「一生懸命ノートをとっているのに、内容をなかなか覚えられない」
「いろいろなノート術がありすぎて、結局どれが自分に合っているのかわからない」
そんな方へ向け、脳の仕組みにマッチしていて学習内容が定着しやすい「キャプチャ&クリエイト」というノート術をご紹介します。筆者の実践例とともに、その手法を詳しくお伝えしましょう。
ノートをとっても内容を覚えられない理由
勉強でノートをとっても覚えられない一因は、ノートをとる目的を見失っていることにあります。そもそも、ノートをとる目的とはなんでしょうか?
『ずるい暗記術 偏差値30から司法試験に一発合格できた勉強法』著者で弁護士の佐藤大和氏は、以下のように指摘しています。
――ノートをとる目的は「覚える」ため。にもかかわらず、覚えるためにはどう書けばいいかを考えずにノートをとっている人が多い――
例として佐藤氏が挙げるのが、テキストの内容や講師の話を丸写しするケースや、きれいなノートづくりに力を入れるケース。これらのケースでは、ひたすら書き取ることや、きれいに書くこと自体が目的となりがちです。色分けやレイアウトに気をとられるなどして、「覚える」という本来の目的を忘れてしまっては、いくらノートをとっても時間の無駄だと佐藤氏は言います。
また、東大生の勉強法に関する著作の多い、教育事業を行なう株式会社カルぺ・ディエム代表の西岡壱誠氏は、次のように述べています。
――東大生の多くは「あとで再現できること」を目的にノートをとっている――
つまり彼らは、勉強した内容を何も見なくても説明できるレベルにまでしっかり覚え込むために、ノートをとっているのです。
上記のように、ノートは「覚える」ためにとるもの。もしあなたがいま、「ノートをとっても覚えられない」と悩んでいるのなら、「覚えるためのノートのとり方」ができていないのかもしれません。
一流脳トレーナー推奨「キャプチャ&クリエイト」とは
ではどうすれば、「覚える」ためのノートづくりを行なえるのでしょうか? 今回ご紹介するのは、「キャプチャ&クリエイト」という方法です。
ハーバード大学や数多くの一流企業を顧客にもつ脳トレーナーのジム・クウィック氏が、学んだことを記憶に定着させるためのノート術として考案しました。講義を聞きながら、または、参考書を読みながらノートをとる際のどちらにも使えます。
特徴は、ノートを縦に2分割して使うこと。真んなかに線を引いて、左半分のキャプチャ部分にメモ、右半分のクリエイト部分に気づきや感想を書き込みます。
クウィック氏は、「TIP」という3つのポイントを意識するようすすめています。
Think(考える):
ノートをとる最大の目的を考える。自分は何を最も記憶したいのか?
Identify(見極める):
目的に沿った情報のなかで、重要なものを見極める。自分にとって必要な情報はどれなのか?
Prioritize(優先する):
重要な情報のなかで優先順位をつける。必要な情報のうち、最も集中して覚えるべきものはどれなのか?
受動的にただ書くよりも、上記のように考えながら能動的に書くほうが、勉強内容をより記憶できるそうです。
右側のクリエイトのスペースで、気づきや感想を書くことも、記憶定着に大いに貢献します。「この用語がテストに出る!」「商談でこの心理効果が使えそう!」といったメモが、記憶の “とっかかり” になるのです。前出の西岡氏は、自分の感情とひもづいた情報ほど、記憶に強く残ると言います。
ちなみに、キャプチャ&クリエイトでノートをつくったら、その日のうちにノートを見返すことも大切だとクウィック氏。見返さない場合に比べて、記憶は格段に定着しやすくなるそうです。
「キャプチャ&クリエイト」でノートをとってみた
実際に筆者も、文学史のテキストを教材に、キャプチャ&クリエイトを実践してみました。文学史を学び直したいとテキストを読み始めたものの、その内容をなかなか覚えられずにいた筆者。ぜひとも記憶を定着させるべく、キャプチャ&クリエイトで勉強することにしたのです。
ノートの左側、キャプチャにはキーワードや重要な内容をメモ。右側のクリエイトには、勉強するなかで気づいたことを書きました。クウィック氏によると、クリエイトを書くべきタイミングは、勉強に集中できなくなったとき。筆者の場合、集中力が切れるほど長時間勉強したわけではなかったため、学習後に書き加えました。
できあがったノートがこちらです。
さらに、その日のうちにノートを見返して復習も行ないました。
「キャプチャ&クリエイト」で集中して勉強できた&しっかり思い出せた!
キャプチャ&クリエイトを実践して、感じたことと提案したいことを挙げます。
1. キャプチャでメモの内容を厳選したことで、集中して勉強できた
ノートを2分割したことでメモのスペースが限られたため、「とりあえずなんでも書いておこう」ということがなくなりました。以下のように、クウィック氏が挙げる3つのポイントを自然と意識して、内容をメモできたと感じています。
『源氏物語』の成立年についてのTIP
Think(目的を考える):
ノートをとる目的は、『源氏物語』の文学史的特徴を覚えること
情報の重要性を見極める(Identify):
重要な情報1.『紫式部日記』の1008年の記述から、この頃には物語が宮中に広まっていた
重要な情報2. 1008年の記述では、紫式部が宮中の人に「紫の上はいるか」と話しかけられたと記している
情報の優先順位をつける(Prioritize):
上の2の情報は聞いたことがあるので、1の情報を優先して覚える
このようなステップを経て、確実に覚えるべき情報だけが書かれた、わかりやすくて復習しやすいノートをつくれたと実感しました。また、考えながらメモをとるなかで、いつも以上に勉強へ集中できたと思います。
2. クリエイトに書いたことが、学習内容を思い出すのに役立った
クリエイトに書いたことも、記憶の定着につながりました。西岡氏が述べていたとおり、感想や気づきが記憶の手がかりになったのです。
たとえば、筆者はキャプチャに「敬語表現が特徴的」と書き、クリエイトに「主語が読み取りづらかった」と感じたことを追記しました。これを勉強当日に読み返すと、テキストで紹介されていた具体例や「天皇が主語となるときに顕著」といった、ノートにとっていない部分まで思い出せたのです。感想にまつわる記憶がとっかかりとなって、周辺情報まで無理なく覚えられたのだと思います。
試しに、3日後にノートを見返したところ、勉強当日同様に内容を頭のなかで再現できました。自分の感想や気づきをアウトプットしたおかげですね。
3. キャプチャ&クリエイトが向かないかもしれない勉強もある
キャプチャ&クリエイトは、講義やテキストで概念を理解するといった勉強で実践するとよいのではないかと思いました。
これまで述べたとおり、重要なことだけを整理して記憶できるのがこのノート術のメリット。ですが、単語や用語・年代などを暗記するような、すべての情報が「覚えなければならない重要なこと」という勉強もありますよね。そうした場合、スペースが限られるキャプチャ&クリエイトだと、情報を書ききれず、本当に必要な情報を取りこぼしてしまうかもしれません。
重要か・重要でないかという情報の差別化ができる勉強をする際には、ぜひ取り入れてみてください。
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ノートを2分割するだけで、勉強効率がアップするキャプチャ&クリエイト。すばやく、確実に記憶を定着させたい人はぜひ試してみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|なぜ、勉強にノートをつかうと、時間と記憶が奪われるのか?
東洋経済オンライン|東大生の「ノートのとり方」が本質的で凄すぎた
東洋経済オンライン|ノートPCでメモを取ると学習効率が下がる理由
クーリエ・ジャポン|記憶に刻む究極のノート術─学んだことを定着させるために
【ライタープロフィール】
藤真 唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいてわかりやすく伝えることを得意とする。