皆さんは、後輩や部下の発表やプレゼンに対して意見を求められたとき、適切なコメントを返せていますか? 発表に対するコメントなど、周りからのフィードバック次第で、発表者の今後のパフォーマンスの良し悪しが変わってくるようです。今回はどのようなコメントをすれば効果的かをお伝えします。
エンハンシング効果
経営学の認知的評価理論では、「フィードバックで、どの程度その活動をうまく行えたかという情報を与えることによって、有能感が高まり、内発的動機付けが高まる」ということが知られています。これをエンハンシング効果といいます。 内発的動機付けが高くなればなるほど、給料などの報酬に左右されない、モチベーションを持つことができるので、部下や周囲の人を伸ばす上でとても大切な要素となります。
ちなみにここでいう有能感とは、「自分自身の周りの環境に対して働きかけることで、環境を変化させることができたときに得られる喜び、つまり満足感のこと」を言います。例えば、鉄棒ができないという状況があるとき、練習という働きかけをすることでできるようになり、状況を変化させることができます。このときに生まれる「自分には能力がある」「自分はできる」という喜び、満足感が有能感です。
まとめると、人のモチベーションを高め、その後よりよいパフォーマンスをさせるためには、相手の有能感を高められるようなコメントを返すことが必要なのです。では、どのようなことを言えば相手のパフォーマンスに効果的に働くのでしょうか。
叱責よりも称賛が効果的
アメリカの心理学者ハーロックは、学習成果と称賛・叱責などの関係に関する実験を行った。小学生に対して、算数の問題に継続的に行い、 ・基本的に褒められるグループ ・基本的に叱られるグループ ・何も声をかけられないグループ の、三つのグループに分けた。数日間の継続的な成績の計測を行い、ほめられるグループは5日間成績が伸び続け、叱られるグループでは最初は伸びるがすぐに停滞。何も声をかけられないグループは、何の成果もなし。 という結果が導き出されたのである。
(引用元:第2回教育学概論)
このハーロックの研究から、叱責よりも称賛の方が長期的にパフォーマンスを高めるためには効果的だということが分かります。叱責されるよりも称賛された方が有能感を感じられる、というのは誰もが納得できることでしょう。
教育において、その子供が褒めて伸びるタイプなのか叱責されて伸びるタイプなのかを見分けることが大事、というのはよく言われることですが、一般的には称賛した方がパフォーマンスが良くなるようです。よって、人のパフォーマンスに対してコメントをするときには叱責よりも称賛を重視したほうが良いのです。
称賛する際に注意すべきこと
称賛が人のモチベーションを高めるからといって、手放しに称賛することはNGです。それではただのおだてになってしまいます。また、称賛する対象にも気をつける必要があります。
称賛は、そのパフォーマンスまでの過程やそのための努力に対してするべきものであり、相手の学歴や経歴などのバックグラウンドの部分を称賛するのは適切とは言えません。パフォーマンスと直接関係していない部分を称賛されても、パフォーマンスに対するモチベーションは上がらないのです。
*** いかがでしょうか。周りからのコメント、フィードバック次第で人のやる気、パフォーマンスは大きく変わってしまいます。後輩や部下のやる気を高めたいときには、ぜひ称賛の効果を使ってみてください。
参考: 弘前大学学術情報リポジトリ|内発的動機付けに及ぼす報酬の効果 内発的動機付け 52122 第2回教育学概論