この2019年は、メモを最大限活用する1年にしませんか?
去年1年間のご自身の仕事を思い返してみてください。会議中や、セミナーの聴講中、あるいは上司から指示を受けたとき。みなさんは、こうした場面で取ったメモを後で見返したとき、何を書き留めていたか内容をすべて思い出すことはできていたでしょうか? メモの量が増えてしまい、どれが何のメモなのかわからない。紙上に文字がぎっしり詰まっていたり、ラインやマークをつけすぎたりして、重要な部分の見分けがつかない……。こんな経験をした人も多いはずです。
たかがメモだと思うかもしれませんが、メモ作りが得意だと仕事がよりスムーズに進むようになります。今回は、要点を確実につかむ最強メモの作り方についてお伝えします。もう仕事が始まっている人も、仕事始めがまだの人も、ぜひ参考にしてくださいね。
的確なメモを取れないことのデメリット
わざわざ書き取ったにもかかわらず、何の役に立たないメモ。これは、私たちにとってデメリットでしかありません。メモを取るために費やした時間も労力も無駄になってしまいますし、メモから肝心な情報を読み取ることができないせいで、仕事に悪影響が出てしまうかもしれないからです。
愛知県岡崎市内外の中小企業・起業家らを宣する岡崎ビジネスサポートセンター OKa-Bizセンター長の秋元祥治氏は、無意味なメモの取り方について次のように説明します。
ただ話者が話していることをすべて丸写しするようなメモでは、あまり意味がありません。また、黒板やホワイトボードに書かれていることをキレイに書き写す人もいますが、それだけではもったいない。後で見返すために記録しておきたいなら、後からスマホで撮影したってよいのです。話者は話していることを補助する意味で板書しているのですから、書き写すのに忙しくて話を聞けないのなら、本末転倒です。
(引用元:DIAMOND online|ライバルに差をつける「メモの取り方」教えます。)太字は筆者にて施した
いくら見た目がきれいなメモであっても、しっかりと内容を聞き取り理解していなければ、自分なりに意見を考えたり疑問点を話し手に尋ねたりすることはできません。せっかくのメモが、話を理解する妨げになってしまうこともあるのです。
的確なメモを取ることのメリット
一方で、的確にメモを取れることは仕事力アップに必ず効きます。メモを取ることによって、脳の「ワーキングメモリ」を解放することができるからです。
ワーキングメモリとは一時的に情報を脳に保持し処理する能力のこと。ワーキングメモリには、新たな情報が入ってくると古い情報がどんどん消されていく、容量が少ない、といった特徴があります。会議で話し合いをしている時や講演を聞いている時など、話の内容をメモせずに頭の中だけですべて考えようとすると、ワーキングメモリを圧迫してしまうことに。すると、本当に覚えておくべきことを覚えることができなかったり、考えを深めることができなかったりしてしまいます。
ですから、会議やセミナーなどの最中には、大事な事柄はぜひメモに記すべきです。カナダのマウント・セントヴィンセント大学が行った実験によれば、情報をメモに記録すると、記録しなかった場合に比べてその情報を忘れやすくなるのだそう。メモを取らずに話を聞き続けていると、大事な情報もそうでない情報も、いつかワーキングメモリからこぼれ落ちてしまいます。ですが、大事なことはメモに取り、後でメモを見返せばよいという状態を作っておけば、ワーキングメモリの空き容量を増やすことができ、話を聞くことに集中することができますよ。
つまり、ある情報についてメモを取るのは、それを覚えておくためではなく、その場では忘れて今すべきことに集中するため。メモを上手に取ることの意義は、もう明らかではないでしょうか。
上手なメモの取り方
では、私たちはどうすれば、的確なメモを取ることができるのでしょうか。具体的な方法をご紹介したいと思います。
1. 必ず日付を入れる
当たり前のようでいて、意外にも抜け落ちやすいポイントが「日付」です。メモには、「○月×日」と必ず書き入れるようにしましょう。メモした内容を思い出しやすくなるだけでなく、あとで溜まったメモを整理する時にもきっと役立ちますよ。
新規事業推進や人材育成事業などを手がける新産業開発研究所代表取締役で、ビジネスプランナーの坂戸健司氏は次のように述べています。
「メモの右上」など、あらかじめ場所を決めておくと習慣化しやすい。また、日付や時間、金額などの「数字」の間違いはビジネスでは致命傷になることがある。メモはどんなに汚い字でも自分が読めればいいが、数字だけは正確に、読みやすく書く練習をしておこう。
(引用元:PHP Online 衆知|「メモ」の達人が教える12のテクニック)
また、メモに日付を盛り込むことで、「○月×日に、上司から~~という指示を受けた」「○月×日に、誰々がこう発言した」というように、事実を正確に書き留めることもできます。トラブルが起きた際に、そのメモは“証拠”として活躍するかもしれません。ぜひ、メモには日付を書き入れましょう。
2. その場の雰囲気も一緒に記録する
メモと言うと、内容ばかりに気が向きがち。ですが坂戸氏は、加えてその場の空気感をメモしておくことも効果的だと言います。記憶がよみがえりやすいほか、相手の真意に後から気づくきっかけにもなるのだそうですよ。
例えば、会議で上司が「よし、このプロジェクトを進めていこう」と発言したとしましょう。その時、上司の表情が明るかったのなら「上司→前向き」、渋い表情をしていたのであれば「上司→心配事?」というようにメモしておきます。そうすれば、上司がそのプロジェクトに対してやる気に満ち溢れている様子なのか、懸念すべき点があると考えている様子なのかを一言でメモすることができますね。その場の空気感についてのメモは、仕事の円滑な運営に大いに役立つ情報だと言えるのです。
3. 余白を設ける
また、メモには必ず余白を設けるようにしましょう。秋元氏のオススメは、ノートなら右端4センチほど、パソコンであればドキュメントの下半分を余白スペースとして確保すること。特に会議やセミナーなどでは、メモに余白を設けておくとより効率よく話を聞くことができます。
CEOやエグゼクティブへのコーチングを行うサビーナ・ナワズ氏は、ナワズ氏は、メモの余白の効用について次のように説明しています。
余白には、あなたのアイデアや判断、反対意見、そして書きとめた各要点に対する疑問を記入する。これらを分けて記入することで、あなた自身の考えを他の出席者の発言と区別できる。そうすることで、あなた自身の意見を(文字どおり)脇に置き、 他の出席者の話に耳を傾ける余裕を確保できる。たとえば、あらたに展開する製品について、あなたの上司が次から次へとアイデアをまくし立てている場合は、余白に「予算について尋ねる」とか「CEOの回覧状を思い出させる」とメモしてもいい。
(引用元:ハーバード・ビジネス・レビュー|会議を成功させたいならメモの取り方を変えなさい)太字は筆者にて施した
追加の情報があった時に補足しやすい、浮かんだ疑問点をその場で書き留めておける、自分の考えをまとめ直すのに便利、といったメリットもあります。メモの紙面には、ぜひ余裕を持たせましょう。
4. 要点だけを書く
そして、メモを取る際に最も大切なことは「要点だけ」を書くこと。話の内容を一から十まで記録していては、とても的確なメモとは呼べません。
とは言え、「要点だけ」を書き出すのが難しいと感じる方は、坂戸氏が推奨する「5W2H(いつ、どこで、誰と、なぜ、何を、どのように、いくらで)」を意識したメモを作成してみましょう。メモに利用するノートにあらかじめテンプレートを作って置き、5W2Hに沿って欄を埋めながら話を聞くのも良いそうですよ。
メモの取り方の具体例
これまでにお伝えした4点を踏まえた実際のビジネスシーンでのメモに関して、コクヨ株式会社の社員の方の例を引用することにしましょう。
(画像引用元:東洋経済ONLINE|新鮮!仕事ができる人のノートを覗いてみた)
無駄な情報がなくすっきりしていて、あとから見返しても理解しやすいものになっていますよね。ご自身のメモと比較してみていかがでしょうか。みなさんもこれを参考に、メモの改善に取り組んでみてください。
*** メモの取り方一つで、仕事力に大きな差が出ると言っても過言ではないはずです。メモを最大限活用できるよう、ここでお伝えしたことをぜひ実践してみてください。
(参考) ハーバード・ビジネス・レビュー|会議を成功させたいならメモの取り方を変えなさい WIRED|メモを取っても記憶は定着しない:研究結果 東洋経済ONLINE|新鮮!仕事ができる人のノートを覗いてみた DIAMOND online|仕事ができる人の「メモの取り方」はここが違う DIAMOND online|ライバルに差をつける「メモの取り方」教えます。 PHP Online 衆知|「メモ」の達人が教える12のテクニック STUDY HACKER|脳の「ワーキングメモリ」を鍛える方法。仕事の能力、勉強の効率アップには、ワーキングメモリの強化と解放が効く!