仕事でも日常生活でも、一向に問題を解決することができないときがあります。そうなると、「もう解決は不可能ではないか」という気分になってしまいますよね。
しかし、問題の本質を見極め、本音を優先してみると、思いがけず早い解決が可能になるかもしれません。2つのエピソードとともに、問題解決のカギを明らかにします。
問題解決は意外にシンプル?
最初のエピソードをご紹介しましょう。ある寒い嵐の夜、物置の戸の「留め具」が壊れ、開いたり閉まったりしている激しい音に気づいた妻は、夫に「留め具を修理してほしい」と頼みました。暖かい部屋でリラックスしていた面倒くさがりな夫は嫌がりましたが、あまりにも激しい音を耳にして渋々立ち上がったそうです。
妻はドライバー、代用の留め具、釘、金づち、懐中電灯、合羽など、あらゆるものを準備。しかし、寒い雨の中で楽しくもない修理に時間をかけたくない夫は、妻から釘1本と金づちだけを受け取り、「(夕食で食べた)かまぼこの板」を1枚洗って持ってくるよういいました。
それから、風の勢いに任せてバタバタと音を立てている物置の戸の前に立った夫。こんな状態じゃ、さぞかし時間がかかるだろうと思った妻をよそに、夫は「かまぼこの板」を戸口の枠板に合わせて「トン!」と太い釘1本を打ち込み、それを軸に板を45度回転させ、うるさい音を立てていた物置の戸の留め具代わりにしてしまいました。
わずか1秒ほどの修理時間でそそくさと暖かい部屋に戻った夫は、いつものスペースに寝転んで、再びテレビを観はじめたそうです。それを見た妻は、「この人は本当に面倒くさがり屋だなあ」と思いつつ、その「知恵」に感心したそう。
自分(会社)の本音を優先する
前項のエピソードは、筆者の親族が「夫」の面倒くさがり具合を教えるために披露した笑い話です。
しかし、これは意外にも問題解決のカギになる話。夫は妻から「留め具の修理」を頼まれましたが、問題の本質は「壊れた留め具」ではなく「戸がバタバタうるさいこと」と見極めたのです。なおかつ、サッサと終え暖かい部屋に戻りたい「本音を優先」して、“元通り”ではなく“新たな策”を生み出し、迅速に問題を解決してしまいました。
問題解決は、その本質を見極めない限り、表面的な解決策に振り回されてしまうことがあります。それに、大概は「できるだけ面倒やコストを抑えて、迅速にことを収めたい」という本音が根底にあるので、そのギャップに立ち止まり停滞してしまいます。
だからこそ、理想的な解決策に対し「できるか・できないか」からの始まりではなく、まずは本音を優先したほうが、実現可能で的確なアイデアが生まれやすいかもしれないのです。
問題は違う視点からも眺めてみる
もうひとつ、「エレベーター問題(ラッセルL.エイコフ氏著の『問題解決のアート』より)」という、有名なエピソードをご紹介します。ある大きなオフィスビルに入っているテナントから、ラッシュ時のエレベーターが遅いというクレームが相次ぎ、オーナーは頭を悩ませていました。そこで提案された施策は以下の3つ。
・エレベーターの数を増やす ・一部のエレベーターを速いものと取り替える ・より速く動くために制御システムをつける
どれも問題の解決には役立ちそうですが、膨大な費用と時間がかかるため、余計オーナーの頭を悩ませることに……。そんな中、新人社員が意外な提案を口にしました。その提案とは、「等身大の鏡を各階のエレベーターの乗降ロビーの壁に据えつける」というもの。彼は心理学を学んでいたため、不平の原因が「エレベーターの遅さ」ではなく、エレベーターを待つ間に何もすることがないという「退屈さ」だと分析したわけです。
結果として、少ない投資で済むシンプルな鏡のアイデアを採用したことによって、エレベーターの乗降ロビーで待つ人は鏡で身なりをチェックするなどして暇をつぶすようになり、不平不満が消えていったそうです。
客観的になれば「問題の本質」が見えてくる
「エレベーター問題」のエピソードは、たまたま心理学を勉強した新人が、誰よりも画期的なアイデアを出した話ですが、何よりも問題を客観的に分析して見極めることの重要性を示しています。もちろんアイデアを出す際に、オーナーの本音も優先したからこそ、低コストかつシンプルな方法が生まれたはず。
もしも、ずっと「エレベーター本体をどうしたら安く速く改善できるか」なんて考えていたら、永遠に「策」と「現実」のギャップを埋められず、解決することができなかったでしょう。
問題解決のカギは「本質」と「本音の優先」
これまでのことを踏まえ、問題解決のカギは「問題の本質を見極める」ことと、「本音の優先」であることが明らかになりました。本質を見極めることが的確なアイデアを導き、本音の優先がムダな案を最初から省いてくれます。したがって、問題解決に頭を悩ませているときは、
1.実行しにくい案を手放す 2.問題を客観的に眺める 3.問題の本質を見極める 4.本音を優先する
の4つを心がけ、解決策を導き出しましょう!
*** 人間のあらゆる記憶は情動中枢や内臓とつながりが強い脳の大脳基底核に保管され、何かに接したとき「気持ち=直観」となって語りかけてくれるそう。“腑に落ちる”という言葉も、それを表しています。この解決策はピンとこないと感じたら、経験からなる直観が「本質とは違うよ」「本音じゃないよ」と語りかけているのかもしれません。シンプルで無理のない解決策を見つけてくださいね!
(参考) 日経ビジネスオンライン|問題解決をデザインする Study Hacker|「go.jp」と「ac.jp」で “正しい情報” が手に入る!? フェイクニュースに騙されない『検索』の仕方。