英語の雑談がうまい人は相手の○○を理解している。押さえておきたい日米の文化の違い2選

会話するビジネスパーソン

「英語を話すこと自体はできるのに、外国籍の同僚とのコミュニケーションが、どこかうまくいっていない……」と悩んでいませんか? その悩みの原因は、相手の文化について十分理解できていないことにあるかもしれません。

外国籍の社員がいるチームで仕事を円滑に進めるためには、異文化への理解が必須。「自分がこう言ったら、相手はどう受け取るだろうか?」ということを、相手の文化的背景をふまえて想像しないと、コミュニケーションが成り立たないおそれがあります。

この記事では、アメリカと日本のコミュニケーションの違いについて、「本音と建前」に関する言語学の研究をふまえ、ご紹介します。きっと「なるほど!」という発見がたくさん得られると思いますので、ぜひ気楽に読んでみてくださいね。

【この記事はこんな方におすすめ】

  • 英語はある程度できるが、外国籍のメンバーとうまくコミュケーションがとれない
  • 外国籍のメンバーと円滑に業務を進めたい
  • 英語でのスモールトークのヒントが知りたい
  • 自社の日本人社員と外国籍社員のコミュニケーションがスムーズになるよう、改善策を考えたい

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STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

(参考)

吉田幸治編, 金澤俊吾著, 鈴木大介著, 住𠮷誠著, 西田光一著, 吉田幸治著(2023),『話し手・聞き手と言語表現― 語用論と文法の接点 ―』, 開拓社.
坂本ナンシー著, 坂本示洋著(2004),『Polite Fictions in Collision Why Japanese and Americans Seem Rude to Each Other 異文化との出会い・誤解・理解』, 金星堂.
平松里英(2022),『好感を持たれる英語表現』, クロスメディア・ランゲージ.

なぜアメリカ人は配偶者の長所をためらいもなく言うのか

アメリカのスポーツ選手がインタビューで下記のような発言しているのを、ご覧になったことはないでしょうか?(※文例は編集部にて作成したものです)

First, I want to express my deepest gratitude to my beautiful wife. Your beauty shines not just on the outside but also fills our home with love and comfort. Thank you for always being there for me. I truly couldn't have done it without you.

(最初に、私の美しい妻へ深い感謝を表したいと思います。あなたの美しさは外見だけでなく、家庭にも愛と安らぎをもたらします。いつも私のそばにいてくれてありがとう。あなたなしでは本当に成し遂げられませんでした。)

日本でも、自分が仕事で成功したことについて、家族への感謝を表す人はいるもの。ですが上記の例では、自身の配偶者をこれでもかとほめていますね。日本人からするとこそばゆいようなこういった発言の前提には、アメリカ人がもつ「文化的タテマエ」というものが隠されています。

文化的タテマエとは?

「文化的タテマエ」とは、英語では polite fiction と呼ばれ、1982年に英語学者の坂本ナンシー氏らによって注目されました。坂本氏らは、文化的タテマエを下記のように定義しています。

相手に対して礼儀正しく丁寧に (polite) 振る舞おうと際に、その言動の根拠となる考え方

(引用元:坂本ナンシー著, 坂本示洋著(2004),『Polite Fictions in Collision ー 異文化との出会い・誤解・理解 ー』, 金星堂.)

坂本氏らは、文化的タテマエとは対人関係の根底にある、心の態度だとも述べています。たとえば、日本人が手土産を渡すときに「つまらないものですが……」と言いながら渡すのも、アメリカ人が会ってすぐにファーストネームで呼び合うのも、文化的タテマエによるものなのだとか。(同上書籍よりまとめた)

アメリカ人の前で謙遜は必要ない

坂本氏らは、文化的タテマエの具体例として下記を挙げています。(以下『Polite Fictions in Collision ー 異文化との出会い・誤解・理解 ー』よりまとめた)

a:You and I are Equals. (あなたと私は平等です)
b:You are my Superior.(あなたは私より上位の人です)

上記の文化的タテマエは、aがアメリカ人、bが日本人のものです。

日本にはbの文化的タテマエがあるので、配偶者について言及するとき、「うちの夫は帰りが遅くて……」「うちの妻は不器用で……」と言います。話している相手を上位に置くので、自分自身や家族のことについてはあえてへりくだるのが、日本のタテマエだということですね。一方、アメリカではaのとおり「あなたと私は平等」ですから、日本のような謙遜はしません。

近畿大学教授で言語学が専門の吉田幸治氏によれば、「美人の妻がいても『うちの家内はあまり美しくないのですが』」という日本人の発言があった場合、アメリカ人は「どうしてこの人はこんなウソを言うのだろうか」と考えてしまうそうです。(カギカッコ内引用元:吉田幸治編, 金澤俊吾著, 鈴木大介著, 住𠮷誠著, 西田光一著, 吉田幸治著(2023),『話し手・聞き手と言語表現― 語用論と文法の接点 ―』, 開拓社.)

アメリカ人の前では、日本的な謙遜は特に必要ないのかもしれませんね。

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なぜアメリカ人のスターはインタビューのときにリラックスしているのか

みなさんは、来日したハリウッドスターやミュージシャンが日本でインタビューを受けているときに、日本人スターのインタビューではありえないくらいリラックスしている様子を見たことはないでしょうか?

じつはこのような態度も、次にご紹介するような文化的タテマエが前提となっています。

アメリカではリラックスした様子が評価される

前出の坂本氏らによると、アメリカと日本とでは、文化的タテマエが以下のように異なるそうです。(以下『Polite Fictions in Collision ー 異文化との出会い・誤解・理解 ー』よりまとめた)

a:You and I are relaxed.(あなたも私も落ち着いています)
b:I am Busy on Your Behalf.(私はあなたのために忙しい)

aがアメリカ、bが日本における文化的タテマエです。

アメリカでは、余裕を見せるために「私はこんなにリラックスしてますよ」というふうに振る舞います。前出の吉田氏によると、アメリカでは慌てたり急いだりすることが余裕のない行為とみなされるので、できるだけ落ち着いた行動をとることが称賛されるとのこと(参考:前出の『話し手・聞き手と言語表現― 語用論と文法の接点 ―』)。

たとえば、企業を描くアメリカの映画やテレビでは、何かピンチが起こっても、トップが声のトーンを落として余裕があるかのように落ち着いた態度を見せますね。それは、こうした文化的タテマエがあるからなのです。

一方、日本では、忙しいことが称賛されます

昭和の日本の映画やドラマで、こんな場面を見たことはありませんか? これから来客があるというときに、割烹着姿の俳優さんが客人をもてなすためにせわしなく準備をするシーンです。対照的に、アメリカの映画などでは、ホームパーティーで忙しくなく主催者が動いているシーンはほとんどありません。

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文化的タテマエを理解し、ビジネスコミュニケーションに役立てる方法

では、アメリカの文化的タテマエを前提として、アメリカ人とのビジネスコミュニケーションをよりよいものにするにはどうすればいいのか、ご説明しましょう。

たとえば、アメリカ人の同僚が、日本人であるあなたの家族の写真を見て、あなたの子どもをほめたとします。

Oh, what a lovely picture! How old is your child?
(なんて愛くるしい写真なんだ!お子さんは何歳ですか?)

She is five years old.
(5歳なんです)

Five? She's so adorable! Look at that smile.
(5歳? かわいいらしい。この笑顔ったら!)

この会話のあと、あなたならなんと続けますか? 「いえいえ、まだまだ手がかかるんですよ」「実際は、毎日駄々こねて大変なんですよ」と言う方もいるかと思いますが、アメリカ人とのコミュニケーションでは、家族のことでへりくだる必要はありません。

Thank you. に添えて、たとえば下記のように返答するといいでしょう。

Thank you. Yes, she is.
(ありがとう。そうなんだよね)

Thank you. I’m very lucky.
(ありがとう。私は幸運です)

また、通訳者の平松里英氏は、ほめられたあとに具体的な情報を付け加えると、よりコミュニケーションが円滑に進むと述べています。(平松里英(2022),『好感を持たれる英語表現』, クロスメディア・ランゲージ. よりまとめた) 

Thank you so much. There’s, actually, a funny story that goes along with this…
本当にありがとうございます。実はこれにはとても面白い話があるのですよ…。(さらに続ける)

(引用元:平松里英(2022),『好感を持たれる英語表現』, クロスメディア・ランゲージ.)

上の例であれば、以下のように続けるとよいでしょう。

Maybe it's because she wants to be seen as a big sister, but she always says she's seven years old.  
(お姉さんに見られたいからなのか、いつも自分が7歳だって言い張るんですよ)

文化的タテマエについての注意点

文化的タテマエについては、注意点もあります。それは「アメリカ人だからこう」と決めつけてはいけないということです。

前出の吉田氏は、著書でこう述べています。

文化的タテマエが絶対的な規範ではなく、あくまで一定の傾向を示しているものだと解釈すべき

(引用:前出の『話し手・聞き手と言語表現― 語用論と文法の接点 ―』)

つまり、誰にでも当てはまることとして一般化して考えるのではなく、あくまで「こういう傾向がある」という程度に考えるとよいのです。

アメリカ人といっても、さまざまな人がいるものです。なかには、日本人のように振る舞うアメリカ人もいるでしょう。

こういった点も念頭において、異文化コミュニケーションの引き出しのひとつとして、文化的タテマエというものを覚えておくといいですね。

コミュニケーションにおいて注意すべき文化や価値観の違いについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので、ぜひお読みください。
>>英語は話せるのに、なぜか英語だと意思疎通がうまくいかない理由。「暗黙の了解」は通じない?

会話するビジネスパーソン

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この記事では、アメリカと日本の文化的タテマエの違いについて言語学の研究をもとにご紹介しました。ぜひ、英語でのスモールトークにお役立てください。

また、自分のチームにいるアメリカ人社員と日本人社員とのコミュニケーションをよりスムーズなものにしたいとお考えのマネージャーの方も、メンバーに文化的タテマエの違いについて伝え、よりよいコミュニケーションを実現してくださいね。

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