“無意識の制約”を取りはらえ! アイデアが大きくひらける「“マリオ” 宮本茂」式 思考法

「巧遅は拙速にしかず」 仕事論を語るときによく用いられる言葉ですよね。「仕事は本来速く、質も高くなされるべきもの。しかし、両立することが難しいのであれば、速さを優先すべきである」というのが、この言葉の趣旨になります。

この言葉に代表されるように、現実で起こる問題の多くは「あちらを立てればこちらが立たず」な状態にあり、このような問題はなかなか解決できません。しかし世の中には、トレードオフの関係にある2つの問題を同時に解決できる人がいます。彼らはどのように考え、複数の問題を同時に解決しているのでしょうか?

今回は、複数の難しい問題を同時に解決へと導く思考法について紹介します。

「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである」

複数の難しい問題を解くことができる人物として、任天堂ゲームディレクターの宮本茂さんが知られています。『マリオ』シリーズ、『ゼルダの伝説』シリーズをはじめ、数多くの人気ゲームの制作に関わってきた宮本さんを、任天堂の社長であった岩本聡さんは次のように紹介します。

宮本さんが「わかった」と言ったのはそのときにいっしょにつくっていたゲームのアイデアだったんですけど、まさに、「このアイデアで、悩んでる問題が、三つ四ついっぺんにきれいになる」というものだったんですね。(中略)宮本さんと仕事をしていると、そういう「わかったよ」と言うことがたびたび、あるんです。

(引用元:ほぼ日刊イトイ新聞|アイデアというのはなにか?

トレードオフの関係にある問題を含め、複数の問題を同時に解決できる広い視野があるからこそ、宮本さんは多くのヒット作を生みだすことができたのでしょう。

制約こそがアイデアを広げる

そんな宮本さんが考えるときに意識しているのが、「できないことリスト」を作るということ。

たとえば、ファミコンっていうハードでは、なにができて、なにができないのか。とくに、「なにができないか」っていうことを、たくさん知ってることはすごく、ぼくにとっては大事なんです。

(引用元:社長の代わりに糸井重里さんが訊く「スーパーマリオ25周年」|2.「きみ、けっこうネガティブやな」

「仕事で大事なのは早さか質か」のような問題を解決するには、より視野の広い考え方が必要です。そのように考えると、自由とは真逆のイメージを持つ、制約は思考の邪魔になりそうに思えます。しかし、宮本さんにとって「ファミコンというハードにつく制約は何なのか?」を考えることが重要であるようです。

制約を考えることが、どうして視野を広げることにつながるのでしょうか?

次の問題を例にとって、考えてみます。 thinking-frame-02 (引用・改変:DIAMOND online|仕事ができない高学歴にも「バカの壁」が付きまとう

この図で、「スタートからゴールまでの最短ルートは?」と問われたら、みなさんはどのように回答しますか?

thinking-frame-03 (引用・改変:同上)

当然、図の赤線のような道筋……ではありません。

「迷路を解け」と言われているわけではないので、実は、スタートとゴールを一直線に結ぶルートが正解になるのです。難しかったでしょうか?

thinking-frame-04 (引用・改変:同上)

実はこの問題、ある一言で、簡単に答えられるようになります。

これは迷路なのだろうか?

この一言があるだけで、問題文に「迷路」の文字がなかったことに気づき、「そうか、スタートとゴールを結べばいいんだ!」と、問題の本質がつかめるようになります。

つまり「制約は何か?」を意識することによって、「これは迷路である」などといった実際には存在しない制約を取り払えるようになります。また、「この迷路は解く必要があるだろうか? いや、解かなくてもよさそうだ」と、解決できる制約を見つけられます。そのため、複雑な問題が解けるようになるのです。

問題解決の手順

したがって、問題を解決するときは、次の手順で考えるとよいでしょう。

1.問題を確認する 「来週までにやらなくてはならない仕事が溜まっているが、終わりそうにない」

2.今回の問題における制約をできるだけ多く考える 「仕事の質は下げられない」 「全ての仕事は来週までに終わっている必要がある」 「自分の実力ではやり遂げられそうにない」

3.制約を取り払えないか、抜け道はないか考える 「質をごまかす方法はないだろうか?」 「短期間で実力を上げる方法はないだろうか?」 「他人に頼めないだろうか?」

4.制約を取り払ったら解決できるか考える 「質をごまかしたら、今回は解決できるが、今後に悪影響が残る」 「仕事ができる人にやり方を聞けば、終わるかもしれないが、不確定」 「受け入れてくれる人がいれば、解決できる」

この手順を繰り返すことで、最適な解決策が見つかるようになるでしょう。

*** 「制約」というと自由を狭めているようで、アイデアの発想には邪魔なもののように聞こえます。しかしながら、制約を理解しなければ、制約を超えた発想をすることはできません。今回の問題はどの枠内で起こっていることなのか、一度考えてみてください。案外、簡単に解決するかもしれませんよ。

(参考) ほぼ日刊イトイ新聞|アイデアというのはなにか? 社長の代わりに糸井重里さんが訊く「スーパーマリオ25周年」|2.「きみ、けっこうネガティブやな」 中村一八の知心コラム|拙速は巧遅に勝る PRESIDENT Online|仕事が「雑で速い人」vs「丁寧で遅い人」どちらがエラくなるか? DIAMOND online|仕事ができない高学歴にも「バカの壁」が付きまとう

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