社会人にとって大切な素養のひとつに「スケジュール管理」が挙げられます。仕事全体が効率よく進むように計画や段取りを汲むのは、仕事をする “以前” の超基本的なビジネススキルと言ってもいいでしょう。
でも多くの人が、このスケジュール管理を誤解しています。「スキマなく予定を詰め込んだうえで、それらを時間通り寸分の狂いもなくこなしていく」ことがスケジュール管理だと思っているのだとしたら、今すぐその考えを改めたほうがいいでしょう。なぜならば、そんなスケジュールは破綻するのが目に見えているからです。
スキマがないと「予定外の仕事」に絶対負ける
10時から11時まで社内会議、少し飛んで14時から15時まで外部との打ち合わせ、さらに時間が空いて17時から18時まで別の打ち合わせ——こんなふうに予定がとびとびになったとき、「なんだか時間を無駄にしているような気がする……」「こんなにスケジュールが空いていてもったいない……」と思ったことはありませんか。そして、空き時間を埋めるために、次から次へと「この時間にはこの予定を入れる」「この時間にはまた別の予定を入れる」と詰め込んでいく……。こんな経験をお持ちの方も多いはずです。
しかし、こうした「“時間を埋める” 発想で作ったスケジュールは、実際にはうまくいかない」と警告するのは、時間管理コンサルタントとして活躍する有限会社ビズアーク取締役社長の水口和彦氏です。
本当にスキマなく仕事を詰め込んでしまうと、その予定以外は何もできなくなってしまいます。ところが、仕事では予定外のことも必ず起こりますから、スキマなしのスケジュールはうまく実行できなくて当然です。
(引用元:ダイヤモンド・オンライン|ドラえもんに学ぶ“未来の自分”への仕事振り分け術)
そう、この「予定外の仕事」が入ってきてしまうのが、ビジネスの世界の怖いところ。上司からの数分程度の呼び出し、簡単な電話対応ぐらいであれば、まだかわいいほうです。例えば、緊急で対応しなければならない難しい顧客案件や、「明日までにやっておいて」と急に上司に指示された重たいタスクなどが舞い込んできたとしたらどうでしょう。スキマなく完璧に組み立てたはずのスケジュールは、その時点で跡形もなく崩壊します。
水口氏は、「仕事内容や役職によって変わってくるものの、全体の時間の2割程度を予定外の仕事に取られている人が多い」と指摘しています。予定外の仕事の対応が優先されることになった結果、当初予定していた業務は、数時間後、1日後、2日後と、どんどん後ろ倒しされていくことは、もう目に見えているのです。
スキマがないと「重要な仕事」が後回しになる
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏は、「本当に重要な仕事ができなくなる」という観点から、スケジュールを詰め込みすぎる危険性を述べています。
手帳に入る予定の多くは、会議や面談、打ち合わせなど、誰かに時間を合わせる受け身の予定ではないでしょうか。そうなると、予定が入れば入るほど、主体的に使える時間が減っていくわけです。つまり、時間泥棒に自分の時間を盗まれていることになります。
(引用元:プレジデント・オンライン|超デキる人の「スケジュールが白い」ワケ)
スケジュールがぎっしり真っ黒になっている人は、受け身の仕事をこなしているだけの人。逆に言えば、自分が本当に腰を据えて取り組まなければならない重要な仕事に割ける時間を、ほとんど確保できていないということです。そんな状態で、会社が期待する成果やアウトプットを出せるでしょうか。まさに、自分から首を絞めてしまっていると言えるのです。
「スキマ時間は死守」が鉄則
ぎっしりと予定が詰められたスケジュールは、「予定外の仕事」に対処する時間が全く考慮されておらず、また重要な仕事に腰を据えて取り組む時間を大幅に減らしてしまう原因にもなることがわかりました。
私たちが心がけるべきは、スキマ時間に無理に予定を入れようとせず「スケジュールの空白を死守する」ということです。そしてそのためにも、スケジュールに余裕を生み出す方法を知ることが求められます。その際は、『7つの習慣』を著した経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィーが提唱する「時間管理のマトリクス」が大いに役立つでしょう。
(画像引用元:株式会社みらいアーチ・コンサルティング|時間管理のマトリクス)
このマトリクスは「重要度」と「緊急度」の2軸から成っており、「第1領域:重要度が高く緊急度が高い」「第2領域:重要度は高いが緊急度は低い」「第3領域:重要度は低いが緊急度は高い」「第4領域:重要度が低く緊急度も低い」の4つの領域に分かれています。自分が抱えるそれぞれのタスクが、はたしてどの領域に属するのかを見極めていくのです。結論から言えば、第3・第4領域に属するタスクは極力減らしていくことで時間的余裕を生み出し、重要であるにもかかわらず最も後回しされやすい第2領域のタスクに注力できる時間を確保することが求められます。
第3領域(重要度は低いが緊急度は高い)に属するタスクで最も代表的なのは、それほど重要ではない電話やメールへの対応が挙げられるでしょう。その他、事務的な作業(会社に提出しなければいけない書類や請求書類の処理など)も含まれるかもしれませんね。これらは「テンプレ化」したり「一度にまとめて処理」したりするのが賢明な手段です。すぐに終わらせられるタスクが多いぶん、ちょっとした時間ができるたびについ手を伸ばしてしまいたくなりますが、それはスキマ時間に目がくらんでしまっている証拠。これらのタスクは「それほど重要ではない」ことを今一度理解しておきましょう。
第4領域(重要度が低く緊急度も低い)に属するタスクは、今すぐやめるべきです。何も生み出さない電話や、先例に倣って毎回作っているものの会議で一度も言及されたことのない資料などなど。
こうして節約された時間は、あなたにとって最高の空白時間となるはずです。例えば、まだまだ先の1ヶ月後に締め切りを控えている新規事業の企画立案など、緊急度は低いものの重要度が高い第2領域のタスクを、この時間を使って積極的に進めるようにしてください。
**** スケジュールを詰め込みすぎる人が危ない理由をまとめてみました。重要なのは、主体的に使えるまとまった「空白時間」を前々から確保しておくこと。ぜひ余裕を持ったタイムマネジメントを心がけてみてください。
(参考) ダイヤモンド・オンライン|ドラえもんに学ぶ“未来の自分”への仕事振り分け術 StudyHacker|“想定外” を想定せよ! 時間管理は「矛盾」との戦いだ。——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第1回 プレジデント・オンライン|超デキる人の「スケジュールが白い」ワケ スティーブン・R・コヴィー (2013),『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』, キングベアー出版. 株式会社みらいアーチ・コンサルティング|時間管理のマトリクス