だからあなたは騙される! インチキロジックの代表『トートロジー』とは。

論理学……なんともとっつきにくく退屈そうな響きです。 文法、修辞学、論理学の三つは、中世ヨーロッパの大学において、神学等の上級の学問を研究するための基礎として学ぶことを求められた学問。tri(=3つの)via(=道)と呼ばれたそれら3つの学問ですが、あまり面白くなかったことから、後になってtriviaという言葉が、知っても役に立たない、無駄な知識、という意味を持つようになってしまいました。

トリビア認定されてしまっていた論理学ですが、現代においては自らを守る武器として実は重要なのです。そんな論理学の中でも重要な概念、トートロジーについて、この記事では紹介していきたいと思います。

 

トートロジー

 

突然ですがクイズです。

あなたは分かれ道にさしかかった。一方の道は正直村に、もう一方は嘘つき村に通じているが、あなたはどちらが正直村か知らない。分かれ道には一人の村人が立っている。正直村の住人は常に真実を話し、嘘つき村の住人は常に嘘をつくことはわかっているが、この村人がどちらの村の住人かはわからない。あなたが正直村に行くためにはどうするのがよいか?

これの答えはその人に「あなたの村に連れていきなさい」と言い、後ろをついていくことです。嘘つき村の住人なら、自分の村ではない方の道を選び、正直村の住人であれば、正直に自分の村までの道を案内するだろう、という考え方です。「村人は嘘つきの村の住人かそれ以外だ」という前提があります。これこそが、トートロジーの核心部分といえます。

トートロジーとは、そもそも何でしょうか。辞書で引くと

トートロジー【tautology】 1 同語反復 2 命題論理で、要素となる命題の真偽がいかなるものであっても、常に真となるような論理式。恒真式。

と説明されています。

オーストリアの哲学者、ウィトゲンシュタインは、論理学や数学において、真なる命題はすべてトートロジーである、という言葉を残しています。トートロジーが成り立つとき、それは常に成り立つ反証不可能な理論であるといえます。

 

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こんなに使われてるトートロジー

 

「こんなの学問のための学問じゃないか」という声も聞こえてきそうですが、このトートロジーは、世の中でも意外と使われているのです。小泉政権当時に行われた、イラクへの自衛隊派遣をめぐる答弁で実際に行われたやり取りです。

▲質問:「戦闘地域とは何ですか」

○小泉元総理:「それは自衛隊が出動していない地域です」

▲質問:「じゃあ、自衛隊はどこに出動しているのですか」

○小泉元総理:「非戦闘地域です」

▲質問:「じゃあ、非戦闘地域とはどこですか」

○小泉元総理:「自衛隊が出動しているところです」

これは、トートロジーを利用した一例です。「自衛隊が出動している所=非戦闘地域、戦闘地域=自衛隊が出動していない地域」となり、よりわかりやすく言えば、「明日の天気は晴れか、それ以外です」といういい方と全く同じ構造です。トートロジーは、真偽を問わず成り立つ理論です。そのため、トートロジーを使うと、このように議論は破たんしてしまうのです。

論理的な説明がなされないにもかかわらず、それらしいことを言われるため、最終的に感情で行動してしまう、という風潮が作り上げられています。

このような、トートロジーを用いて説明を回避するというやり方は、先ほど挙げた政治現場の例にとどまらず、さまざまな場面で利用されています。一時期占いで一世を風靡した細木数子氏は、トートロジーを作ることに関して天才的であったといわれます。例えば「このままではアンタは地獄に落ちる。

でも改心すれば救われる」という占い。一見もっともらしいですが、未来に関しては「地獄に落ちるかそうでないか」、ということしか言っていません。彼女の、どんな人でもどちらかが当てはまるような理論を使いこなす占いは100%当たってしまうのです。

トートロジーは、議論では絶対に論破することができないため、決して議論が前に進むことはありません。日本の教育においては、論理学的な思考があまり重視されてこなかったため、このような議論がトートロジーを用いた議論として破たんしているものだと見抜くことができないのです。

*** いかがでしょうか。非常に抽象的かつ理解しにくい論理学ですが、これを考えることで確実に非論理的な言葉に騙されにくくなります。入門書も多く出されてますから、試しに読んでみては。

参考文献 出口汪オフィシャルウェブサイト | 日本の論理、そして思想を斬る 佐藤優×出口汪

ニコニコ大百科 | トートロジー

何だろう&これだろう | トートロジーについて

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