「仕事ができるあの人は、すごく人当たりもいい。あの魅力は、彼にしかないものだよな……」
そんな、仕事の能力が高いだけでなく対人関係もうまくいっている人に憧れを抱きつつも、「自分はあんなふうにはなれない」と諦めていませんか?
今回の記事では「仕事ができて、いい人間関係にも恵まれる人」になるために身につけたい3つのスキルをご紹介します。それらを意識して、あなたもぜひ周囲から憧れられる存在へと近づいてみましょう。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
STUDY HACKER|「仕事ができる人」はいい人間関係を築くのもうまい。その秘訣は「雑談」にあった
STUDY HACKER|成長したいビジネスパーソンが「EQ」を高めるべき理由。○○を言語化できる人は成功しやすい
精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル|人との最適な距離感を保つ方法
身につけたいスキル1:「雑談」スキル
仕事ができて対人関係も順調な人は、日頃から ”目的” を意識した雑談をしています。雑談といっても、ただの世間話ではないというところがポイントです。
モルガン・スタンレーやGoogleを経て経営コンサルタントとして活躍するピョートル・フェリクス・グジバチ氏は、「仕事上における雑談」は「成果に結びつくもの」であるべきだと語ります。同氏が考える「成果に結びつく雑談」とは、「長期的で建設的な人間関係を構築するためのもの」。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|「仕事ができる人」はいい人間関係を築くのもうまい。その秘訣は「雑談」にあった)
誰しも、話をしたことのない人には心を開けないものですよね。コミュニケーション不足で、相手のことをよく知らない――そんな人どうしが一緒に仕事をしたらどうなるでしょう。「内向的に見えるから、人と関わりたくないのかな?」「あの人は有能だから冷たそう」などの誤解が生じかねません。
ですが、雑談を通してお互いを知れば、偏見や誤解を解き合いながら、味方になっていくことができます。味方が増えれば仕事にいい影響があることは言うまでもありません。これこそが、雑談の目的なのです。
雑談が苦手で、どんな話をすればいいかわからない……という人のために、いい雑談とそうでない雑談の例をご紹介しましょう。
グジバチ氏は、いい雑談とは次のようなものだと語っています。
「自分をしっかり理解しようとしてくれている」「きちんと人間関係を構築しようとしてくれている」と相手に思わせるような雑談です。
(引用元:同上)
その反対に、相手を理解しようとせず、相手との関係構築を意識していない雑談は、いい雑談とは言えません。
たとえば、多くの人がやりがちな好ましくない雑談の例がこちら。
- 「運動しなきゃパフォーマンスが下がりますよ。〇〇さんもジムに通わないと」
- 「最近気温が下がってきましたが、まだ暑いですね。もう少し涼しくなれば体が楽になるのですが」
上記の例は、自分主体の話し方をしています。相手を理解しようといった意図はまったく見られませんよね。
では、どのような雑談が好ましいのでしょう? グジバチ氏によれば、雑談上手になるには相手が自由に答えられる「簡単なオープンクエスチョンをする」のが最初の一歩だとのこと(カギカッコ内引用元:同上)。そこで次のような例を考えてみました。
- 「以前はマーケティング分野にいたのですね。何がきっかけで個人事業を始めようと思ったのですか?」
- 「〇〇さんは現代アートが好きだと聞きましたが、魅力は何ですか?」
このように、相手に関心をもって話を引き出そうとすれば、相手はきっと「この人と一緒に仕事をしたい」と好感を抱いてくれるはずですよ。いい関係を築けて、仕事もうまくいきやすくなるでしょう。
身につけたいスキル2:「感情を言語化する」スキル
仕事も対人関係もうまくいくようにするには、「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」が欠かせません。このEQを高めるために、自分の “感情を言語化” する習慣をもってみましょう。
国内トップクラスのEQカウンセラーである大芝義信氏によれば、EQとは「自分や他者の感情をうまく管理し、活用する能力」。チームで働くことが欠かせない「ビジネスパーソンの成果にも大きな影響を与え」るそうです。
そんなEQは「言葉を上手に使う能力」とも言える、と大芝氏は話します。なぜ言葉がEQに関わってくるのかといえば、「人間は『感情の生き物』」だから。
(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|成長したいビジネスパーソンが「EQ」を高めるべき理由。○○を言語化できる人は成功しやすい)
では、EQの高さは、人間関係や仕事の成果にどんな影響をもたらしうるのでしょうか?
たとえば、上司の立場にある人が、「どうすれば、部下が “自ら行動するビジネスパーソン” になってくれるのだろうか?」と悩んでいるとします。
もし、その上司のEQが低ければ、「指示が出る前に行動して」などと、相手の感情を考えずに強い言葉を投げかけてしまうこともあるでしょう。仮に部下が従っているように見えても、内心では反発したりやる気を失ったりしている可能性も……。これでは、部下を心から動かすことはできません。
一方、EQの高い上司は部下の感情に着目し、「どういう状況であれば、部下は自ら行動したくなるのだろう?」と考えます。部下に期待しているなら、「〇〇さんの説明には説得力がある。今度のプレゼンも楽しみにしているよ」などと声をかけるでしょう。感情をヒントに、相手をその気にさせる言葉を考えることができるのです。
このように、対人関係をいい状態にできれば、それだけ仕事もうまくいきやすくなります。であるならば、ぜひともEQを高めたいところ。
大芝氏は「EQを高めるためにまずやるべきは、『いまの自分の感情を言語化する』」ことだと述べます。なぜなら、「どんな感情をもっているのかという現状がわからない」と、自分や他者をマネジメントできないから。(カギカッコ内引用元:同上)
実際に、筆者も仕事での出来事に対して、感情を言語化してみました。次の画像をご覧ください。
思いのほか、感情を言語化するのは難しく感じました。というのも、社会人になって以降、感情面に焦点をあてて自分の内面を振り返る機会が減っていたためです。
感情を書き出してみたところ、抱えている不安や不満、自己嫌悪など、自身の隠れた内面に気づきました。同時に、いままで自分の感情に対して鈍感だったことも判明。
自分の気持ちと向き合う時間がなかなかとれない忙しいビジネスパーソンにこそ、感情を言語化する習慣は大切だと思います。ぜひ取り入れてみてはいかがでしょう。
身につけるべきスキル3:「柔軟に対応する」スキル
仕事では柔軟性が大切だとよく言われますが、人間関係でも同じ。“柔軟に対応する” 能力がある人は、周囲とうまく関係を築けるのです。
精神科医の樺沢紫苑氏は、対人関係構築の前提として、「相手との適切な距離感は人によって全部違う」ことを理解するのが大切だと言います。(カギカッコ内引用元:精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル|人との最適な距離感を保つ方法)
たとえば、3年間付き合いのある同僚とは趣味や家族について話せても、上司とはそうもいきませんよね。とある顧客に対し、積極的に自分の話をするなどしてフランクな接し方をしていたとしても、同じやり方で別の顧客にも接していいかといえば、そうとは限らないでしょう。
適切な距離感は人によって違うにもかかわらず、同じ接し方で対応しようと考えてはうまくいかないわけです。
さらに、「心理的な距離感とは動物の本能でいうと『なわばり意識』」にあたると、樺沢氏(カギカッコ内引用元:同上)。接し方の距離感を間違えることは、相手のテリトリーに入ってしまうのと同じことなのです。
たしかに、親しくもない人にいきなり「年収はいくらもらってる?」「休日は何しているの?」などの個人的な質問をされるのは、不快ですよね。
ではどうすれば、“適切な距離感” を保って人と接することができるのでしょうか。
樺沢氏は、上手に周囲との関係を築ける人は「試行錯誤しながら常に相手の距離感を見極め」ていると言います。どこまでプライベートの話ができるのか、会話を早く切り上げたほうがいいのか――自分と相手とのあいだの心理的な距離を見定め、柔軟に対応しているのですね。
その試行錯誤のコツとして、樺沢氏は「遠くから始めて徐々に近づいて」いくのが好ましいとしています。具体的には、「パブリックな情報」から「プライベートな情報」へ、徐々に自己開示の幅を広げていくと、相手に不快感を与えることなく、適切な距離を保てるそう。
(カギカッコ内引用元:同上)
たとえば、次のように段階を踏むのです。
- まずは、パブリックな情報を伝える
「私は以前ソフトウェア開発を担当していまして、いまはITコンサルタントをしています」 - 少し仲良くなってから、プライベートな情報を伝える
「じつはこう見えても運動が好きなんですよね。週末にはピラティスで汗を流しています。〇〇さんは何か運動されますか?」
自分から心をオープンにしながら、相手の警戒心を少しずつ解いていく――適切な距離感をつかむには、柔軟かつ焦らないコミュニケーションが大切ですね。そのようにして良好な関係を構築できた相手となら、いい仕事ができることでしょう。
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取り入れられるものがあれば、ひとつでも参考にしてみてください。あなたが、仕事の能力を高めていくだけでなく、職場での人間関係をよりよくしていけるよう、願っています。