「自分の仕事が遅いせいでチームに迷惑をかけている」
「もっと仕事が速くできる人になって評価されたい、より大きな仕事を任されたい」
こうした悩みをもつ人へ、仕事のスピードも質も高めるための「10のしないこと」をリストアップしました。「するべき」というルールに縛られないので心理的負担が少なく、すぐに実践できますよ。ではさっそく、ご紹介しましょう。
1. 作業をひとりで抱え込まない
仕事が遅い人は、本来しなくてもいいこと、また自分ひとりでやらなくていいことを抱えがち。「餅は餅屋」の発想で、自分にしかできないことに力を入れ、そうでないことは周囲を頼るのが、仕事の質とスピードを両立させる秘訣だ――そう述べるのは、『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』など多くの著書をもつ研修講師・コンサルタントの鳥原隆志氏です。
たとえば、取引先データを検証してエラーの修正をするという不慣れな仕事をする場合、1件1件自分で修正するよりも、専門の担当者に頼んだほうが作業は格段に速いはず。作業に対して「どうすれば速くできるか」を考える前に「誰がそれをするべきか」を考えるのが、仕事を速くするコツだそうですよ。
2. わからないことをやみくもに調べない
あなたは仕事でわからないことがあっても、周囲に遠慮して質問せず、時間をかけて調べたりむやみに試行錯誤したりして、ひとりで解決しようとしていませんか? 仕事が速い人はこれとは逆で、「わからないことをすぐまわりの人に相談する習慣がある」と鳥原氏は言います。
会議で使うプロジェクターがパソコンと接続できないのなら、やみくもにマニュアルを読み漁るのではなく、ここでも「餅は餅屋」の発想で、社内の詳しい人やカスタマーセンターに問い合わせるのです。問題をサッと解決すれば時間の余裕が生まれ、より万全に会議の準備ができたり、ほかのメンバーの作業を手伝えたりして、個人やチームでの仕事の質も上がりますよ。
3. 段取りを考えずに始めない
問題解決コンサルタントの阿比留眞二氏は、仕事が遅い原因のひとつに「段取り不足」を挙げています。すぐできる解決策は、まわりの仕事が速い人の動きを観察してまねをすることだそう。
自分より速く、しかもハイクオリティな資料を作成する同僚を観察してみると、便利なツールを活用したり、人に相談して効率的に情報収集したりしているかもしれません。段取り上手になるにはどうすればいいのか、先輩や上司など身近な人を手本にして学びましょう。
4. インプットに必要以上の時間をかけない
情報収集やマニュアルを読むなどのインプットは、ゴールイメージを決めてから始めるとよい。そう述べるのは、MBAを保有する実業家で脳科学者の上岡正明氏です。カラーバスという心理効果により、あらかじめ目的を設定しておくと、自然とそのための情報を見つけやすくなるのだそう。
使ったことのないシステムを利用して部署内の勤怠を管理することになり、そのマニュアルを読む場面を想定してみましょう。「該当箇所だけ読む」とゴールを設定しておけば、脳の働きによって勤怠管理に関する必要な情報をすばやく見つけることができます。逆にそうしない場合、マニュアルの最初から最後まで、本当は必要がないところにまで目を通した結果、時間が無駄になることも。なんのためにインプットするのか、作業の前に自分へ問いかけてみましょう。
5. 失敗を恐れない
仕事でよい結果を出すには、いち早く行動を起こして課題にぶつからなければいけないもの。だからこそ、仕事の質もスピードも高い人は失敗を恐れないと上岡氏は言います。
たとえば企画書を作成して上司に見せる場合、仕事が速い人は、スピードを重視して60点くらいの出来でも提出します。もし修正が必要であれば、そのつど改善すればいいだけのこと。
上岡氏いわく、「仕事は失敗の連続」と腹をくくってしまったほうがスピードアップできるとのことですよ。
6. 緊急性が低く手間のかかる作業をあと回しにしない
急がないけれど手間のかかる仕事は、「まとまった時間にやろう」とついあと回しにしがち。しかし、これらはやがて必ず、最も優先度が高い「緊急性が高くて手間がかかる仕事」に変わるもの。だからこそ、不急の仕事でも早めに着手したほうがよいと、勉強法・仕事術に関する著書を10冊以上もつ弁護士の鬼頭政人氏は警告します。仕事が遅い人は「期日に間に合えばいい」と考えがちですが、仕事が速い人は1日も早く仕上げることを理想としているのです。
たとえば、膨大なデータに誤りがないか翌週までに確認するというタスクは、緊急性は低いですが手間がかかります。そんなタスクをあと回しにしてしまうと、万が一大きなトラブルが起こった際に場当たり的な対処をして仕事の質を下げたり、作業完了が遅れて「仕事が遅い人」と評価されたりするので、要注意です。
7. すべての作業を完璧にしようとしない
スピードや丁寧さなど、仕事内容によって最も求められることは違いますよね。そこを理解せず、すべてを完璧にこなそうとすると仕事は遅くなると鬼頭氏は述べます。
そこで重要なのが、すべての仕事に対して「目的は何か」を問い続けること。社会人教育関連サービスを運営する松田航氏が、こう説いています。
自社サービスの集客状況に関する資料をつくる場合、「次の企画に使う」「他社にサービスを紹介する」ことが目的なら、時間をかけて念入りに行なう必要があるでしょう。一方で「一刻も早くチームで共有したい」なら、求められるのは丁寧さよりスピード。いまの仕事は何が目的なのか、と常に考える習慣をつけるとよいですよ。
8. 昼休みにスマートフォンばかり見ない
仕事の遅い人は、もしかすると脳が疲れすぎているのかもしれません。その一因がスマートフォン。東京疲労・睡眠クリニック院長で医学博士の梶本修身氏によると、スマートフォンから受け取る膨大な情報は、脳を酷使する原因になるのだそう。脳の酷使は情報処理能力の低下につながってしまいます。
梶本氏いわく、昼休みにスマートフォンを握りっぱなしの人は、30分ほど目を閉じて脳を休ませる時間をつくると作業効率が高まるとのこと。昼休みには昼食をとるだけでなく、脳を休ませる時間を意識的に設けましょう。
9. デスクまわりを不要な書類や持ち物でいっぱいにしない
仕事の進みが悪くて困っているなら、仕事スペースが散らかっていないか確認するのも一手です。プリンストン大学神経科学研究所が2011年に行なった研究によれば、散らかった作業環境は脳に負荷をかけて集中力を低下させることがわかったそう。
前出の鳥原氏は、不要な書類やあまり使わない文房具など、余分なものをなくすと仕事がしやすくなりスピードが上がると言います。理想は引き出しひとつに持ち物をまとめること。単純なことですが、デスクまわりを整えるだけでも仕事のスピードアップにつながりますよ。
10. 行き詰まりやすい環境で作業しない
仕事が遅いのは、先ほども示したように環境のせいであることも。「行き詰まりやすい環境で作業すると、脳疲労がたまって生産性が落ちる」と指摘するのは、前出の梶本氏です。エアコンや蛍光灯など人工的なものばかりの環境では、脳が疲れてしまうとのこと。
生産性を高めたいなら、窓を開けて風を入れる、自然光を入れるなど、自然を感じられるような工夫を取り入れるといいそうです。自然の風に強弱の「揺らぎ」があるように、脳の活動にも一定の不規則性があるため、シンクロし合うとよい刺激が受けられると言います。仕事が速い人になるために、作業環境も見直してみましょう。
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仕事が速い人になるための「10のしないこと」をまとめると、次のようになります。
できることから、さっそく始めてみましょう!
(参考)
鳥原隆志 (2017), 『仕事のスピードと質が同時に上がる33の習慣』, SBクリエイティブ.
STUDY HACKER|仕事が遅いあなたが抱える3つの課題。「ひとりでやれる」その思い込みはあまりにも危険
プレジデントオンライン|「仕事が遅い」と思われている人が根本的に勘違いしていること 「コツコツ頑張る人」ほど損する時代
プレジデントオンライン|仕事が速い人は「自力でドーパミンを出す方法」を知っている 平穏無事な毎日を送っていてはダメ
マネー現代|「仕事速いね!」と言われる人が意識している、たった3つのコツ
マネー現代|本当に「生産性が高い人」が「効率」よりも大事にしているものとは…?
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|デスクが散らかっていると集中力も生産性も低下する 書類を積み上げたくなる誘惑に打ち勝つ方法
梶本修身 (2017), 『すべての疲労は脳が原因 3 仕事編』, 集英社.
【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。