「あの人は、別に喋りがうまいわけではないし、バリバリ仕事をしている感じでもない。あまり目立たない、“おとなしめ”な印象の人だ。でも、なぜか結果だけは、常にしっかりと残している。どんな秘訣があるのだろう?」そう感じてしまう対象となる人が、こっそりやっている3つのことを紹介します。
“仕事をしている風” にだまされてはいけない
「結果を残している“おとなしめ”な印象の人」は、楽天的で活発な外向型とは違います。どちらかというと、少数派の内向型に分類できるでしょう。世の中の75%は「外向型人間」で、残りの25%が「内向型人間」だといいます。
しかし、ベストセラー『内向型人間のすごい力 静かな人が世界を変える』の著者であるスーザン・ケイン氏は、社会的に内向型であることが不利だと考えられているせいか、実は「たくさんの人が外向型のふりをしている」と述べます。同氏がハーバード・ビジネススクールで取材をした際、生徒らは「成績も社会的ステータスも外向性次第」だと信じて疑わなかったそう。ところが実際には、外向型がビジネスで優位というわけではないのだとか。
もちろん、ビジネスにおいて外向性は必要です。しかし、周囲とコミュニケーションを取ってばかりで内省せず、先へ先へ、もっと速くと積極的になりすぎてばかりも問題なのです。それらを踏まえ、結果を残している人が行なっていることを紹介していきます。
1.結果を残している人は、おとなしく「思考の整理」をしている
カール・ユングの心理学説に基づいて、キャサリン・C・ブリッグス氏と娘のイザベル・B・マイヤーズ氏が開発した「マイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標(MBTI)」によると、
「 外向型」は、人の中にいることでエネルギーを得る。
「 内向型」は、1人でいることでエネルギーを得るとのこと。
心理療法士のマーティ・O.レイニー(Marti Olsen Laney)氏によれば、
「外向型」は刺激を求めて飛び回り、広く浅く経験を積み重ねる。
「内向型」は静かに自分と向き合って充電し、深く経験することを好むそう。
また一方で、コンサルタント・中小企業診断士の井上龍司氏は、仕事を遅くする要因のひとつは、「思考の整理」で解消できると説明します。
仕事が遅い要因には、スキルが足りない場合と、頭の中を整理しきれていない場合があるからです。後者の場合、スタートは早いのですが、情報や準備が不十分なせいで立ち止まったり、やり直したりが発生し、結局は何倍もの時間を要してしまいます。
つまり、1人で考える時間が十分にあれば、思考の整理も十分になされている可能性があるということ。「結果を残している“おとなしめ”な印象の人」は、思考をうまく整理できているからこそ、生産性が高いわけです。
2.結果を残している人は、静かに「信頼の蓄積」を行っている
仕事でもプライベートでも、口が堅いことは、絶大な信頼をもたらす要因です。「マイナビ」が2015年3月に社会人411人の回答を得たアンケートでは、多くの人が、信頼できる人間の指標に “口の堅さ” を挙げたとのこと。
すると、マーティ・O.レイニー氏の著書『内向型を強みにする』の、内向度を診断するテストのなかには、
- 休息は自分1人か、2~3人の親しい人と過ごす
- 祝い事は1人の相手か、数人の親しい友達だけと
- 長期的な人間関係を築く
- ちょっとした知り合いは、友達ではない
といった、内向型の特性が示されていました。これらには、「口の堅い信頼できる人物象」が当てはまると思いませんか?
『「選ばれる人」はなぜ口が堅いのか―言葉を選ぶ技術、言い換えるテクニック』を著した大谷恵氏によれば、「人から信用され、頼られる人ほど、『何を言わないか』を理解している」とのこと。無一文でマレーシアに飛び込み、上場企業を含む約50社の一大企業グループを築き上げた小西史彦氏は、「信頼関係こそがビジネスのインフラだ」といいます。
つまり、広く浅くではなく、狭く深い人間関係を好む、「結果を残している“おとなしめ”な印象の人」は、相手が言及しなくても“言うべきではないこと”をよく理解し、信頼関係を築いてビジネスを整備しているのです。
3.結果を残している人は、じっくりと「リスク管理」を行っている
マーティ・O.レイニー氏によると、PET(陽電子放射断層撮影法)を用いたアメリカの研究では、脳へ流れる血液量が、外向型より、内向型のほうが多いとわかったそうです。また、外向型と内向型の人の血液は、それぞれ違った経路をたどっているのだとか。
- 「外向型」:短くシンプルな経路に流れている→「視覚、聴覚、触覚、味覚が処理される脳の各部」
- 「内向型」:より長く複雑な内部に集中→「記憶、問題解決、計画といった内的経験にかかわる脳の各部」
外向型は外部からの感覚情報に注力し、内向型は内部の思考や感情に精力を注ぐということ。これを受け、研究を行なったデブラ・ジョンソン博士は、外向型と内向型の違いは、脳の異なる経路を使うことに起因すると結論づけたそう。
これは、スーザン・ケイン氏が述べていることにも通じます。外向型の人は、自己肯定感を求めて行動するため、根底には報酬指向があるのだとか。逆に、内向型の人は、リスク回避しようとする脅威指向だといいます。
そのため、たとえば失敗に直面したとき、外向型の人は目的を達成することに集中しすぎて、正確な判断や他者の意見を聞くことができなくなり、そのまま突っ走ってしまいがちなのだとか。
逆に内向型は、何が悪かったのか考えることに時間をかけてから、次の行動に移すのだそう。ともすれば、「臆病」「じれったい」などと思われてしまうかもしれませんが、彼らが行っているのはいわば「リスク管理」なのです。
血液の流れからもわかるように、報酬指向の外向型はクイックでシンプル。一方、脅威指向の内向型は、より長く複雑です。そうして、できる限りリスクを回避するからこそ失敗が少なく、確実に結果を残せるということ。
つまり、「結果を残している“おとなしめ”な印象の人」は、常にリスク管理が万全なわけです。
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「結果を残している“おとなしめ”な印象の人」が、常に行っている3つについて説明しました。
- 思考の整理
- 信頼の蓄積
- リスク管理
よろしければ、『「口下手で寡黙」なのになぜか評価が高い人は何をしているのか?』も一緒にご覧くださいね!
(参考)
マーティ・O. レイニー 著(2013),『内向型を強みにする』, パンローリング株式会社.
インテル|データセンター・ソリューション、IoT、PC イノベーション|効果的なプロジェクトの設計: 思考スキルの構造
ダイヤモンド・オンライン|DOL特別レポート|仕事の速度を上げ生産性を倍増させる「思考整理術」
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