伝え上手が “最初の3分30秒” に全力を注ぐのはなぜなのか。「伝える技術」基本3箇条

大人数を前にしたプレゼンや、転職や昇格のための面接、新規受注がかかった商談……。このような大事な場面で、緊張のあまりうまく話せなくなってしまったことはありませんか? しどろもどろになるうちについ話が冗長になり、自分が話すべき大事なポイントが見えなくなってしまう。こうしたことは、緊張しやすい人にとってよくあることだと思います。

ぜひ、今から伝える“コツ”を押さえて、「大事な場面でも端的に伝えたいことを伝える方法」を身につけませんか。

1. まずは落ち着く

人前で話をしなければならない大事な場面。そもそもなぜ、こうした場面で人は緊張してしまうのでしょうか。

これまで3,000人以上のVIPと交流した経験から「誰でも使える気配り術」を究めるビジネス書作家・コラムニストの後田良輔氏によれば、緊張しやすい人には次のような特徴があるのだそう。

緊張しやすい人は、「失敗したくない」「相手に良い印象を与えたい」「面白い人と思われたい」などと思う特徴を持っていると私は思います。ひと言でいうと、「自分好き」で他人に良く思われたいということです。 (中略) つまり緊張する人は視点が「自分」になっている

(引用元:リクナビNEXT ジャーナル|初対面や人前で「緊張する人」と「緊張しない人」の違いとは?)太字は筆者にて施した

また、兵庫教育大学大学院で行なわれたスピーチ不安に関する研究によれば、人前で何かをする時に不安を感じやすいのは、「他者に特別な印象を与えたいという気持ちがある」「それができるかどうかの疑わしさが高い」この2つの要素が揃ったとき。さらに「他者から否定的に評価されるのでは?」という考えから、自分の不安な気持ちが他者に伝わってしまうことをおそれるようになると、ますます不安が高まっていくのだと言います。

では、大事な場面でなるべく緊張しないようにするためにはどうしたいいのでしょう。ここでは2つの方法をご紹介します。

(1)「自分の緊張は相手には伝わっていない」と認識する

そもそも、話し手が緊張しているかどうか、聞き手はそれほど気にしていないものです。後田氏は、

自分好きで、必要以上に自分を良く見せようとする行為は自意識過剰であり、百害あって一利なし。無意味に緊張を引き寄せる悪い習慣だ

(引用元:同上)

と言っていますし、兵庫教育大学大学院の研究でも

スピーチに対する不安を軽減するためには,「緊張していることが聞き手に伝わってしまっている」という認知を,「自分が思っているほどには, 緊張は相手に伝わっていない」という認知へ変える必要がある

(引用元:吉冨理絵(2015),「スピーチ不安を抱えてスピーチをするということ : 大学生を対象とした実験的および質的研究」,兵庫教育大学大学院 平成26年度 学位論文.

とまとめられています。大事なのは、「緊張している自分」ではなくて、自分の話を聞いてくれる「相手」に視線を向けること。後田氏によると、人前でも緊張しない人は「相手のことが知りたい」「相手と仲良くしたい」と考える傾向にあるのだそうですよ。話の最中で相手の名前を呼び掛けたり時々相手への問いかけを挟んだりして、相手のことを気にするようにすれば、相手との距離が縮まるだけでなく、いつしか緊張もほぐれていくでしょう。

(2)呼吸法でリラックス

相手に視線を向けるのが大切だとはいえ、緊張してしまっているのは事実。そこで、プレゼンや面接前に実践できる「リラックスできる呼吸法」をご紹介しましょう。

前出の研究によれば、緊張状態の時には浅い呼吸に、リラックス状態の時には深くゆったりした呼吸になります。緊張時には以下のような方法で腹式呼吸をすると、気持ちが落ち着くそうですよ。ぜひ試してみてください。

【1】お腹に手を当てて、体の力を抜く。 【2】鼻からゆっくり、下腹部をへこます感じで、苦しくならない程度に息を長く吐く。 【3】下腹部を膨らませる気持ちで、鼻から息を自然に吸う。 【4】息と一緒に体の緊張も吐き出すような気持ちで脱力しながら、5~10分程度、腹式呼吸を続ける。

2. 最初に要約を伝える

話し始める前に落ち着くことはできたでしょうか? 次に、話しはじめの段階で行なうべきテクニックをお伝えします。それは、話の冒頭で「私の伝えたいことはこれです」と先に言い切ること。

あなたは話している最中に、どうしても相手が話を理解してくれていないような気がして、つい「あれも伝えよう、これも追加しよう」と思ってしまうことはありませんか? 緊張していると冷静さを欠き、必要ないことまで話してしまう人もいるかもしれませんね。ですが、そんな話し方では話が長くなってしまうばかりか、相手はどの情報が最も大切なのか理解することができません。いくらたくさん話しても、「伝えたいことが伝わらない」状態に陥ってしまいます。

そこで、最初の段階で大事なことを先に伝えきってしまいましょう。プレゼンテーション・ディレクターで『ぐるっと! プレゼン』の著者である西原猛氏によると、プレゼンで肝心なのは「最初の30秒と3分」。まず最初の30秒で「この人の話を聞くと、自分にメリットがありそうだ」と相手の心をつかんだら、次の3分では「できるだけ早くプレゼン全体の流れやゴールを示し、聴き手の興味や関心を持続させる」ことに注力すべきなのです。

スピーチでも面接でも、あるいは取引先での商談でも、こちらが最も伝えたいことはあらかじめわかっているはずです。ですから、「これだけは伝えたい」と考える内容について、あらかじめ短い文字数でまとめておき、話せるよう準備しておきましょう。そうしておけば、うっかり話がわき道にそれたりつい余計なことを述べてしまったりしたときでも、相手が話を見失うことはなくなります。

例えばあなたが、取引先との商談で自社の新しい学習サービスについて説明したいと考えているなら、次のように話し始めてみてはいかがでしょうか。

今日は弊社の新サービスのご提案に参りました。従来のサービスでは、生徒様に週2回教室に通っていただく必要があり、その分時間も手間もかかっていました。ですが新サービスでは、通学の回数を半分の週1回とし、代わりにオンラインで自習していただけるサービスを導入しました。その分価格も従来の6割でご提供することが可能となっています。ぜひ御社の社員教育に導入していただければと思っております。

このように説明し始めれば、相手はあなたがこれから「価格が安くて気軽に受けられる新しい学習サービスを提供してくれるのだな」ということを理解してくれます。またあなたも、話の肝心なところを見失わずに済むので、話しやすくなるはずですよ。

もし、話を要約するのが苦手な方がいらしゃったら、こちらの記事「話が長い」は嫌われる! ひとことでまとめる『要約力』を鍛える3つのトレーニングをお読みください。ニュースをひと言でまとめる、本や映画の内容をひと言でまとめる、など、日頃からできる要約トレーニングの方法が紹介されています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

3. 相手の理解度を観察しながら話す

話の冒頭で要約を述べたあと、話の中身を進める過程では、時折相手の理解度を観察してください。面接や商談のように相手と受け答えをしながら話す場合はもちろんのこと、プレゼンのように一方的に話す場合でも、相手の理解度に応じて話す内容を調整すれば、より話の内容を相手に伝えやすくなるからです。

そのために、あなただけが見ることができるアウトラインメモをつくり、その内容を頭に入れておきましょう。いわゆるカンペです。ハーバード大学エクステンションスクールでスピーチスキルなどを教えるMarjorie North氏は、原稿やスライドを読み上げるだけでは聴衆とアイコンタクトをとることができず、話し手と聞き手との関係が崩れてしまうと言います。原稿を見つめる代わりに、あらかじめ作っておいた簡単な「アウトライン」を頭にいれ、それに沿って話していけば、話をしながら聞き手の様子にも気を配ることができるのです。

アウトラインを記したカンペを作る際は、西原氏が勧めるPREP法を使ってみてください。PREPとは以下の頭文字です。この順番で、それぞれの頭文字に合う内容をシンプルに箇条書きでメモしておきましょう。

P=POINT(結論) R=REASON(理由) E=EXAMPLE(事例) P=POINT(結論)

(引用元:StudyHacker|【書評】ぐるっと!プレゼン

これらのポイントを記載したメモを準備しておけば、想定外の質問が続き話が逸れてしまったときでも、話の本筋に戻りやすくなるでしょう。「結局、何が言いたいのですか?」などと少しドキッとするような指摘をされても、落ち着いて結論を示せると思います。また、話の最中で聞き手が怪訝そうな表情をしていたら、「分かりにくいのかな、もっと結論と結び付けたほうがいいのかな」などと話し方を工夫することもできるはずですよね。余計な情報を盛り込んでしまって話をややこしくせず済みます

しかしながら、カンペはあくまでもカンペ。カンペを見続けるのは本末転倒です。話の手助けとしての位置づけにあることをお忘れなく。

*** 1. まずは落ち着く 2. 最初に要約を伝える 3. カンペを用意し、相手の理解度を観察しながら話す

以上のことに注意すれば、緊張しやすい大事な場面でも、自分の話を短くまっすぐ伝える事ができるようになります。緊張のあまり大事なことが頭からすっぽり抜け落ちたり、原稿をただよみ上げるばかりで単調な話し方になってしまったりすることなどは、なくなるはずですよ。ぜひ試してみてください。

(参考) リクナビNEXT ジャーナル|初対面や人前で「緊張する人」と「緊張しない人」の違いとは? 吉冨理絵(2015),「スピーチ不安を抱えてスピーチをするということ : 大学生を対象とした実験的および質的研究」,兵庫教育大学大学院 平成26年度 学位論文. StudyHacker|【書評】ぐるっと!プレゼン StudyHacker|「話が長い」は嫌われる! ひとことでまとめる『要約力』を鍛える3つのトレーニング HARVARD Extension School|10 Tips for Improving Your Public Speaking Skills

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