敏感すぎてしんどい人の自律神経は乱れやすい? 「3行日記」がおすすめなワケ

夜景をひとりで眺める非常に敏感な人

世のなかにはHSPと呼ばれる、生まれつき非常に敏感な人がいます。脳の仕組みに特徴があり、頭痛やめまいといった自律神経症状が出やすいのだとか。

もしも、あなたが「自分はHSPかも?」と感じており、思い当たる症状があるなら、自律神経研究の第一人者がすすめる「3行日記」がおすすめです。

HSPの特徴

HSP「Highly (非常に)Sensitive(敏感な) Person(人)」の頭文字をとった略語です。日本では数少ないHSPの臨床医として知られる、十勝むつみのクリニック院長の長沼睦雄氏によれば、この概念を見いだしたアメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士も、非常に繊細で敏感な人なのだとか。

アーロン博士の研究では、HSPが「どの社会にも15~20%の割合で存在すること」や、「生まれつき備わった先天的なものであること」が判明しています。

じつは、日本の医学界で「HSP」という概念は認められていません。科学的・客観的に曖昧な部分があることから、精神医学や臨床心理学の専門家には、ほとんど取り上げてもらえなかったのだとか。しかし、精神科医の岡田尊司氏によれば、「過敏性」としての研究は数多く進められており、遺伝子レベルから心理学レベルまで、あらゆることがわかってきているそうです。
※参考:岡田氏著『過敏で傷つきやすい人たち 』(幻冬舎新書)

そうした状況をふまえながらも、精神科医である前出の長沼氏が診療時にあえてHSPという言葉を使うのは、HSPの概念を用いることで、自分の状況をうまく説明できる人々が存在するからなのだとか。同氏が実際に出会った非常に敏感な人々からわかる、HSPの特徴は次のとおりです。

< HSPの特徴 >
  • とにかくよく気がつく
  • 相手の考えや感情を察知できる
  • 察知しすぎて(共感力がありすぎて)心が疲れやすい
  • 感受性豊か(感動・感激ですぐ涙ぐむ)
  • とても神経質である
  • 周囲の些細な変化に気づく
  • よく「細かい」と言われる
  • 添加物にも敏感(ファストフードで倦怠感)

※参考:長沼氏著『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』(青春出版社)

また、ちょっとした言葉に傷つき、落ち込みやすく、ストレスを抱えやすいのもHSPの特徴です。

しかし、「敏感すぎること」は特別な能力でもあります。長沼氏によれば、鋭い感性と直観力をもつHSPは、すぐれた科学者や芸術家にも多いとのこと。

とても繊細な絵を描くアーティスト

HSPのメカニズム

ここで、HSPのメカニズムを少し紹介しましょう。

じつは、ノルアドレナリンとコルチゾールの濃度が高まると、扁桃体は「危険に備えよ!」と警告を発したり、恐怖などに関わる記憶を強めたりするのだとか。(※東邦大学の「ストレスと脳」内の説明より)。HSPがストレスを抱えやすいのもうなずけますね。

  • また、自律神経は、私たちの意識とは関係なく、常にからだを整えてくれている神経ですが、HSPは自律神経中枢が刺激されやすいため、自律神経症状が出やすいのだそう。自律神経症状とは、たとえば頭痛やめまい、だるさ、吐き気、動悸などです(※ダ・ヴィンチニュース|「もしかして「HSP」? 生きづらさを改善するためのコツ」より)。

敏感すぎるだけでも大変なのに、そんな症状まで出てはかないませんよね。仕事や勉強、日常生活にまで支障をきたしてしまいます。

ストレスと頭痛を抱えるビジネスパーソン

3行日記の効果

そこで、今回紹介するのが、自律神経研究の第一人者である順天堂大学医学部教授・小林弘幸氏が推奨する「3行日記」です。夜寝る前に、次の3つについてたった3行書くだけなんですよ。

  1. 今日よくなかったこと
  2. 今日よかったこと
  3. 明日の目標

3番目は、「関心を引いた些細なこと」でもかまわないそうです。

ひととおり書くのに5分もかからない手軽さなのに、自律神経を整えてくれるのは、手書き文字の乱れが自律神経の乱れを示し、自分の状態に気づかせてくれるからです。そこで、意識的に文字をゆっくりと丁寧に書くことで、だんだん気持ちが落ち着いて、自律神経のバランスが整っていくのだとか。

また、「3行日記」を書きながら今日を振り返ると、自分の経験に対して客観的になれるそうです。 それにより気づきが生まれるので、自ら悪い流れを正し、いい方向へと流れをコントロールできるようになる、とのこと。自分で制御できれば安心感が生まれ、自律神経も整うわけですね。アーロン博士も「HSPの気持ちを落ち着かせる」と、日記を奨励しています。

HSPの気持ちを落ち着かせる毎晩の日記

3行日記のルール

では、少しだけHSPの自覚がある筆者も、今日から「3行日記」を始めてみましょう。書く際のルールは次のとおりです。

  • 手書き限定
  • 書くのは寝る前
  • 日付と曜日の記入は必須
  • できるだけ簡潔に書く
  • 1~3の順番で書く
  • ゆっくりと丁寧に書く

これらさえ守れば、あとは日記帳やノート、手帳などに毎日書いていくだけです。

3行日記をやってみた感想

3行日記をやってみたもの

――さて、2週間ほど3行日記をつけてみて、強く感じることがありました。

日記を書き終えてから、書いたものをなんとなく眺めていると、3行日記が今日一日の箇条書きに見えてくるのです。

3行日記を2週間ほどやってみたもの

ものすごく動揺し、傷つき、イライラしたことも、ものすごく嬉しかったこと、楽しかったことも、自分の「こうしたい」も、すべて同等に簡潔に、3行のかたちで並んでいます。

それが、敏感さゆえ物事を複雑にとらえがちな私の頭を、こつんと優しく弾き、こう感じさせてくれました。

日々は意外にシンプルだ。

そして、その感覚が、「なーんだ、別にたいしたことないや」「私にもできるかも」と、少しの気楽さと、少しの自己効力感を与えてくれたのです。これって、もう、自律神経は整っていますよね。

***
敏感すぎてしんどい人に、自律神経を整えてくれる「3行日記」を紹介しました。想像以上に効果を感じられるので、ぜひお試しください!

(参考)
長沼睦雄(2016),『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』, 青春出版社.
岡田尊司(2017),『過敏で傷つきやすい人たち 』, 幻冬舎.
新潟薬科大学 学生支援総合センター|薬科大健康だより 6月号
平野真理(2012),「心理的敏感さに対するレジリエンスの緩衝効果の検討:—もともとの「弱さ」を後天的に補えるか」, 日本教育心理学会,教育心理学研究, 60巻, 4号, pp. 343-354.
STUDY HACKER|自律神経を整えて頭もスッキリ! 夜寝る前 “たった5分” でできる「3行日記」が最高だった。
STUDY HACKER|「繊細すぎて疲れやすい人」が楽になるノート術。“心の声” を正直に言葉にしてみて!
ダ・ヴィンチニュース|もしかして「HSP」? 生きづらさを改善するためのコツ
東邦大学|生物学科|ストレスと脳

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト