かねてより健康効果が期待されてきたコールドシャワー(冷水シャワー)。ビジネスパーソンにも深く関わる研究が発表されたのをご存じですか?
たった30秒のコールドシャワーで、タフなビジネスパーソンになれるかもしれません。コールドシャワーの効果と、冷水嫌いでも取り入れやすい方法をご紹介します。
コールドシャワーの効果:病欠が減る?
科学雑誌「PLOS ONE」のオンライン版に掲載(2016年9月)された、アムステルダム大学学術医療センターのヘルト・バージュ氏らの研究では、「コールドシャワーを浴びると病欠が減る」と結論づけられました。同氏らは、オランダでボランティアの参加者3,000人に、30日のあいだ毎朝コールドシャワーを浴びてもらったそう。
その手順は、温水シャワーを浴び終える間際に、30秒・60秒・90秒間だけ冷たい水を浴びるというもの。比較のため、温水シャワーだけのグループも用意しました。
そして、その期間じゅう被験者らの職務勤怠状況を調べたそうです。その結果、コールドシャワーを浴びたグループは、温水だけのグループに比べ、勤務先の病欠日数が29%少なかったのだとか。
どの秒数でも病欠日数の少なさは同じであったため、30秒未満でもよい可能性はあります。しかし、この研究を受け現時点で明言できるのは「(温水シャワーを浴び終える間際に)30秒コールドシャワーを浴びれば十分」ということです。
なぜコールドシャワーで病欠が減ったのか?
この研究では、コールドシャワーを浴びたグループも、温水のみのシャワーを浴びたグループも、同じ程度で「不調」を訴えていたそうです。しかし、コールドシャワー群は、症状が軽度だったのか、気力が上回ったのか、それにより仕事を休むことはなかったそう。
コールドシャワーにより、いったいどんな変化が起こったのでしょう。
1.「コルチゾール」と「褐色脂肪」
バージュ氏は、コールドシャワーによる一時的なコルチゾールの増加や、褐色脂肪の活性化との関係を示唆しています。
冷水によりストレスホルモンのコルチゾールが分泌されると、心拍数が増加して、体温・血圧・血糖値が上昇し、「逃げるか戦うか」の状態になります。それにより、「よし、仕事に行くぞ!」と気持ちを奮い起こされた可能性があるということ。
また、褐色脂肪が活性化すると、カロリーを燃やして体を温かく保ち、エネルギー消費や代謝を高めます。 体温が上がり代謝がよくなるならば、免疫力アップにも関係すると考えられるのです。
2. 熱をとじこめ自律神経を整える
温かいお湯で体が温まっても、血管が拡張し毛穴が開くと、いずれ体温は下がっていきます。しかし、最後に冷水を浴びると毛穴がキュッと引き締まり、体内に熱を閉じ込めて体温を下げにくくなるのだとか。
したがって、代謝アップが期待できるわけです。また、温水シャワーからコールドシャワーに切り替えると、副交感神経から交感神経への切り替えをつくり出すため、コールドシャワーを習慣化すれば、だんだん自律神経のバランスが整い、血行も代謝も正常化してくるのだそう。
3. ノルアドレナリンなどの分泌を促す
バージニア・コモンウェルス大学の研究者ニコライ・A・シェフチュク氏は、冷水シャワーがβ-エンドルフィンとノルアドレナリンのレベル増大に影響し、ノルアドレナリンに関与する神経核を刺激するため、うつの治療を助けると主張しています。
神経伝達物質の一種「β-エンドルフィン」は、鎮痛・鎮静効果があり、快感物質とも呼ばれています。また、同じく神経伝達物質であるノルアドレナリンは意欲向上や集中力アップに影響します。
このように、コールドシャワーはさまざまな効果を生み出します。たった30秒のコールドシャワーでよいのなら、ぜひ取り入れてみたいところですよね。
とはいえ、「コールドシャワーを浴びるくらいなら、タフにならなくていい」と考える人もいるでしょう。じつは筆者もそのひとりです。
何かいい方法はないのでしょうか。
コールドシャワーのやり方
心臓などの病気がなく健康で、コールドシャワーに抵抗がなければ、ぜひ温水シャワーの最後に30秒間ほど、コールドシャワーをお試しください。いきなり冷水を浴びるのではなく、温水から徐々に冷水に移行していくと体に負担が少なく、スムーズなのではないでしょうか。
筆者のようにコールドシャワーが苦手な方であれば、シャワーの終わりに、ひざ下に2秒間ほどサッと冷水をかけるだけでも効果があるとのこと。バージュ氏らの研究でも、秒数は関係なかったと説明されています。
筆者も試したところ、気持ちが引き締まると同時に、足元がポカポカしました。代謝アップにも役立ちそうです。
また、全国冷え症研究所所長の山口勝利氏がすすめているのは、入浴やシャワーで体を温めたあと、「水で濡らしたタオルで足を数秒包む」というもの。拡張した血管を通常に戻し、開いた毛穴から熱が逃げるのを防いでくれるそうです。
ただし、いずれも心臓に不安がある方はお避けくださいね。
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バージュ氏らの研究の参加者には、実験後にコールドシャワーを続けるようになった人が多数いたとのこと。快感物質β-エンドルフィンも関与しているといった話があるので、やみつきになってしまったのかもしれませんね。
ご自身の健康状態を十分に考慮したうえで、お試しください。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
(参考)
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|冷水シャワーを浴びると病欠が減る
Buijze, Geert, Inger Sierevelt, Bas van der Heijden, et al. (2016), "The Effect of Cold Showering on Health and Work: A Randomized Controlled Trial," PLoS One, Vol. 11, No. 9.
コトバンク|コルチゾール
Wikipedia|うつ病の治療
日本テレビ|過去の放送内容
ヘルスプレス|冷水シャワーを浴びてポカポカ、「冷え性」を解消! 自律神経を刺激して<引き締め>で若返り