「根拠のない自信」とは? 無条件で自分を信じる人間が強いワケ

根拠のない自信とは1

「根拠のない自信」と聞いて、どう感じますか? 「根拠もないのに自信満々の人なんて信用できない」とネガティブに評価する人もいれば、「根拠なしに自分を信じられるのはすばらしいことだ」とポジティブに考えるタイプの人もいるでしょう。

たしかに、「根拠のない自信」にはよい面も悪い面もあります。しかし、失敗を恐れず積極的に行動を起こすには、「根拠のない自信」が必要なのです。

今回は、「根拠のない自信」のメリットや、「根拠のない自信」がもてるようになる方法をご紹介します。周囲の評価が気になって、なかなか仕事などで積極的に行動できない方は、ぜひこの記事を参考に「根拠のない自信」を育ててみましょう。

「根拠のない自信」とは

「根拠のない自信」とは、具体的にどのようなものなのでしょうか? 「根拠のある自信」と「根拠のない自信」の意味を比較することで、明らかにしておきましょう。

「根拠のある自信」の意味

「根拠のある自信」とは、成功体験や実績から得た自信のこと。部活動の大会で優勝したり、仕事ぶりが評価されたりしたことで得た自信です。自信の根拠となる成功体験をもっていると、「あのときは成功できたんだから、きっと今度も大丈夫だ」と確信でき、多少の困難にもくじけにくくなります。

一方、「根拠のある自信」には難点も。成功体験を得ないかぎりは自信をもてない、という点です。まだ大きな成功を経験しておらず、これから頑張っていこうとしている人にとって、「根拠のある自信」はなかなかもちづらいでしょう。

また、根拠が失われれば自動的に消滅してしまうのも、「根拠のある自信」のデメリットです。たとえば、「プレゼンテーションが大成功した」という経験が自信の根拠になっている場合、もし誰かから「あのときのプレゼン、ちょっとイマイチだったよね」などと実績を否定されたり、次のプレゼンテーションが大失敗に終わったりすれば、自信の基盤が失われ、一気に自信を喪失してしまうかもしれません。

「根拠のない自信」の意味

反対に、「根拠のない自信」とは、成功体験や実績に基づかない自信のこと。これまで一度も成功したことがないのに「次はきっと大丈夫だ」と確信したり、未経験の仕事なのに「自分ならきっとできる」と信じたりするのが、「根拠のない自信」です。

「根拠のない自信」に対して “ハッタリ” に近い印象を受ける方も多いでしょう。たしかに、「実績もないのに自信だけはあふれている」という状態だと、「自信過剰な人」と思われてしまうかもしれません。

しかし、自信とは、成功に至るために欠かせない要素。仕事で結果を出したり何かを成し遂げたりするには、「きっと成功できるはず」と自信をもって取り組む必要があります。たとえ「ハッタリ」だとしても、まったく自信をもてずにいるよりは、「根拠のない自信」があったほうが、いい結果につながりやすいはずです。

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「根拠のない自信」のメリット

上でも少し触れましたが、「根拠のない自信」のメリットを詳しく解説します。

実績がなくても自信をもてる

「根拠のない自信」の最大のメリットは、実績の有無にかかわらず自分を信じられることです。「ポジティブ心理学」を教えるポジティブサイコロジースクール代表・久世浩司氏によると、自信をもって振る舞うことで、以下のようなメリットが期待できるのだそう。

  • 頼りがいを感じさせるため、仕事を任されやすくなる
  • 仕事や人間関係で成功しやすくなる

たしかに、自信がなくおどおどしている人よりも、自信に満ちて堂々としている人のほうが、信頼できそうな人物に思えますよね。根拠がなくても、とにかく自信をもっていれば、潜在意識や行動がポジティブに変化して物事が好転しやすくなります。そして、積極的な行動により成功体験を積んでいけば、やがて「根拠のある自信」も得られますよ。

未経験のことに挑戦しやすくなる

新しい仕事を任されたときや、新規プロジェクトを始めるときなど、未知のチャレンジには誰もが不安を抱くもの。未経験のことに手を出す以上、自信の根拠をどこにも求められないからです。

そんなときこそ、「根拠のない自信」が重要です。「やったことはないけれど、きっと自分ならできるはずだ」という自信をもてれば、初めての物事にも臆さず挑めます。

ソフトバンクグループの創業者・孫正義氏は「最初にあったのは、夢とそして根拠のない自信だけ。そこからすべてが始まった」という名言を生みました。24歳で初めて起業し、さまざまな事業に取り組みつつ大企業をつくり上げる過程では、先見性や分析眼だけでなく、相当な自信が不可欠だったはずです。

起業に限らず、新しいチャレンジをするときは、100%うまくいく保障などありません。だからこそ、「自分ならきっとできる」という「根拠のない自信」を強くもち、思いきって行動を起こせるかどうかが重要なのです。

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「根拠のない自信」を構成する3要素

久世氏は、「根拠のない自信」の源泉として「自己効力感」「自己肯定感」「失敗許容力」の3つを挙げています。

「根拠のない自信」を構成する自己効力感・自己肯定感・失敗許容力。

自己効力感

自己効力感とは、「自分には物事をやり遂げる力がある」と信じられる感覚のこと。心理学者・坂野雄二氏らによる1986年の論文では、「ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまく行なうことができるかという個人の確信」と定義されています。

新しいことにチャレンジするとき、「きっと自分ならできるだろう」と自然に確信できるのが、自己効力感が強い状態。自分がもっている力や、その力によってもたらされる結果に対して自信があるため、何事にもひるまず取り組めるのです。

自己効力感の強さは、実際の能力ではなく、能力があると信じられるかどうかで決まります。まだ何も成し遂げていない人でも、「自分には隠れた才能があるはず」「きっといつか幸せになれるはず」などと確信できているなら、自己効力感が強いと言えるのです。

つまり、自己効力感は、必ずしも成功体験や実績を必要としないため、「根拠のない自信」の一種だと言えます。

自己肯定感

自己肯定感に関した研修や講演を行なう日本セルフエスティーム普及協会(※)代表理事の工藤紀子氏によると、自己肯定感とは「そのままの自分を受け入れ、尊重できる感情」。能力の優劣に関係なく、どんな状況でも「自分はかけがえのない存在だ」と思えるのが、自己肯定感が強い状態です。

自己肯定感に関して重要なのは、自分の価値について考える際、他人と比較しないこと。「自分は同僚より仕事ができるから価値がある」「自分は平均より年収が高いから価値がある」などは、自己肯定感ではありません。「自分は能力があるから……」のような条件がなくとも自分を信じられるのが、自己肯定感なのです。

したがって、自己肯定感が強い人は、たとえ実績がなくても、どんなに失敗続きであろうとも、根拠なく自信をもてるでしょう。

失敗許容力

失敗許容力とは、文字通り、自分の失敗を寛容に許せる能力のこと。失敗許容力が高い人は、失敗しても「たまたまうまくいかなかっただけだ」「これでひとつ学習できた」とポジティブに考えることができます。

失敗を許容できるということは、失敗を恐れず積極的に行動できるということ。失敗をいちいち恐れていては、物事が進みません。失敗許容力が高ければ、「たとえ失敗しても大丈夫」と安心して行動できるのです。

以上、「根拠のない自信」を生む要素として、自己効力感・自己肯定感・失敗許容力の3つを挙げました。つまり、「根拠のない自信」をもつためには、自己効力感・自己肯定感・失敗許容力をそれぞれ育てていけばいいのですね。

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「根拠のない自信」を得る方法1:自己効力感を高める

「根拠のない自信」を得る方法として、まずは自己効力感にアプローチしてみましょう。先述したように、自己効力感とは「私には物事を成し遂げる力がある」と信じられることです。

心理学者の二村英幸氏、行動科学マネジメント研究所所長の石田淳氏らの見解を参考に、自己効力感を得る方法を4つご紹介します。

小さな成功体験を積み重ねる

自己効力感を高めるうえで最も大切なのが、小さな成功体験を積み重ねることです。

二村氏によると、ほぼ確実に達成できる目標を設定してクリアすることを続ければ、自己効力感を鍛えられるのだそう。大きい実績を得るには時間がかかりますが、自分で定めた小さな目標なら、少し頑張れば誰にでも達成できるはずです。

【小さな目標の例】

  • いつもより30分早く起きて勉強しよう!
  • 営業ノルマを1件増やしてみよう!
  • 15時までに作業を終わらせよう!

ちょっとしたことでかまいません。生活のなかで簡単な目標を設定してみましょう。

達成感や喜びを感じる

達成感や喜びといったポジティブな感情(生理的状態)も、自己効力感を高めるうえで大切です。

せっかく目標を達成しても、「たまたまだ」「目標が小さかったから達成できたんだ」と謙虚になりすぎると、喜びの感情が薄れてしまいます。目標をクリアしたら、「自分が頑張ったから成功できた」と “手柄” をしっかり認識し、大げさなくらいに喜びを味わってみましょう。

他人の成功体験を見る

自分で成功体験を積むだけでなく、ほかの人が成功した姿を見ること(代理的経験)でも、自己効力感を高められます。

同僚などが評価されるのを見ると、つい嫉妬してしまうかもしれませんね。しかし、見方を変えて「あの人ができたんだから、自分にもできるはず」と考えるようにすれば、他者の成功を自分のパワーに変換できるのです。

【代理的経験の例】

  • 同僚や上司が成功し、評価されている様子を見る
  • サクセスストーリー系の映画を見る
  • 成功者の自伝や伝記を読む

石田氏によると、特に「自分と同レベルかそれ以下の人」が成功している姿を見ると、より自己効力感を得やすいのだそう。同僚や後輩、友人などがよさそうですね。

ほめたり励ましたりしてもらう

「あなたならできる」というポジティブな言葉をかけてもらう(言語的説得)ことでも、自己効力感を養えます。家族や親友といった身近な人の力を借り、自分のよいところを指摘したり、励ましたりしてもらいましょう。

【言語的説得の例】

  • 家族や友だちに勇気づけてもらう
  • 上司や先輩、同僚などからフィードバックをもらう
  • 自己啓発系の本を読む

以上が、「根拠のない自信」を生む要因のひとつ・自己効力感を高める方法です。

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「根拠のない自信」を得る方法2:自己肯定感を高める

「根拠のない自信」を養う2つめの方法は、自己肯定感にアプローチすること。自己肯定感が高まると、他人と比較せずありのままの自分を受け入れられるようになるため、自信につながります。

自己肯定感を高める方法として心理学者の中島輝氏が紹介しているのが、「メタ認知」です。メタ認知とは、自分の思考や感情を客観的にとらえようとすること。

たとえば、仕事がうまくいかなかったとき、落ち込んでネガティブ思考になっている自分に気づいたとします。そして、「そもそも気に病むほどの失敗なんだろうか」「失敗から得られた教訓はないだろうか」などと考え、物事のとらえ方を意識的に変化させるのです。このようなメタ認知を行なえば、ネガティブだと思われた出来事をポジティブに転化できるため、自己肯定感を守れます。

ネガティブな出来事をポジティブにとらえ直すため、中島氏は以下3つのフレーズを推奨しています。

「ま、いっか」

「ま、いっか」と唱えることで、現状を大局的な視点で眺められるのだそう。失敗しても「ま、いっか」とつぶやけば、「引きずるほどの失敗でもないんじゃないか」「次から気をつければいいさ」と、いい意味で気楽になれるはずです。

特に、些細なことが心配になるまじめな方は、「ま、いっか」と物事を受け流すスキルを身につけてみましょう。

「その考え方もいいね」

相手と意見がぶつかってしまったときや、誰かから批判されたときには、「その考え方もいいね」と言ってみましょう。自分とは違う意見でも肯定することで、物事を多角的な視点でとらえられます

また、相手と対立せずに済むので、自己肯定感が傷つくリスクを避けることもできるのです。

「なんとかなる」

「なんとかなる」と口にすると、未来を楽観的に考えられるため、漠然とした焦りが軽減されます。

もちろん、楽観視しすぎて何も対策を講じないのは考えものですが、悲観的に考えすぎても自信ややる気がそがれてしまいます。大きな問題や不安に直面したときほど、あえて「なんとかなる」と信じるようにし、自己肯定感を守ることが大切です。

「根拠のない自信」を養いたい方や、ネガティブ思考に陥るくせがある方は、上記の3つのフレーズを意識的に取り入れてみてください。

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「根拠のない自信」を得る方法3:失敗許容力を高める

「根拠のない自信」を得るの3つめの手段が、失敗許容力へのアプローチです。失敗許容力が高いと、失敗を恐れることなく、自信をもってチャレンジできるようになります。

失敗許容力を高める方法として、以下に3つご紹介しましょう。

失敗経験や悩みを言語化する

失敗許容力を高めるには、自分の失敗体験や悩みを言語化するのが効果的です。メンタリストDaiGo氏によれば、失敗や悩みをアウトプットすると、具体的に何を悩んでいるのか理解できるため、改善策が見つかりやすくなるのだそう。

たとえば、「仕事でミスをした」という状況が同じであっても、そこから生まれる悩みは人によって異なります。

  • みんなに迷惑がかかったらどうしよう……
  • 人事評価を低くつけられたらどうしよう……
  • くだらないミスをした自分が許せない……

自分の悩みを明確に認識できれば、解決策や今後の予防策が見えてくるはず。失敗を引きずってしまいそうなときは、あえて積極的に人に打ち明けたり、紙に書いたりしてみると、状況を打開するヒントが得られるかもしれません。

「いまはまだできないだけ」と解釈する

失敗したときは、「いまはまだうまくいっていないだけ」「いまはまだ努力が足りないだけ」といった、「いまはまだ○○」思考をしましょう。以下の例のように、「いまはまだ○○」と考えると、必然的に未来へ目が向くからです。

  • 「いまはまだ努力が足りないだけ」
    努力さえすれば成功できる
  • 「いまはまだ工夫が足りないだけ」
    適切な工夫さえすれば成功できる

失敗して心がくじけそうになったときは、「いまはまだ」のフレーズで思考を切り替え、前向きな気持ちを取り戻しましょう。

【「いまはまだ」思考の例】

  • いまはまだできないだけだ
  • いまはまだ努力が足りないだけだ
  • いまはまだ何かが足りていないだけだ
  • いまはまだ必要なものがそろっていないだけだ
  • いまはまだ工夫が足りていないだけだ

失敗に対する考えを改める

失敗に対する考え方を変えることも、失敗許容力を高めるうえで効果的です。多くの方は、失敗について「やってはいけないこと」「避けるべきもの」とネガティブなイメージをもっているかと思います。そして、この「失敗=ダメ」という価値観こそ、失敗を恐れたり引きずったりしてしまう根本的な原因なのです。

失敗許容力を向上させるには、以下のように失敗をポジティブにとらえてみましょう。

  • 失敗するのは当たり前だ
  • 失敗は自分を成長させてくれるので、むしろ好ましい

久世氏は、ハリウッド俳優から支持される補正下着メーカー・SPANXの創業者であるサラ・ブレイクリー氏の例を紹介しています。

ブレイクリー氏は幼い頃から、失敗の大切さを父親に教わってきたのだそう。夕食時、父親は毎日のように「今日はどんな失敗をした?」と尋ね、失敗した経験をブレイクリー氏が話すと、「いいぞ!」と心から喜んでくれました。ブレイクリー氏の父親は、「失敗しないのは成長できていない証拠」という考えの持ち主だったからです。失敗を重視する教育によって、失敗を恐れない精神が養われたことが、ブレイクリー氏が成功した理由のひとつなのですね。

失敗を恐れるどころか、むしろ進んで失敗するくらいの心持ちでいれば、「根拠のない自信」が生まれて積極的に行動できるようになり、成果につながるはずです。

***
「根拠のない自信」を養うには、土台となる自己効力感・自己肯定感・失敗許容力を磨くことが重要だとわかりました。自信がなく不安にとらわれやすい方、ちょっとした出来事でくじけがちな方は、本記事で紹介した方法をぜひ試してみてください。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|まずは「根拠なき自信」を身につけることが大切
西田文郎(2012),『その気の法則』, ダイヤモンド社.
ダイヤモンド・オンライン|根拠なき自信家に共通する3つの心理的資源とは
ダイヤモンド・オンライン|まずは「小さな成功」により自信を積み重ねよう
J-STAGE|一般性セルフ・エフィカシー尺度作成の試み
一般社団法人日本セルフエスティーム普及協会|自己肯定感とは
二村英幸(2009),『個と組織を生かすキャリア発達の心理学 自律支援の人材マネジメント論』, 金子書房.
石田淳(2014),『仕事も、プライベートもうまくいく! 働く女性の行動科学マネジメント』, 学研プラス.
Mentalist DaiGo Official Blog|失敗を許せる自分に変わる!失敗許容力と自己肯定感の身に着け方とは
ダイヤモンド・オンライン|なぜ、シリコンバレーには根拠なき自信家が多いのか?

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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