イライラしている時、落ち込んでいる時、集中力が削がれてしまって仕事も勉強も捗りませんよね。 そもそも人間の脳はいくつものことを同時に行うのには適していません。 強い感情を抱えたまま、何かに集中するのは難しいことなのです。
パフォーマンスを上げたいなら、穏やかでいることがまずはたいせつ。 今回は、感情を制御し、集中力を保つためのお話です。
「気にしない」はむずかしい
感情をコントロールし、穏やかでいることが難しいのは実体験からも良くわかるのではないでしょうか。 気にしないことがいちばん、とはよく言われますがそんなことできたら苦労しませんよね……。
有名な、ウェグナー博士の実験を知っていますか? 実験によると、「5分間シロクマのことを考えないでください。」と告げられた人は、なんと毎分1回程度の頻度でシロクマのことを考えてしまうそう。 さらに、思考抑制状態から解放され、何でも自由なことを考えても良いという時間になっても、被験者はシロクマについてさらに考え続けてしまいます。 これを、リバウンド効果と呼ぶそうです。
この実験が示すのは、何かを考えないでおくということはたいへん難しいということ。 いやなこと、腹立たしいことが起こっても、それを考えないでおくということもまた難しいことがわかりますね。 つまり、「気にしない」ということは不可能に近いのです。
では、どうすれば良いのでしょうか。
嫌なことを考えないためには
このように、不快な感情や思考を排除することはむずかしそう。 しかし、一時的にしめだし、延期してしまう方法はあるそうです。仕事中や勉強中だけは不快な感情に煩わされずに、集中することができるということですね。
その方法とは、毎日30分程度の「心配の時間」を設定することだそう。この方法はDr.Brosschot J.F.とDr.Doef M.P. van derが提唱しました。 やり方はシンプル。普段から日常の心配事をこの時間まで延期するだけです。考えないでおこうとしても、リバウンド効果によってかならず考えてしまうわけですから、それは逆効果でした。だから、ふと思い浮かんでも「あとで考えよう。」と受け流してしまう感覚です。
慣れてくれば、ふと浮かんだ不快な感情に邪魔されることも少なくなります。コツは、あまり積極的に「しめだそう!」と思いすぎないこと。絶対に逆効果ですから。 これならなんだかできそうですよね。
*** いかがでしたか。感情をコントロールするのはやっぱり難しいことです。 私も、心配事が多い性格で、勉強のときにはついつい集中力を欠いてしまいがちでした。 しかし、実際にこの「心配の時間」を設定してみてからは、確かに集中を阻害されることが減ったことを実感しています。
心配性の皆さん、ぜひこの方法を試してみて下さい。いつもより集中できるはずですよ。
参考文献 岡市廣成・鈴木直人監修 青山謙二郎・神山貴弥・武藤祟・畑敏道編(2014),『心理学概論 第2版』, ナカニシヤ出版,186-189. 木村 晴(2005),『抑制スタイルが抑制の逆説的効果の生起に及ぼす影響』,教育心理学研究, Vol. 53, No. 2, pp. 230-240.(http://ci.nii.ac.jp/naid/110001889178) Brosschot J.F. & Doef M.P. van der (2006), “Daily worrying and somatic health complaints: Testing the effectiveness of a simple worry reduction intervention”,Psychology & Health 21,Vol. 21, No. 1, pp. 19-31.(http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/14768320500105346)