みなさんは「アンダーマイニング効果」という言葉を聞いたことがありますか? 実はこれ、自覚のないうちにモチベーションを下げてしまう恐ろしいものなのです。決してこれに陥らないように、今回はそのアンダーマイニング効果についてご紹介します。
行為の目的が本来の目的から報酬にすり変わる
あるお店が子どもたちの悪質なイタズラの標的になってしまった。毎日のように投石されて、店の窓を割られてしまう。やめるよう怒っても、子どもたちのイタズラは酷くなるばかり。そこでこのお店の主人は、人に頼んで、子どもたちにこう言ってもらう。 「あのお店に石を投げてくれたら、おこづかいをあげるよ。」 もちろん子どもたちは喜んでますます投げるように。それから主人はだんだんとあげるおこづかいを減らしていった。すると、いつの間にかおこづかいのために石を投げるようになっていた子どもたちは、それにつれて石を投げるのをやめてしまったのである。そうしてお店は平穏を取り戻したのだった。
(引用元:静岡産業大学|応用心理学研究センター通信 通信34 )
これはアメリカで実際に起きた話です。子供達は最初、自分たちの楽しみのためにイタズラをしていました。しかし途中からそのイタズラの目的がおこづかいにすり替わったため、おこづかいなしではイタズラをしようとしなくなりました。
このように内発的に動機付けられた行為に対して、報酬を与えるなどの外的動機付けを行うことによってモチベーションが下がってしまう、という現象が起きます。 これが「アンダーマイニング効果」です。
アンダーマイニング効果に注意!
このような例は様々な場面で見られます。よくある例としては、テストで何点以上取れたらおこづかいをあげる、または何時間勉強したらおこづかいをあげると子どもに言った場合です。
一度おこづかいをあげてしまうと、勉強して新しい知識を得ることが楽しいと思えなくなり、ただおこづかい稼ぎのために勉強する、という事態を招きかねません。そうなれば、知的好奇心を満たすとか、勉強という行為に対するモチベーションを持続させるのは困難になるのです。
アンダーマイニング効果を予防するには
仕事や勉強など、頑張ったあとに自分へのご褒美として何かを用意する人は多いと思います。しかし、それが度を過ぎるとそのご褒美が最大の目的となってしまい、行為自体にモチベーションを持つことは難しくなります。 よって、仕事や勉強の最大の目的となってしまうような大きなご褒美ではなく、自分の頑張りを労う程度の、ほどほどのものを用意する方が良いと考えられます。
*** いかがでしたか。私たちの動機は、自然と内側からわきあがってくる内発的動機付けと外部のご褒美に引っ張られる外発的動機付けがあり、前者の方が効果が高いことはすでにご紹介しています。 「やる気が続かない? 学習を持続できる『自己効力感』の高め方」
アンダーマイニング効果の恐ろしいところは、いつのまにかすり替えられてしまうこと。モチベーションが持続しないなと思ったらアンダーマイニング効果を疑ってみてください。
参考: 静岡産業大学|応用心理学研究センター通信 通信34 身近な心理学〜新しいビジネスの提案|子どものやる気を失わせている理由〜【アンダーマイニング効果】
【しあわせ心理学】パンダの温度|子どものやる気を奪う「アンダーマイニング効果」によ要注意!