世の中に情報は山ほどあるが、どれを信用していいのか分からない……。そう思う方は多いのではないでしょうか。情報過多なうえ見解の違いもあるので、なかなか判断が難しいですよね。

しかし、それ以前に、この世界には情報にかかわる大きな危険が迫っています。今回は、虚偽情報などに振り回されないため、備えるべきことや対策をご紹介します。

もはや、情報エコシステムは不健全な状態!?

ミシガン大学のソーシャル・メディア信頼性センターでチーフ科学技術者を務めるアビブ・オバディア氏は、2016年に当時の輝かしいキャリアを捨て、来たるべき危機を防ごうと立ち上がりました。そして、「情報の終焉」と題したプレゼンテーションで、科学技術者らに警告したのです。

数あるSNSはクリック数やシェア数、効率的な広告や収益を高く評価するため、情報の質が損なわれ、取り返しのつかない一線を越える状況だとし、情報エコシステムが非常に不健全な状態にあると主張しました。

そのときのアメリカは、大統領選挙を数週間後に控えていたころ。同氏の主張はほぼ無視されましたが、大統領選が終わったあと、虚偽ニュースが選挙中に拡散されていたことが明らかになり、人々は愕然としました。オバディア氏の警告を聞いたFacebookからの参加者は、のちにニュースフィード機能を正常化させる取り組みを推進したそう。

情報の終焉危機がすぐ目の前に!?

オバディア氏は、さらに恐ろしい危機を警告しています。それは、人工知能(AI)、機械学習、拡張現実(AR)などが悪用されて起こる、人間の模倣や、情報戦争の勃発です。

例えば、スタンフォード大学などの研究チームは、ビデオ内で、人物Aの表情を、人物Bの表情に合わせて変えるプログラムを開発しています。また、ワシントン大学では、人物Aによって録音された音声を、あたかも人物Bが本当に話しているかのようなビデオを生成するプログラムが作られているのだとか。これらが意味することは、世界のリーダーが実際には話していないことを、あたかも話しているような映像を簡単に作れてしまうということです。

また、機械学習プログラムで実在しない人物の偽メッセージを作ったり、AIが標的を調べ上げ、その人物になりすましメッセージを偽造したりすることだって可能になります。

では、いったいこのような危機が迫るなが、私たちはどう備えたらよいのでしょう。

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フェイクニュースに振り回されないために

―認知能力が低いと認識を改められない―

ベルギー・ゲント大学の研究チームは、390人の被験者を、認知能力が高い・低いで分類し、以下の実験を行いました。

まず被験者に、ある女性の写真を見せ、ポジティブな情報と、ネガティブな情報を伝えます。そのあと、ネガティブな情報がウソであったことを被験者に伝えます。すると、認知能力が低いと分類された人は、認知能力が高い人に比べて、最初の情報が誤りだと伝えたにもかかわらず、認識を改める割合が低かったそうです。

したがって、ウソの情報に、後々影響されないためには、認知能力を高める必要があります

―上手に疑わなければ虚偽を真に受けてしまう―

発達心理学の世界的権威らが著した『科学が教える、子育て成功への道』では、子供たちの思考力や行動力を高めるために必要なスキルを6つ挙げています。その中にある「クリティカル・シンキング(批判的思考)」の習熟段階は次の4つ。

レベル1. 見かけをそのまま信じる
レベル2. 定説だけで現実をとらえる
レベル3. 人の意見を真に受ける
レベル4. 根拠づけて上手に疑う

レベル3止まりの習熟度では、フェイクニュースに振り回されてしまう可能性大ですよね。「クリティカル・シンキング」とは、いわゆる最適解を導き出すために “問い続ける思考法”。上手に疑うことができるクリティカル・シンカーになることが重要です

「認知能力」と「思考力」を鍛える方法

では、ここから、「認知能力」と「思考力」を鍛える方法をご紹介します。

―認知能力を高めるには―

アメリカ・フロリダ州立大学のジョセフ・グジィヴァチュ博士らのチームが5,000人を対象に調査したところ、仕事が複雑なほど歳を重ねたときの認知能力が優れていると分かったそうです。仕事の複雑さとは、新しいスキルの習得、新しい課題への挑戦などのこと。

また、ハーバード大学公衆衛生大学院の助教授ジョゼフ G. アレン氏らの研究では、CO2濃度が低い環境で働く人ほど、認知機能テストで高得点を取ると確認しています。

そのほか、イタリア・ラクイア大学や、南オーストラリア大学の研究チームは、フラバノールを多く含む食品が、人間の認知機能の低下を防ぎ、その機能を高めることを確認しています。フラバノールが脳の海馬の中にある歯状回への血流量を増加させるそう。

そして、筑波大学体育系の征矢英昭教授と中央大学理工学部の檀一平太教授の共同研究グループは、わずか10分間の軽運動でも、認知機能が高まることを確認しています。これらを踏まえると、認知機能を高める方法は以下のとおり。

1.できるだけ新しいスキルの習得や、挑戦が必要な仕事を選ぶか、率先して行う
2.常に換気をよくして、CO2濃度が低いクリーンな環境に身を置くようにする
3.フラバノール(チョコレート・ココア・ブラックベリー・赤ワイン・緑茶など)を摂取する
4.毎日最低でも10分間、ウォーキングや階段の上り下りを行う

―クリティカル・シンカーになるには―

グロービス経営大学院では、クリティカル・シンキングの土台となる3つの基本姿勢を次のように伝えています。

1. 目的は何かを常に意識する
2. 人にはそれぞれ思考のクセがあることを前提に考える
3. 常に「Why?」「True?」と問い続ける

いつでもどこでも思考の懐を深くして、何かの情報に触れたときは、さまざまな角度から検証しましょう。

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フェイクニュースに振り回されないために、「認知能力」と「思考力」を鍛える方法をご紹介しましたが、もうひとつ、直接人に会って対話する、直接足を運ぶということも大切です。五感を通じて感じることは、第六感(直感)を鍛えることでもあります。便利な時代だからこそ、自分自身の能力も高めてくださいね!

(参考)
GIGAZINE|「フェイクニュース」によって生まれた誤った認識は認知能力が高くなければ正すことが難しい
BuzzFeed News|フェイクニュース危機を予言した男、今度は「情報の終焉」を警告
ITmedia PC USER|日本も安心できない? 米大統領選のロシア干渉疑惑にみる「ネット情報工作の現在」
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|オフィスの空気が淀んでいると仕事の生産性が低下する
カラパイア|退屈な仕事が脳を殺す。刺激不足は記憶力と集中力に影響を及ぼす(米研究)
共同通信PRワイヤー|中央大学のプレスリリース|軽い運動でも認知機能は高まる!―短時間の軽運動でも高まる実行機能と脳内神経基盤の解明―
Study Hacker|常に問い続けよ。IQにも勝る「クリティカル・シンキング」3つのきほん
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