「繊細すぎて疲れている人」の脳に「音楽」がとてもいい理由

自然な景色を眺めながら音楽を聴く女性

繊細で敏感な人にとって、この世のなかはどこもかしこも刺激だらけ。絶え間ない刺激のせいでいつもぐったり疲れていますが、音楽との相性はとてもいいそうです。 音楽は、ストレスのない社交活動を実現し、癒やしを与えてくれるのだとか。今回は、いつもぐったりと疲れている「繊細で敏感な人」と「音楽」とのいい関係について紹介しましょう。

疲れやすく傷つきやすい人とは?

ビジネスパーソンの疲れの原因として多いのは、休みなく働きづめることや、寝不足、人間関係など。そのほか、「朝食を抜く」「炭水化物ばかり食べる」「甘いものばかり摂取する」といった、血糖値を急上昇・急降下させる行為も疲れやすさの原因になるそうです(管理栄養士の岡田明子氏より)。

そうした原因が思い当たらないのに疲れが激しいなら、あなたはきっと「とても繊細で敏感な人」です。この気質をもつ人はアメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン博士によって概念化されており、「HSP:Highly Sensitive Person(非常に敏感な人)」と呼ばれています。

生まれつき感受性が強く敏感で、周囲からの刺激を過度に受けるため、非常に傷つきやすく疲れやすいのだとか。また、ストレスを処理する脳の領域「扁桃体」が活発なので、不安や恐怖を感じ取りやすいそうです。しかし、そのぶん共感力・直観力・想像力に長けているとのこと。

明るさ、音、味、におい、痛み、雰囲気、変化、人の考えなど、あらゆる刺激を細かくキャッチするHSPには、非HSPの100〜1,000倍もの情報が入り込んでくるそう。疲れるのも当然ですね。

ちなみに、本来のHSPは内向型ですが、HSPのなかには外向型に見える「HSS:High Sensation Seeking(刺激探求型))」も存在します。HSS型HSPは、本来のHSPが、非HSPの多い世間になじもうとした結果とのこと。つまり、どちらも根本は傷つきやすく疲れやすいのです。

家で物思いにふける女性

「いつもぐったり疲れている人」と「音楽」

では、そんな「いつもぐったり疲れているHSP」と「音楽」がいい関係なのはなぜか?――それは、HSPのミラーニューロン・システムが非常に活発であるからです。

脳科学コンサルタントの萩原一平氏よれば、他人が運動をしていると、ただ見ているだけのあなたの脳も、運動をつかさどる部位にある「ミラーニューロン」という神経細胞群が反応するそう。笑っている人を見ると、自分も笑っているかのように楽しくなるのも、ミラーニューロンの働きだと考えられています。

脳の働きによって相手と同じ経験を獲得し、相手の気持ちを理解するわけです。 つまりミラーニューロン・システムとは、相手の立場になる能力――「共感力」を支える脳システムのこと。先述のとおり、共感力の高さはHSPの特徴でもあります。

『Sense and Sensitivity: How Highly Sensitive People Are Wired for Wonder』の著者であるデボラ・ワード氏によれば、共感力の高い人々が音楽を聴くと、社会的処理の領域である脳の前頭前皮質に、より大きな刺激をつくり出すそうです。また、脳の側頭頭頂領域でも活動を示すそう。この領域は、通常であれば他人と交流する際に刺激される領域なのだとか。つまり、共感力の高いHSPは、音楽で社会的な活動を体験することができるわけです。

ハーバード大学の教授で精神科医ロバート・ウォールディンガー氏いわく、「社会的つながりは健康と幸福に不可欠」とのこと。人とのつながりはストレスの原因になる一方で、人を幸せにするものでもあるわけです。誰かと共感し合えたとき、心地よくなるのがその証拠でしょう。

しかし、繊細で敏感なHSPは、リアルな社交の場で起こった些細なことや、感じ取った変化・空気ですぐに傷つき、疲れてしまいます。もちろん自ら刺激を求めてしまうHSS型HSPも同じこと。 その点、音楽鑑賞は「傷つき疲れるリスクがない社会的な脳活動」であり、「心地よさを得る(疲れを癒やす)手段でもあるということです。

音楽が脳に作用している脳のイラスト

自分専用の「音楽」をつくろう

「いつもぐったり疲れている人」と「音楽」のいい関係がわかりました。では、具体的に、どう音楽といい関係を結んでいけばいいでしょう。

先端脳科学を研究する精神科医の久賀谷亮氏によると、長年うつ病に苦しめられていた人が「自分の気分に合わせた曲」を聴いた際に、大きな効果が生まれたそうです。たとえば、イライラしたときはこの音楽リスト、落ち込んだときはこの音楽リスト、といった具合です。

同氏は、現代社会における疲れの原因はずばり「脳」にあると明言します。もしも音楽でよい気分がもたらされたら、脳の負荷を減らすことができるとのこと。鋭敏な感覚をもつ「とても繊細で敏感な人」なら、なおさらその効果が高いはず。

ジャンル関係なくその時点の「あなたの気分に合った音楽」を、その時々に「あなたが心地よくなる音楽」を、どんどんピックアップしていきましょう!

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「いつもぐったり疲れている人」と「音楽」のいい関係、いい関係の結び方を紹介しました。あなた専用の音楽リストで、うまく疲れが癒やされるといいですね。

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|疲れやすい人の食事3つの問題点、ご褒美スイーツはNG!
エル・ガール オンライン|心に効く音楽をもっておく|疲れの原因は“脳”にあるかも!? 精神科医がすすめる「脳疲労」を改善する方法
Psychology Today|Why Sensitive People Need Music
STUDY HACKER|「周囲に敏感すぎて苦しい人」がしてはいけない5つのこと。もっと自分を優先してもいい
STUDY HACKER|好奇心旺盛だけど傷つきやすい、刺激を求めるけど疲れやすい――矛盾だらけの「HSS」がラクになるコツ
PR TIMES|HSPの提唱者アーロン博士のドキュメンタリー映画「Sensitive: The Untold Story」9月16日祝 東京・渋谷にて上映|株式会社クミシュランのプレスリリース
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|脳の「ミラーニューロン」がおもてなしの成功を左右する

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