チームをダメにする「話しかけづらい人」の残念な特徴。“いつも忙しそうな人” は信頼関係を壊すかも

チームをダメにしてしまう「話しかけづらい人」の残念な特徴01

「話しかけづらい雰囲気だから、あの人に意見を伝えるのは控えよう」――このように忖度した経験がある人は多いのではないでしょうか。一見、仕事でよく出くわす光景。しかし専門家は、「話しかけづらい人」の存在を、“チームの生産性を大きく下げる要因” だと指摘します。

今回の記事では、チームのパフォーマンスを下げてしまう「話しかけづらい人」の特徴を3つ紹介します。ご自身や周囲の人に当てはまる項目はないか、ご確認ください。

「話しかけづらい人」はチーム全体のパフォーマンスを下げる

なぜ、話しかけづらい人の存在が、チームの生産性に影響を及ぼすのでしょう。その理由は「心理的安全性」を確保できないことにあります。

そもそも、心理的安全性とはなんでしょうか。チームの心理的安全性を構築するサービスを手がける、株式会社ZENTech代表取締役の石井遼介氏は、こう説明します。

心理的安全性とは「地位や経験にかかわらず、誰もが率直な意見を言えること」です。

(引用元:朝日新聞GLOBE+|【石井遼介】うまくいくテレワークに絶対必要な「心理的安全性」とは? 太字は編集部にて施した)

心理的安全性を研究するハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が、1999年に発表した論文には、こう定義されています。

a shared belief held by members of a team that the team is safe for interpersonal risk taking

「対人関係のリスクをとっても、チームは安全だ」という信念がチーム内に共有されること

(引用元:SAGE jounals|Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams 和訳は筆者が補った)

「対人関係のリスク」とは、以下の4つです。

チームをダメにしてしまう「話しかけづらい人」の残念な特徴02

(画像は筆者にて作成)

つまり、――「こんなことも知らないのか」「能力がないな」「ネガティブな人だ」「邪魔な人物だな」と思われかねない言動をとったとしても、このチームなら安全だと思える――そんな状態のことを「心理的安全性がある状態」だと呼ぶのです。

では、逆に上記のリスクを恐れてしまうと、どんな損失が考えられるのでしょうか? 経営心理士の藤田耕司氏は一例として、「上司に質問することへの躊躇」を挙げています。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「話しかけづらい上司」は生産性をこうも下げる

たとえば、部下が上司に質問すれば10分で解決する問題を、「話しかけづらいから」と躊躇した場合。部下は自力で問題解決を図るために、ひとりで調べ、何が問題なのか分析し、見つかった問題を改善しようと奮闘し……気づいたら、1時間も経過していた――このように、結果として大幅なロスが生まれることになります。

この負の連鎖が起こると、チーム全体の業務が滞ることは言うまでもありませんよね。こうして、“話しかけづらい” という対人関係の問題が、チームの生産性を下げてしまうわけです。

チームをダメにしてしまう「話しかけづらい人」の残念な特徴03

そうとわかれば、心理的安全性を阻害するような「話しかけづらい人」にはなりたくないもの。では具体的にどんな振る舞いをすると、「話しかけづらい」と周囲に思わせてしまうのでしょうか。

また、自分の上司や同僚が「話しかけづらい人」である場合は、どうしたらよいのでしょう。3つのポイントをお伝えします。

残念な特徴1. 常に忙しそうにしている

部下をもつ立場であれば多忙で当然ですが、上司が「常に忙しそう」だと、部下は「声をかけにくいな」と思うもの。

立命館大学教授で組織心理学者の山浦一保氏率いる研究チームが、こんな実験をしました。職場をシミュレーションし、部下役の被験者を以下2グループに分け、部下の「上司に対する関係構築の程度」を測定したのです。

  1. 「『最近、寒いね』『調子はどう?』などのいたって普通の日常会話」を上司と部下で交わすグループ
  2. 「上司は忙しそうにパソコンに向かっており、仮に部下から話しかけられたとしてもそっけない返答しか」しないグループ

結果は、「日常会話をした上司の方が、そっけない上司に比べて、統計的に見ても有意に高く評価」されたとのこと。些細な会話をできる余裕が、信頼関係にいい影響をもたらすのですね。

(研究内容の説明は「ダイヤモンド・オンライン|「人間関係が良い職場とそうでない職場」決定的な違い」よりまとめた。カギカッコ内は同資料より引用)

ほんの数分でも日常会話をしたり、遠慮なく話しかけてよいことを日頃から伝えたりするだけで、「話しかけづらい人」を脱することができるのではないでしょうか。

実際、前出の藤田耕司氏は、監査法人でチームリーダーをしていた頃、「本気で5分考えて、それでもわからなければ、自分が忙しそうにしていても遠慮なく質問するように」とメンバーに伝えていたそうですよ。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「話しかけづらい上司」は生産性をこうも下げる

反対に、部下の立場にあって、忙しい上司に相談したい・確認をとりたいことがある場合は、最初に以下の2点を伝えるとよいでしょう。元マッキンゼー勤務のエグゼクティブコーチ・大嶋祥誉氏いわく、

  • 要件は何か
  • 何分かかるのか

を同時に伝えるのです。

こうすれば(中略)忙しい時間を割いて相談を受けるべきかどうかを部長自身が判断できます。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|忙しい上司にお伺いを立てる際の声掛けワード、一番いいのは? 太字は編集部にて施した)

とのこと。

「昨日指示していただいた○○社の資料作成の件で、いま5分ほどお時間よろしいでしょうか?」などと話しかければ、「5分なら空いているよ」あるいは「急ぎの件があるから1時間後にもう1回声をかけてくれる?」などと応じてくれるはず。忙しい上司とのコミュニケーションがスムーズに進むでしょう。

話しかけづらい人にならないためにも、話しかけづらい人にうまく対処するためにも、相手へのメッセージの送り方がポイントですよ。

チームをダメにしてしまう「話しかけづらい人」の残念な特徴04

残念な特徴2. 不機嫌でいる

書類を乱暴に置いたり、感情的な声で指示したり、仕事を頼んでも冷たい態度だったり……。怒ってばかりの不機嫌な人には、誰でも “近寄りがたい” と感じるもの。

ポジティブ心理学者のショーン・エイカー氏が、「ネガティブな感情やストレス、不安など」は周囲に「伝染する」と指摘するように、不機嫌な人の存在は、チーム全体をネガティブな雰囲気に変えてしまうのです。(カギカッコ内引用元:DAIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|他人がまき散らすストレスに“感染”しない4つの方法

自分自身が、周囲を困らす不機嫌な人にならないためには、怒りの感情をうまく処理することが大切。その方法のひとつとして、NPO法人メンタルレスキュー協会理事長の下園壮太氏は、「強い怒りを感じたら、とにもかくにも『その場を離れる』」ことをすすめます。

同僚の発言で頭にきた……そんなときは、トイレへ行ったり、飲み物を買いに行ったりして、怒りを感じる相手と距離を置く。そうすれば「自然と怒りはピークを過ぎて」くれるそうですよ。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|「怒りが爆発しそうな人」が真っ先にやるべき行動

一方、怒りがちな上司や同僚への対応としては、相手をますます怒らせないために「毅然とした態度」を心がけましょう。

コミュニケーション研究家の藤田尚弓氏によれば、「目をそらす、下を向く、慌てる」などの萎縮した態度は、避けたほうがいいのだとか。すぐ怒るという「相手の間違ったコミュニケーションスタイルを肯定することになりかね」ないからです。

理想は、「相手の目を静かに見つめる、胸を張って立つ」こと。毅然とした態度をとったら印象が悪くなるのでは……と思うかもしれませんが、「『ご指導ありがとうございました』、『勉強になりました』という一言」を添えれば心配いらないそうです。(カギカッコ内引用元:All About|すぐ怒る人への対処法!職場などでの相手とのコミュニケーション

いつもチーム全員が機嫌よくいられるとは限らないもの。自分が怒りを感じたときや、誰かが怒って不機嫌になったときには、チームの人間関係を壊さないためにも、ご紹介した方法を試してみてはいかがでしょうか。

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残念な特徴3. 完璧主義で他人に厳しい

成果やルールを重視したい。自分だけでなく周囲にも完璧であってほしい――こう考える傾向も、注意が必要です。

組織行動学が専門の、ラモン・リュイ大学助教授アンナ・カルメラ G. オカンポ氏らは、「他者に対して最高のパフォーマンスを求め」る人は「職場における人間関係や評判を壊してしまう」と指摘します。「他者が自分の期待に応えられない場合、不安を煽り、過剰な怒りや敵意を示す傾向」があるためです。(カッコ内引用元:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|完璧主義が仕事にもたらす負の影響に気づいているか

こうした人は、心理的安全性を脅かす存在と言えます。たとえば、「返信が遅い!」と部下にきつく言う上司、「上司の指示は効率的でない」と自分のやり方を正当化する部下……。常に批判的な姿勢は、「余計なことは言えない」とまわりを萎縮させてしまうでしょう。

ビジネス・ブレークスルー大学経営学部教授の斉藤徹氏は、STUDY HACKERのインタビューで、心理的安全性を築くためには、リーダーが自ら「強がりの仮面を外す」ことが必要だと述べています。

「じつは、この分野に明るくないんだよね」「申し訳ないけど、助けてくれるかな?」――など、自分自身が完璧ではないことをさらけ出すことで、

「自分の失敗さえ素直に話してくれるリーダーにだったら、なんでも言える」とメンバーは安心感を得て、チームの心理的安全性は確実に高まっていく

(引用元:STUDY HACKER|強いチームの必須条件「心理的安全性」を築けるリーダーの7つの特徴。最重要は “この2つ”

とのこと。

反対に、完璧主義な上司への対応法もご紹介しておきましょう。産業カウンセラーの片桐あい氏いわく、「チームが目指すべきゴールを探っていくことで、上司も部下も双方が納得できるポイントが見えてくる」。その際、以下のことを上司に問いかけるといいそうです。

  • 「今回の仕事のゴール」
  • 「この仕事を進めるうえで、あなたが大切にしているポイント」
  • 「組織としての優先順位」

(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|自分ではわからない「自己流完璧主義者」の特徴

丁寧に問いかけながら、お互いの認識が一致すれば、上司・部下双方とも納得して仕事ができるはず。安心感も得られるでしょう。

***
「話しかけやすい」という状態であれば、みなが気分よく働けるだけでなく、チームの生産性も大きく高まります。ぜひ、雰囲気のいい職場を目指してみてくださいね。

(参考)
東洋経済オンライン|「話しかけづらい上司」は生産性をこうも下げる
Forbes JAPAN|グーグルが広めた「心理的安全性」 日本企業に必要な4つの因子とは
朝日新聞GLOBE+|【石井遼介】うまくいくテレワークに絶対必要な「心理的安全性」とは?
SAGE jounals|Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams
Business Insider Japan|やさしい職場が「心理的安全性」が高いわけではないのです
ダイヤモンド・オンライン|「人間関係が良い職場とそうでない職場」決定的な違い
ダイヤモンド・オンライン|忙しい上司にお伺いを立てる際の声掛けワード、一番いいのは?
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|他人がまき散らすストレスに“感染”しない4つの方法
ScienceDirect.com|Cortisol increase in empathic stress is modulated by emotional closeness and observation modality
東洋経済オンライン|「怒りが爆発しそうな人」が真っ先にやるべき行動
All About|すぐ怒る人への対処法!職場などでの相手とのコミュニケーション
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|完璧主義が仕事にもたらす負の影響に気づいているか
STUDY HACKER|強いチームの必須条件「心理的安全性」を築けるリーダーの7つの特徴。最重要は “この2つ”
東洋経済オンライン|自分ではわからない「自己流完璧主義者」の特徴

【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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