ピークエンドの法則というものがあります。これは、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者、ダニエル・カーネマン氏が提唱した、人間の思考の勘違いを説明したものです。Weblio辞書では以下のように説明されています。
ピーク・エンドの法則(ピーク・エンドのほうそく、英語:peak–end rule)とは、われわれは自分自身の過去の経験を、ほとんど完全にそのピーク(絶頂)時にどうだったか(嬉しかったか悲しかったか)ならびにそれがどう終わったかだけで判定する、という法則である。
(引用元:Weblio辞書|ピークエンドの法則)
日本語で言うところの「終わり良ければ総て良し」に近いものです。スポーツ等でよくある、どんなにつらい練習をしてきても、目標を達成するとそのつらさを忘れ、勝利の喜びばかりを覚えている、といった現象は、この法則によって説明されます。
今回の記事では、この人間の思考の癖を利用した、嫌いな勉強であってもやりたいと思ってしまうような方法を紹介します。
いい思い出で終わろう
以前、プロのテニス選手の試合前の調整を見たことがあります。そのとき印象に残ったのは、練習を成功で終わらせようとしていたことです。これは、ピークエンドの法則を利用し、試合前に成功イメージを持とうとしていたのでしょう。
これを勉強に応用してみましょう。
勉強における喜びといえば、わからなかったことが習得できた快感や、知らなかったことを知った時の、知的好奇心が刺激されワクワクする感覚などがありますよね。それを毎日の勉強で科目ごとに発見していきます。そして、それを一日の終わりにノートに書き出していくのです。「センター数学が7割を超えた」とか「現代文で模範解答に近い記述ができた」といった具合です。続けていくうちに、勉強は毎日進歩を感じられる楽しいもの、という風に思えてきて、やる気があがっていきます。
頭の中の情報を紙に書いてアウトプットするということは、脳内の情報の再現です。難しい問題が解けたときの快感や、知的好奇心を刺激されたような事を書いていけば、その時の感情が再現され、明日以降机に向かうモチベーションになるでしょう。
うれしい副作用
勉強で体験した楽しさをノートに書くためには、その日どんなことを勉強して、どのようなことができるようになったのかを思い出す必要があります。すなわち、このノートを書くことは、学んだことを復習することにもなるのです。
人間の脳の特性として、最後に思い返したことをよく覚えているというものがあります。そのため、学んだことを最後にまとめて思い出せば、それはより一層強く記憶に残ります。
小さな目標を達成し続けよう
古典的ではありますが、超えられそうな程度の目標を立て、比較的短いスパンで達成していくことも有効です。よく言われるように、計画は最終的な目標から逆算して立てていきます。そして、それをされに細分化して、1~2週間ごとにどのような目標を達成していたいのか、達成しやすいものを心掛けて設定していきます。
目標を立てている段階ではついつい難しいものを立てがちですが、それが達成できなくては時間がもったいないもの。加えて、目標を達成できなかった焦り等が残ってしまい、逆効果です。
目標は、わかりやすい数字をベースに設定するとよいでしょう。例えば、「単語帳○○を~ページまで覚える」や、「次のテスト~番以内に入る」といった目標です。「英文読解を武器にする」というような具体性に欠ける目標は、達成したかどうかがわからないのでお勧めしません。
*** いかがでしょうか。 人間の思考は時折不合理な働きをします。それを利用すれば、今まで苦痛だったものも、楽しいと「勘違い」させることだってできるのです。
(参考) Weblio辞書|ピークエンドの法則 マイナビウーマン|立ち去る瞬間に好印象を残せる「ピークエンド」の法則とは?―「急いで立ち去らない」