「社内の英語公用語化」何から始めるべき? 英語公用語化プロジェクトの全6ステップ

英語公用語化に成功している職場

「グローバル市場への進出を目指し、社内の英語公用語化を検討したい」とお考えの、経営者のみなさま。
あるいは、「英語を社内の公用語にしたいから、やるべきことを整理して」と経営者から指示を受けた、担当者のみなさま。

「英語公用語化って、いったい何から始めればいいの……?」とお困りではありませんか?

ひとことで「英語公用語化」といっても、やるべきことは膨大にあります。その全体像が見えなければ、具体的なタスクもイメージがつきませんよね。そこで今回は、社内で英語公用語化を進めるためのプロジェクトの全体像について解説します。この記事を読めば、社内の英語公用語化に向けて、いいスタートを切れますよ。

※英語公用語化のメリット・デメリットについて、こちらの記事で詳しくお伝えしています。ぜひ、あわせてお読みください。
>>「英語公用語化」はいきなり全社でやらなくてもいい。スムーズな導入のコツは○○!

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
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(参考)

楽天グループ株式会社|FAQ
株式会社マネーフォワード|採用情報

英語公用語化プロジェクトの全体像

まずは、英語公用語化プロジェクトの全体像を押さえましょう。以下のとおり、社内の英語公用語化を推進するプロセスは、大きく6つのパートに分かれており、フェーズごとに関係者も変わってきます。順を追って説明しましょう。

英語公用語化プロジェクトの全体像

フェーズ1:戦略計画の策定&コミュニケーション戦略

【戦略計画の策定】は、主に経営層・ステークホルダー・英語公用語化のプロジェクトリーダーが担当するパートです。英語公用語化のメリット・デメリットを考慮したうえで、

  • 会社全体で英語を公用語にするのか、特定の部署でのみとするのか
  • プロジェクト期間をどうするか
  • 英語公用語化によるインパクトをどう見積もるか
  • どれくらいの予算をかけるか

などを加味して意思決定をします。

意思決定後に必要となるのが【コミュニケーション戦略】社員やステークホルダーに対し、英語公用語化の実施についてどのように伝えるのかを考えます。

フェーズ2:教育とサポート&社内システムと資料の更新

【教育とサポート】のステップからは、英語公用語化プロジェクトのリーダーが舵取りをすることが増えていきます。ここで考えるのは、社員の英語力向上に向けた取り組みについて。具体的には、

  • 英語力向上のためにはどれぐらいの期間が必要か
  • どういった英語研修を導入するのか
  • 学習サポートツールをどうするのか
  • 社員の英語力向上の進捗をどう管理していくのか

などを総合的に考えていきます。

上記と同時並行で、【社内システムと資料の更新】も進める必要があります。このステップもプロジェクトリーダーが担当しますが、一部をプロジェクトメンバーに任せたり、外注を組み合わせたりすることも検討しましょう。英語力がビジネス上級レベルの社員に任せるのもひとつの手です。

フェーズ3:組織文化の変革&継続的な評価と改善

【組織文化の変革】は、経営層とプロジェクトリーダーが一体となって進める必要があります。

英語化を進めるということは、多様な国籍の社員や、海外の人とのやりとりが多くなるということ。よって、異文化や海外のビジネス習慣をふまえて、現在の組織文化をアップデートしていく必要があります。これには、経営層とプロジェクトリーダーによる綿密な検討が重要です。

最後の【継続的な評価と改善】は、プロジェクトのリーダーとメンバーが推進します。英語公用語化のプロジェクトは、移行期間を経て完全実施となった時点で完了するものではありません。英語が公用語となる前からいる社員に対する「継続的な学習支援の仕組み」と、英語公用語化実施後に入社した社員の「英語力向上のサポート体制」を構築していく必要があります。

グローバルな職場のイメージ

フェーズ1の詳細と注意点

【戦略計画の策定】

このフェーズでは、おしなべて「WHY」を深掘りする必要があります。いくつかのポイントについてWHYの深堀りをしていきましょう。以下がその一例です。

前提のWHY「なぜ英語公用語化をする必要があるのだろうか?

想定しうる答え:

  • グローバル化への対応のため
    (→なぜグローバル化への対応をする必要があるのだろうか?)
  • 人材採用戦略のため
    (→なぜ採用戦略が重要なのだろうか?)
  • 社内コミュニケーションの標準化のため
    (→なぜ英語で社内コミュニケーションを標準化する必要があるのだろうか?)
  • 教育と自己啓発の機会をつくるため
    (→なぜ英語で教育と自己啓発の機会をつくる必要があるのだろうか?)
  • 企業イメージとブランディング向上のため
    (→なぜ英語公用語化によって企業イメージとブランディングが向上するのだろうか?)

上記はあくまで例。企業によってWHYの深堀り内容は異なります。

この段階で、関係者のあいだに強い合意形成がないと英語公用語化は失敗してしまいます。全員が腹落ちできるまで、繰り返しWHYの深堀りをしていきましょう。

【コミュニケーション戦略】

WHYの深掘りが大切であるもうひとつの理由は、フェーズ1のもうひとつのステップ、【社内コミュニケーション】とも関わるためです。英語公用語化は、社員にとって大きな変化をもたらします。リスキリング的な学習をともなうため、負担も増すでしょう。

そこで、以下のことを社員に対し丁寧に繰り返し語っていく必要があります。

  • なぜ英語公用語化を実施するのか?
  • 英語公用語化によって会社はどういう方向に向かっていくのか?
  • それにより従業員になにを期待するのか、どうなってほしいのか?

このコミュニケーション段階で失敗してしまうと、社員のモチベーション低下や離職の可能性も高まります。予算に余裕がある場合は、コミュニケーション戦略を専門とする企業に相談してもいいでしょう。

フェーズ1で最も注意すべきことは「戦略計画の策定に時間をかけすぎない」ことです。検討期間が長くなってしまうと、それだけ英語公用語化に遅れが生じてしまいます。このフェーズは、期間を区切って実行するようにするといいでしょう。

そして、ポイントは「一貫性」です。話すたびに内容が変わってしまうのであれば、社内に英語公用語化のマインドが浸透しません。

英語でコミュニケーションをとっている従業員

フェーズ2の詳細と注意点

【教育とサポート】

この期間は、最も長い時間を要します。なぜなら、社員に英語を習得させるにはある程度の時間をかける必要があるから。

もともともっている英語力のレベルによって異なりますが、日本語話者が英語を習得するには、2,200時間ほどかかると言われています。中学校・高校でおよそ1,000時間は英語を学んでいるので、社会人が英語を学ぶ場合、残りの1,000時間超の学習時間が必要ということです。

計画的に社員の英語力を上げるには、最初に「社員の英語力レベルの目標」を設定することが重要。まずはTOEICやVERSANTのスコアを基準にして社員全体の英語力の底上げを目指し、そのあとに実務で必要な英語スキルを特定していくというやり方がおすすめです。

たとえば、楽天グループ株式会社はTOEIC800点の取得を課しており(参照:楽天グループ株式会社|FAQ)、株式会社マネーフォワードはTOEIC700点以上をエンジニア部門に課している(参照:株式会社マネーフォワード|採用情報)そうですよ。

社員に求める英語力のレベルを規定したあとは、英語研修や学習ツールの選定を行ないます。予算や受講人数に応じて選択肢を絞り込みましょう。

また、「業務時間内に英語学習を許可するかどうか」も重要な決定事項です。社会人にとって、忙しい仕事の合間に学習時間を捻出するのはなかなかハード。「業務時間中に◯分までなら英語学習をしてもよい」などの施策を導入することも、英語公用語化を促進するひとつの方法ですね。

【社内システムと資料の更新】

社内システムや資料の更新で必要なのは、「リストアップ作業」です。

英語公用語化を部門限定で行なう場合は、その部署が通常業務で使用する社内システムや資料、MTG資料(議事録等)をリストアップします。リストアップは関係者を巻き込んで迅速に行ない、翻訳作業は積極的に外注することが望ましいでしょう。

仕事に必要な資料

フェーズ3の詳細と注意点

【組織文化の変革】

組織文化を変革するには、フェーズ1の【コミュニケーション戦略】に加えて、「異文化理解力」が鍵を握ります。

異文化理解力とは、相手の発言や行動の真意を理解し、自分の言動がどのように受け取られるかを把握する能力のこと。これは、異なる背景をもつ人々と協働する際に、行き違いや衝突を避け、たしかな信頼関係を築くために必要なスキルです。

異文化理解力を高めるには、社内にロールモデルをおくことが効果的です。たとえば、エンジニアチームの英語公用語化を目指しており、チームにインド国籍の社員が多い場合、彼らのなかから数名をアンバサダーとして任命し、異文化間のコミュニケーションスタイルやビジネス習慣の違いについてレクチャーさせる機会を設けてみるのも一案です。

【継続的な評価と改善】

英語公用語化は、一朝一夕には達成できない長期的なプロジェクトです。「このやり方で本当に効果があるのか」を常に検証しながら、プロジェクトを推進することが求められます。

また、英語公用語化プロジェクトは一度実行したらそれで終わりではありません。たとえば、特定の部署から始めて全社に展開するような、段階的に英語公用語化を実施するケースでは、先に実施したプロジェクト内容を振り返って評価し、全社展開のほうに適切に反映することが重要。

英語公用語化の実施後に入社する社員に対する英語学習支援についても、「本当にこの支援で英語力が上がるのか」を検証し続ける必要があります。そのなかでは、英語研修プログラムの内製化について検討するケースも出てくるでしょう。

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ENGLISH COMPANY for biz では、企業の英語公用語化に向けた総合的なコンサルティング・研修を提供しています。

英語公用語化の導入支援、社員のレベルに応じた研修プランの提案など、予算や課題に合わせた最適なプランをご提案します。英語公用語化の移行期間中も社員の生産性を維持しつつ、英語学習の効率化をサポートすることが可能です。

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