たくさんの本を読み、進んでセミナーに参加しているわりには、ぜんぜん仕事に活かされていない気がする……。
“学びをまとめる達人” いわく、それは要約ができていないからなのだそうです。そこで筆者は、チェックリストとして使える短冊型のメモ帳を活用し、スキマ時間に要約力を鍛えてみることにしました。詳しく説明しましょう。
忘れるのは要約ができていないから
学んだことをしっかりと覚えて活かすには、自分の言葉で要約することが大切です。逆に言えば、いくらインプットに励んでも、その内容を自分なりにかみ砕き、自らの言葉でまとめなければ、忘れてしまうのです。忘れてしまえば、仕事に活かせるはずもありません。
ベストセラー『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』(サンマーク出版)などの著書で知られる浅田すぐる氏は、
書籍やセミナーで学んだことを仕事に活かせていないとすれば、それは学んだ内容を忘れてしまっているから
と話します。そして、忘れてしまうのは
自分なりに内容を咀嚼できていない、つまり要約できていないから
なのだとか。
(引用元:EL BORDE|本質を掴んで端的に伝えろ!「要約力」こそが最強のビジネススキルである理由)
たしかに、ただ人から聞いただけの内容は、いまひとつ詳細を憶えていないもの。その反対に、知り得た情報を誰かに簡潔に説明したところ、その内容を忘れなかった――という経験がある人もいるでしょう。やはり、しっかりと覚えて活かすことと、自分の言葉で要約することとのあいだには、密接な関係があるのです。
だからこそ浅田氏は、得た情報を咀嚼して20文字にまとめる学習法を提唱し、ただ消費するだけの学習ではなく、投資型の学習に変える大切さを伝えています。その内容はこちらで詳しく紹介しているので、ぜひ一度ご覧ください。
>>“紙1枚” で学びが圧倒的に深まる! 「20字インプット学習法」がすごい。
>>「要約ができる人は、勉強もできる」と言っていい2つの理由。
要約練習には社説とチェックリストが役立つ
そうしたなか筆者は、外出時を含むスキマ時間にも、サラッと要約の練習ができる方法はないかと探しておりました。すると、言葉に関する著書を数多くもつ国語講師・吉田裕子氏の、こんな言葉を見つけたのです。
要約の練習に適した教材が新聞です。特に「社説を100字程度で要約する」というのが、要点を見つけ、簡潔にまとめる練習になるでしょう。社説は1つの文章で1つの主張を述べており、練習にはもってこいです。
(引用元:東洋経済オンライン|読み書きを鍛えるのに「要約」が最強なワケ)
これは、まさに筆者が求めていたことでした。新聞の社説であれば、インターネット上におおむね1,000文字以内で公開されており、サラッと読むことができるからです(※吉田氏はデジタル版の新聞をすすめているわけではありません)。
ただ、要約作業は浅田氏にならい、手書きで行なったほうがいいでしょう。そうなると、持ち運びやすく、手書きで簡単に100文字くらいだと判断できるようなものが役立ちます。そこで、方眼ノートや小さいノートなど、いろいろ検討してみたところ――ピッタリなものを発見。無印良品の「短冊型メモ チェックリスト」(無印良品ネットストア)です。
商品名になっているように、終わったことをチェックするToDoリスト的な使い方が想定されたメモ帳です。しかし、1ページあたり14行、用紙サイズ約82×185mmというこの仕様は、手書きでおおよそ100文字を、区切りよく書くのに有用であるはずだと考えたわけです。
たとえば、こうして文章に見立てて数字を書いてみると、1行にちょうどよく10文字がスッポリ!
1行にだいたい10文字で10行書けば、多少のブレがあっても、おおむね100文字になりますよね。
4行ぶん余裕があるのも、窮屈じゃなくていい感じです。
(商品情報参考:無印良品|短冊型メモ チェックリスト)
短冊型のチェックリストで要約してみた
では実際に、社説を100字程度で要約してみましょう。
教材にしたのは、日本経済新聞で2023年10月5日 19:00 に公開された、「海外に挑む若者を支えよう 大谷翔平選手に続け」という社説です。
そして初挑戦してみたら――
まず1回目は、文字がメモ帳を埋め尽くしてしまいました。1行に10文字以上入っているうえに、14行いっぱいに書いてしまったので140文字以上。しかも文章にまとまりがありません。
そして、2回目のチャレンジでは、1回目よりも少しだけまとめられた気がします。ただし、まだ100文字にはほど遠く、迷いながら言葉の入れ替えもしたので、なんだかゴチャゴチャしています。
そして3回目でやっと、だいぶ100文字に近づくことができました。
肝心の要約は、
大谷翔平選手が本塁打王という偉業を達成。近年は海外に挑む若手が珍しくないが、一方で内向き志向とも言われる。長期留学者も低迷傾向だ。ただ研究職不足で留学をちゅうちょする若手研究者もいる。若者をどう支えるか社会全体で考えたい。(111文字)
といった具合に、とりあえずまとめましたが――うーん、どうも軸がブレて内容も散らばっている感じです。教材の社説をあらためて読んでみたところ、要点は大谷選手のことではなく「若者の内向き志向に社会の体制不備が響いていること」なので、以下のように書くべきだったなと思いました。
全般的に若年層は内向き志向と言われ、長期留学者数も低迷傾向だ。しかし、それには社会の体制不備が少なからず影響している。留学中に就職先がなくなる不安で留学を躊躇する若手研究者もいる。若者をどう支えるか社会全体で考えたい。(109文字)
(参考:日本経済新聞|[社説]海外に挑む若者を支えよう 大谷翔平選手に続け)
筆者が行なったように、スキマ時間に手書きでちょこちょこ要約を繰り返し、あとで教材を見直して、要約したものを自ら評価し、あらためて要約してみるというのは、要約の練習として有効だと思います。事実、該当の内容はすっかり憶えられました。
また、同じ教材を立て続けに要約してみると、確実に要約濃度が上がってくるのがわかるので、集中力がしっかりと続きました。ただし、3回目が終わったあとは、また続ける気にはならなかったので、ワンクール3回くらいがちょうどいいかもしれません。ぜひお試しあれ。
***
学んだことをしっかりと覚えて活かすための、要約の練習法をご紹介しました。要約のスキルが身についたら、ぜひ仕事でも活用してみてください。
なお、社説は時事問題に対する、その社としての意見や主張が書かれたものなので、情報が偏らないよう、複数の新聞社の社説で練習してみるといいかもしれませんね。
EL BORDE|本質を掴んで端的に伝えろ!「要約力」こそが最強のビジネススキルである理由
日本経済新聞|[社説]海外に挑む若者を支えよう 大谷翔平選手に続け
東洋経済オンライン|読み書きを鍛えるのに「要約」が最強なワケ
無印良品|短冊型メモ チェックリスト
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。