“ちょっと失敗しても許す” のが続けるコツ。習慣化できない人が陥る「どうにでもなれ効果」を防ぐには?

早朝学習の習慣をつけるために朝5時半に目覚ましをかけたのに、目が覚めたのは5時37分。本来ならばすぐに起き上がって活動を開始するべきなのに、「5時半に間に合わなかったしもういいや」とまた眠りについてしまった……

このような経験をしたこと、ありませんか? さまざまな習慣化を妨げるこの「もういいや」には、実は名前が付いているのです。その名も「どうにでもなれ効果」。極めてストレートで思わず笑ってしまうような名前ですが、この現象のせいであらゆる習慣化が失敗しては笑えませんよね。

今回は、習慣化を妨げるこの「どうにでもなれ効果」を防ぐ方法をご紹介します。

計画をめちゃくちゃにする「どうにでもなれ効果」

どうにでもなれ効果(The what-the-hell effect)とは、綿密に立てた計画が少しでも狂うと、自制心が効かなくなりどんどん計画が崩れてしまうということを示した言葉。トロント大学の心理学者、ジャネット・ポリヴィ氏とC・ペーター・ハーマン氏によって生み出されました。

「どうにでもなれ効果」に陥っている例としては、以下のようなものがあります。

・1日1時間の勉強を習慣づけるつもりだったが、40分しか時間を確保できそうにないとわかった日には、一切勉強をしなかった。 ・ネットサーフィンを控えてレポート執筆に集中しようと思っていたのに、ついついスマートフォンを触ってしまい、結局長時間だらだらとネットサーフィンをしてしまった。 ・毎日続けていた日記を1日書き忘れただけで、すっぱり書くのをやめてしまった。

実際にポリヴィ氏らが行なった実験では、ダイエット中の被験者の体重計を、本当の体重よりも2キロ重く表示されるように細工しました。すると、細工された体重計に乗って体重が増えたと感じた被験者たちは、食事を減らすどころか却って食事量を増やしてしまったのだそう。「体重が増えてしまったし、もういいや」という考えが、食事量の増加につながってしまったのです。

スタンフォード大学の健康心理学者であるケリー・マクゴニガル氏は、著書においてこの「どうにでもなれ効果」について以下のように述べています。

誘惑に負けたことで自己嫌悪に陥ってしまい、気晴らしに何かしたくなります。 最もかんたんで手っ取り早い気晴らしの方法は何でしょうか? それは落ち込む原因をつくった、まさにそのものだったりします。 (中略) しかし、そうやって気晴らしにやっていることはただただ罪悪感を生むばかりで、悪循環を断ち切る力はないのです。

(引用元:ケリー・マクゴニガル著,神崎朗子訳(2015),『スタンフォードの自分を変える教室』,大和書房.)

つまり、「どうにでもなれ効果」の元凶はちょっとした失敗に対する罪悪感・自己嫌悪だということ。これを晴らそうとしてやけになり、本来は抑え込むべき行動をとってしまうと、当然ながらまたしても失敗するわけですから、再び自己嫌悪に陥ることになります。こうした悪循環を招かないためには、失敗したときに罪悪感を感じすぎないようにする」「失敗しづらい環境を作るという2つの方向性から考える必要がありそうです。

「どうにでもなれ効果」に陥らないために

「どうにでもなれ効果」の元凶である失敗したときの罪悪感を感じすぎないようにするには、どうしたらよいでしょうか。その方法についてマクゴニガル氏は、自分を許すことが大切だと指摘しています。そして、自分の失敗を許容するために以下の3つの行動を取ることを提案しています。

1. 失敗したときの行動を丁寧に振り返り、言葉にする。 2. 他の人でも起こりうることだということを理解する。 3. 友達が同じ失敗をしたときにどのような言葉をかけるかを考える。

これらのステップを通じて自身の失敗を許せば、過度な罪悪感をなくすことができるのです。

例えば、「早朝学習を実践するために早起きするつもりが、少し寝坊してしまい、結局二度寝してしまった」という失敗に対しては、以下のようなステップを試してみてください。

1. 失敗した時の行動の振り返り: 1分の寝坊でも2時間の寝坊でも目標を守れなかったのに変わりはないのだから、もう寝てしまえと考えて寝てしまった。でも、早起きの習慣化のためには、寝坊したと分かった段階ですぐに起きたほうが良かった。 2. 他の人でも起こり得ることだという理解: 寝坊は誰でもするし、自分に限った話ではない。あまり落ち込みすぎるのも良くないかもしれない。 3. 友達が同じ失敗をしたら、どう声をかけるか: 「今回の経験を生かして、次同じように寝坊してしまったときには、ちゃんと起きられるようにすれば良いんだよ」と言う。

こうすると、罪悪感などの感情に邪魔されることなく事実を受け止めることができます。失敗を責める気持ちが和らぎ、自分を許すことができますよ。

中には「失敗した自分を許すより、しっかり反省しないと同じ失敗を繰り返すのではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、カナダのカールトン大学で行なわれた実験によると、試験勉強を先延ばしにした自分を責めた学生と許した学生とでは、許した学生のほうが次の試験では計画的な勉強計画をこなすことができたのだそうです。ときには自分を許してあげることも大切であることが、よくわかりますね。

失敗しない環境を作るには

「どうにでもなれ効果」のきっかけとなる小さな失敗も、できることなら減らしたいもの。そのためには、そもそも失敗しなくて済むように、行動を習慣化しやすい環境を整える必要があります。失敗しづらい計画を立てる準備として、以下の2つを試してみてください。

1. 何かをやめる目標ではなく、何かをやる目標にする

人間の心理に関する著書を多数執筆しているメンタリストDaiGo氏によると、「何かをやらない」と強く意識すればするほど人間はその何かを強く意識してしまうそうです。そのため、習慣化したいことがあるときには、「何かをやらない」ではなく、「何かをやる」という目標を立てましょう

例えば、同じ「ダイエット」という目標でも、「甘いものを食べない」ではなく「健康的な食事をする」と考えるほうが、甘いものが脳裏をよぎる瞬間を減らすことができるということです。

また、何かやめたい行動があるなら、その代わりに取る行動を決める「スイッチング」という方法も効果的です。例としては、「ネットサーフィンをしたくなったら、代わりに英語学習のアプリを開く」といった具合に、簡単に実行できる代替行動を決めておくと良いでしょう。

2. 仕組みを作る

習慣化の計画は、思いがけず崩れてしまうことがあります。例えば、平日の仕事後に1時間英語を勉強しようと思っていても、突発的な用事や残業によって計画通りに勉強できなくなる、といったことはよくありますよね。

そのような事態を防ぐ方法について、習慣化コンサルタントの古川武士氏は、次のように述べています。

決まったタイミング、場所、時間、やり方で習慣行動を行なうことで、リズムが身につきます。すると、行動が無意識のうちに行なえるようになってくるのです。

(引用元:古川武士著,みつくイラスト(2016),『マンガでわかる「続ける」習慣』,日本実業出版社.)太字は筆者にて施した

勉強を習慣づけたければ、他の誘惑が少ない早朝のカフェで時間を取るのも良いでしょう。日記を続けたければ、帰宅して入浴後、寝る前に書くと決めてしまうと効果的です。「いつ・どこで・どうやってやるか」をあらかじめ決めるだけで、失敗の可能性はぐっと減りますよ。

*** 計画に失敗したときは「もうどうにでもなれ!」とついついやけくそになってしまいますが、そこで思いとどまることができれば、習慣化の成功に大きく近付きます。「ちょっと計画通りにいかなかったな」というときには、ぜひ今回紹介した方法を試してみてください。

(参考)
StudyHacker|習慣化のコツを目標別に徹底解説! 勉強・運動・早起きを継続する方法とは ケリー・マクゴニガル著,神崎朗子訳(2015),『スタンフォードの自分を変える教室』,大和書房. Mentalist DaiGo Official Blog|計画倒れの原因「どうにでもなれ効果」を防ぐには 古川武士著,みつくイラスト(2016),『マンガでわかる「続ける」習慣』,日本実業出版社.

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