを買おう」と心が動く人は少なくないはずです。

以上、バンドワゴン効果を喚起できる3つのテクニックを駆使し、商品の売上アップや知名度拡大を目指しましょう。

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バンドワゴン効果は、顧客に商品の価値を認めてもらい、安心して購入してもらうのに絶大な効果を発揮する心理テクニックです。商品のキャッチコピーや販促戦略にお困りの方は、ぜひ活用してみてくださいね。

(参考)
弥報Online|ヒット商品を生み出す「バンドワゴン効果」と「スノッブ効果」:実践のビジネス心理学2
菅原道仁(2017),『成功の食事法 脳神経外科医の自分を劇的に変える食欲マネジメント』, ポプラ社.
Asch, Solomon (1951), "Effects of Group Pressure upon the Modification and Distortion of Judgments," Groups, Leadership and Men; Research in Human Relations, pp.177-190.
Leibenstein, Harvey (1950), "Bandwagon, Snob, and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand," The Quarterly Journal of Economics, Vol. 64, No. 2, pp.183-207.
コトバンク|アンダードッグ効果
コトバンク|アナウンスメント効果
三浦博史(2011),『勝率90%超の選挙プランナーがはじめて明かす! 心をつかむ力』, すばる舎.
コトバンク|スノッブ
新垣優樹, 呉シンエ, 柴山優奈, 鈴木愛恵, 服部拓真, 鷲田和宣(2012),「同一消費者内で発生するバンドワゴン効果とスノッブ効果」.
ヤン・チップチェイス著, サイモン・スタインハルト著, 福田篤人訳(2014),『サイレント・ニーズ ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る』, 英治出版.
ロミオ・ロドリゲスJr.(2017),『気づかれずに主導権をにぎる技術』, サンクチュアリ出版.
渋谷昌三(2017),『決定版 面白いほどよくわかる! 他人の心理学』, 西東社.
藤井一郎(2011), 『プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中』, 東洋経済新報社.
ディーパック・マルホトラ著, マックス・H・ベイザーマン著, 森下哲朗監訳, 高遠裕子訳(2016),『交渉の達人 ハーバード流を学ぶ』, パンローリング.
酒井とし夫(2018),『心理マーケティング100の法則』, 日本能率協会マネジメントセンター.
越川慎司(2020),『科学的に正しいずるい資料作成術』, かんき出版.

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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