「いつもやっているから」という理由だけで、同じ施策をずっと続けている……。「なぜそれをやるのか」という意味を考えないまま、ルーティンワークをこなしている……。そんな人はいませんか?
これは、いわば「思考停止」の状態。いままでのやり方で良しとし、自分の頭で考える習慣が抜けてしまうと、仕事の生産性やあなた自身のスキルを高めていくことはできないでしょう。
今回は、私たちが思考停止に陥る原因を探ったうえで、そこから抜け出す方法をご紹介します。「思考停止な人の特徴」について知りたい方は、「『思考停止』している人の “あるあるな癖” 4つ。当てはまったらかなりマズい」もお読みください。
思考停止に陥る原因は「ホメオスタシス」にあり
私たちが思考停止に陥ってしまうのは、なぜなのでしょうか。認知科学者の苫米地英人氏は、著書『思考停止という病』 のなかで、その原因を「『いまのままで問題ない』という現状維持を選んでしまうから」だと指摘しています。
苫米地氏によれば、これは人間の本能によるのだそう。何か新しいことに取り組むのは、じつは脳にとって負荷がかなり高い作業。何も変えずにいまの状態を維持したほうが、当然楽なわけです。結果、コンフォートゾーン(=快適で居心地のいい状態)を維持する「ホメオスタシス(=恒常性維持機能)」が働いてしまうのだとか。
思考停止から脱するためには、思考を前進させる習慣を自らつくらなければなりません。そのうえで大事なのが「現状を疑える」ようになること。当たり前だと思うことに対して、「本当に正しいのだろうか?」「いまのままでいいのだろうか?」「何か別の方法はないのだろうか?」などと疑問をもつことで、止まっていた思考を前に進めていくのです。
以下に紹介する「3つのフレーズ」を使い、現状を疑う習慣をつくりましょう。
【1】「それを変えるとどうなる?」(→前例を疑えるようになる)
苫米地氏は、思考停止してしまう原因の多くが「前例主義」にあると言います。前例主義とは、何かを行なうときに「過去のやり方をそのまま引き継ぐ」という考え方のこと。みなさんにも、「これまでずっとこうしてきたから」「先輩たちがこの方法でずっとやってきたから」といった理由で、その方法や効果について疑うこともしないまま取り組んでいるものがあるのではないでしょうか。
そこで、前例を疑って「それを変えるとどうなる?」と自身に問いかけてみましょう。
たとえば、新規顧客獲得のために、これまでずっとインターネット広告を打っていたとします。しかし、この方法が最善とは限りませんよね。そこで、「それを変えるとどうなる?」が出番。代替案を考えなければいけなくなります。
すると、「自社でSNSアカウントをつくって情報発信」「友だち紹介キャンペーン」など、さまざまなアイデアが浮かんでくるはず。従来のインターネット広告より高い効果が期待できる方法が見つかる可能性だってあります。
前例を疑うことで、過去にとらわれない新しい考えが導き出されるのです。
【2】「なぜ?」(→相手の言葉を鵜呑みにしなくなる)
上司に「これをやっておいて」と言われた。きっと多くの人が、何も疑わないまま「承知しました」などと答えるのではないでしょうか。でも、ここにも思考停止の可能性が潜んでいるかもしれません。
ビジネス・ブレークスルー大学副学長の宇田左近氏は、経営コンサルタントである斎藤顕一氏が述べた「先輩や上司に言われたことが、必ずしも正しいとは限らない。言われたとおりに一生懸命仕事をしても成果に結びつかないのは、間違ったことをしているからである」という言葉を引き合いに、次のように言っています。
必要なのは、自分自身で瞬時に「なぜか」を自問し、そして本質的な課題が何かを探る。そのうえで、その場で「なぜか」という質問をする能力です。そうすれば、より根源的な課題解決に一気に近づけるようになります。
(引用元:東洋経済オンライン|できる人は、摩擦を恐れず「なぜ?」と問う)
たとえば、上司から「売上をもっと上げるために、新商品のアイデアを考えてほしい」と頼まれた場合。普通であれば、その指示を鵜呑みにして「どんな商品をつくればいいのだろう?」と考え始めることでしょう。
でも、ここでちょっと立ち止まり、「なぜ、売上を上げるために新しい商品が必要なんだろう?」と考えてみるのです。すると、売上を上げるための手段は決してひとつではなく、「既存商品をブラッシュアップする」「プロモーションを刷新してみる」など、別の方向性からもアプローチできることに気づけます。
このように、指示に対して「なぜ?」と自問し、時には相手に尋ねてみることで、建設的な思考・議論ができるようになるのです。
【3】「ゴールは何か?」(=問題意識を持てる)
前出の苫米地氏は、「思考していない人=ゴールがない人」と指摘します。ここでの「ゴール」とは、自分自身が本気で成し遂げたいことです。
たとえば、「営業成績で全国1位をとる!」と考えている人と、「とりあえずクビにならなければいい」と考えている人がいたとしましょう。両者の思考に雲泥の差が出ることは、言うまでもないですよね。
前者のように、ゴールが明確で成長に貪欲な人であれば、「訪問件数を増やすには何をすべきだろう?(→メール文面を改善してみようか)」「商品知識を増やすためにどうすればいいだろう?(→開発チームにも話を聞きに行こうか)」など、日々さまざまな疑問が思い浮かぶことでしょう。そこから、成長につながる具体的なアクションを導き出すこともできます。一方の後者は、現状を変える必要がないので、何か新しいことを考える必要もありません。
苫米地氏は、「ゴールは強烈でなければいけない」と言います。いまの延長線上ではなく、現状を変えないと達成できないものにするのが大前提だそうです。ぜひ、「ゴールは何か?」と自身に問いかけ、現状を打破するきっかけをつかんでください。
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「それを変えるとどうなる?」
「なぜ?」
「ゴールは何か?」
この3つのフレーズで、自分で考える力を向上させましょう!
(参考)
苫米地英人(2016),『思考停止という病 』, KADOKAWA.
東洋経済オンライン|考えが「浅い」と言われる人が知らない思考法
東洋経済オンライン|できる人は、摩擦を恐れず「なぜ?」と問う
【ライタープロフィール】
SHOICHI
大学院修了後、一般企業に就職。現在は会社を辞め、執筆活動をしている。読書、音楽、YouTubeが好き。