上司がよく口にする言葉に、「あれ?」と違和感を覚えたことはありませんか? 一見正しいセリフでも、よく考えてみるとそこには学びがない……なんていう可能性も。
今回の記事では、仕事で成果を挙げたい人が「参考にしてはいけない」上司の口癖を4つお伝えします。ぜひご確認のうえ、その言葉に流されないよう注意してくださいね。
1.「モチベーション」という上司の口癖に感化されてはダメ
「モチベーションを上げていこう!」
こんな上司のセリフに感化されないよう気をつけましょう。
モチベーションは、仕事の成果を出すうえで重要な要素のひとつ。しかし、あなたの上司が普段の何気ない仕事にもモチベーションを求めるのなら、それは真に受けないほうがいいでしょう。なぜなら、通常の仕事は「やって当たり前」だから。
仕事をするのにモチベーションなど必要ない——こう断言するのは、経営コンサルタントの横山信弘氏。
たとえば、朝7時に起床して、9時までに出勤し、業務をこなす。この一連の流れは、社会人としてやって当然のこと。「朝起きるのがつらい」「仕事に集中できない」ことをモチベーションのせいにするのは、些細なことや通常業務にさえハードルを感じている証拠。それ以上のことはなお負担に感じるはずですよね。
それゆえ横山氏は、モチベーションという言葉を頻繁に使うと、当たり前のことを当たり前にこなすという感覚を、自ら削ぎ落してしまうことになると言います。いずれ新しい仕事を任されても、行動力に欠けた “仕事のできない人” になってしまうのです。
では、モチベーションに頼る代わりに、何を土台にすれば成果を挙げられるのでしょうか。横山氏いわく、その答えは自分の「あるべき姿」。
成功する人の多くは、「あるべき姿」と「現状」を正しく認識するからこそ、それらのギャップを埋めるために、自然と行動できるのだそう。
たとえば、「成約率前年比20%アップ」があるべき姿で、現状それに届いていないのなら、プロセスを見直す・アポイントを増やすといった創意工夫をする――といった具合です。
上司から「モチベーション上げていこうよ」と言われても、感化される必要はありません。大切なのは問題意識をもち、「どうあるべきか」と自らに問うことなのですから。
2.「忙しい」という上司の口癖をまねしてはダメ
「自分の仕事もあるし、チームのマネジメントもあるし……本当に忙しい!」
このように上司があまりに忙しそうだと、相談もしにくいもの。じつは、この「忙しい」も、まねしてはいけない言葉です。
元・花王の研究開発職で現在は商品コンサルタントの美崎栄一郎氏によると、「忙しい」という口癖は仕事を停滞させるそう。なぜなら、「忙しい」と言うだけでは現状は変わらないから。
美崎氏いわく、「忙しい状態」とは「時間管理の仕方が悪い状態」。つまり、仕事の計画や進め方を見直してムダな作業を減らし、効率化を図らなければ、忙しさは解消できないということ。
美崎氏は、「忙しい」と言わないよう心がけるだけで、「仕事のやり方を見直す」というアクションをとれると言います。忙しさを “言葉” で解消しないぶん、解決法を考えやすくなるのです。
あなたの上司が「忙しい」とよく口にするのにもかかわらず、何も改善していないのだとしたら、その言葉は単に聞き流すだけにするのが賢明です。あなた自身は ”忙しくても言葉にしない” と決めて、上司よりもスムーズに仕事を進めてしまいましょう。
3.「任せるよ」という上司の口癖をうのみにしてはダメ
「資料作成、君に任せるよ。よろしく頼むね」
上司からこう言われると、信頼してもらえたように感じるもの。しかし、自分のやり方で進めていたら、あとから細かく口出しされた……なんて経験はありませんか? じつは、「任せる」という言葉は非常に曖昧。必ずしもうのみにしないほうがいいでしょう。
上司は「エンパワーメント」のつもりで、あなたに仕事を任せたのかもしれません。エンパワーメントとは、上司が部下に「力を与える(empower)」つまり権限を委譲して、部下の判断・行動を上司がサポートすること。部下を成長させるために行なわれます。
しかしなかには、適切に権限移譲できていない「名ばかりのエンパワーメント」になるケースもある――そう述べるのは、社員研修などを手がけるイントランスHRMソリューションズ株式会社代表取締役の竹村孝宏氏。任せておきながら、あとで細かく注文をつけるのはその一例です。
竹村氏は、次のような場合に「名ばかりのエンパワーメント」に陥りかねないと言います。
- 部下の力量を見極められていない
部下の能力を把握しておらず、本人とって責任の大きすぎる仕事を指示してしまうケース。部下にストレスを抱えさせ、やる気を損なわせたり萎縮させたりする可能性も。 - 組織のビジョンを部下に共有できていない
組織が目指すものを部下に的確に伝えないまま、部下に自身の裁量で行動させてしまうケース。当然、組織としての仕事の質を保つことはできません。
なお、企業研修を手がけるカスタマーズ・ファースト株式会社代表取締役の片桐あい氏によると、日本にはうまく権限移譲できる上司が少ないのだそう。理由は、欧米のように個人の業務範囲を明確に決めた「ジョブディスクリプション(職務定義書)」が日本にはないため。それゆえ、部下に仕事を任せてもミスマッチやズレが生じ、やり直させるような事態になるのです。
では、仕事を「任せるよ」と上司から言われたらどうすればいいのでしょう。竹村氏は、目的や目標からそれないよう、上司・部下間で情報を共有することの重要性を説きます。
上司からの情報共有が不完全かもしれないことを想定し、
「この方法で進めているのですが、何か問題点はありますか?」
「こう考えているのですが、私の解釈で合っていますか?」
とこまめに確認をとるようにしましょう。
4.「経験から言って」という上司の口癖に縛られてはダメ
「私の経験から言うと、そのやり方だとうまくいかない」
「経験からして、この判断は間違っていない」
あなたの上司は “自分の経験” を重視してはいませんか? この言葉に縛られるのは危険です。
前出の横山氏によれば、経験がものを言うかどうかはケース・バイ・ケース。経験は、とても弱い論拠でしかないこともあると指摘します。
なぜなら、上司が経験してきた時代は、現在ではないから。テクノロジーが発展し、働き方も変わったいま、上司の経験談がそのまま活きるケースはあまり多くはないはずです。
元日本マイクロソフト業務執行役員で、現在は株式会社圓窓代表取締役の澤円氏は、若い頃の成功体験が100としたら、今でも通用することは0.001もないと語ります。
たとえば、「情報共有は直接会って話せばうまくいく」という経験を以前にしていたとしても、そのやり方は今の時代では非効率。社内チャットやオンライン会議など最新のITツールを使うほうが、格段に業務ははかどりますよね。
このように、過去の経験に縛られているだけの言葉を真に受けても、そこには得るものがないこともあるのです。
ですから、もしも上司が経験を理由に何かを主張するときは、論理を明確にすることが大切です。横山氏が提案するのは、「おかしいと思ったことをとにかく確認する」こと。具体的には、上司の発言に違和感を覚えたら、「先ほどのお話はどういうことですか? わからなかったので教えてください」と確認するといいそうです。
それでも上司の説明に納得がいかなければ、上司は経験でものを言っているだけかもしれません。そんな上司の経験には染まらないように、注意しましょう。
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あなたの上司の口癖に該当するものはありましたか?
「いまの説明って、ちょっとおかしいよな……」と感じたら、その言葉は真に受けない・流されない。これが、自分の成長を止めない秘訣です。
(参考)
STUDY HACKER|仕事がデキない人の無意味な口癖。「この言葉」を連発する時代遅れ上司に感化されてはいけない
Yahoo!ニュース|【もう死語?】成功する人ほど「モチベーション」を口にしない
STUDY HACKER|仕事の停滞を生む “5つの原因” をなくす! いつも「言い訳ばかり」の人は要注意
日経クロステック|「任せたといいつつ口うるさい上司」という悩み
ダイヤモンド・オンライン|仕事を「任せる!」と言いながら任せきれない上司の心理とは
STUDY HACKER|日本のリーダーの残念すぎる勘違い。自分流ではない “本当の論理的思考力” はこうして高める
ITmedia ビジネスオンライン|「オレが若いころは」「マネジメント=管理」と思っている上司が、ダメダメな理由
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。