限られた時間をどう使えば効率的に仕事をこなせるのか——。ビジネスパーソンにとって永遠のテーマのひとつかもしれません。

大手化学メーカー・花王の研究開発職を経て、現在は商品開発コンサルタント、ビジネス書作家、講演家などさまざまな顔を持つ美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)さん3つの会社を経営しながら、いくつものプロジェクトに携わり、14本もの雑誌の連載を抱えるなど多忙な毎日を送っています。いったい、どのようにして仕事の効率を最大化し、数多くの仕事を進めているのでしょうか

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS) 写真/石塚雅人

「一軍」以外のものをまわりから排除する

仕事ができる人ほどデスクまわりは散らかりがちです。多くの仕事をこなすわけですから、それに必要な資料なども増えて当然です。でも、そうすると仕事のスピードは格段に落ちます。いま取り掛かっている仕事とは別の仕事に関するものが近くにあふれていては、それもあたりまえのことですね。

まずは、仕事に必要な資料などに限らず、あらゆるものの「一軍」だけを近くに置くことを考えましょう。デスクに3つの飲み物が置かれていたとします。そうすると、飲み物を手に取るときに、なにを飲もうかと一瞬の迷いが生まれる。そういう時間の積み重ねのほか、思考が別のことに持っていかれることも、仕事のスピードを落とすことにつながります。

それを避けるため、「二軍」のものはすべて見えないところにしまってしまうのです。そういうものは捨てるべきという考えもありますが、二軍が一軍に昇格することもあるので捨てる必要はありません。「一軍、二軍に分けているような時間はない」と考える人も安心してください。片づけの時間を取っても、仕事に費やすトータルの時間は絶対に短くなります。

また、物理的な整理とは違って、頭の中を整理することも必要です。仕事中、「あれもやらなきゃ」「これもやらなきゃ」といろいろなタスクに追われて、頭の中がこんがらがってしまうときもあるでしょう。であれば、必要なタスクとしてメモに書き出してしまえばいいのです。

そうして書き出せば、忘れることを防ぐことになりますし、一度リセットされてそのタスクが気になることもなくなる。逆に、頭に浮かんだことが本当に気になるのなら、それを優先して、いま取り掛かっている仕事をタスクとして書き出せばいいのです。

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仕事の時間生産性を決める4つの条件

ただ、仕事の優先順位を考える際には「気になるかどうか」ということ以外のものも考慮する必要があります。仕事の優先順位は「重要度」で決めるというのが鉄則のようにいわれます。

それが誤りとは思いませんが、いくら重要度によって仕事を並べ替えたところで、結局、全部やらないといけないわけです。それならば、「いかに効率的に全部の仕事を終わらせるか」と考えるべきではないでしょうか。その実現のために、さまざまな条件下における「時間生産性がいちばん高い仕事」を選択しましょう。その条件とは、「場所」「環境」「時間」「体調」の4つです。

【場所】
原稿の執筆をするのに、移動中の新幹線でやるのと、ホテルのラウンジでやるのではどちらが効率的でしょうか。新幹線だと、隣の人が突然席を立つこともあるでしょう。予期せぬ中断が入ると、生産性ががくんと落ちます。

ホテルのラウンジでやれば1時間で終わるのに、新幹線のなかでは2時間かかるかもしれない。であれば、新幹線のなかでは、仕事のアイデアを練る、本を読んで情報を得る、仮眠して体力を温存するというふうに、場所に適した行動を心がけるべきだと思うのです。

【環境・時間】
また、同じ場所でも環境や時間によって生産性が変わります。オフィスでもやたらとプレッシャーをかけてくる上司がいる環境であったり、電話がたくさん鳴ったりする日中の時間なら、ひとりで集中してやるべき仕事には向きません

【体調】
見落としがちなものが体調です。多くの人が、常に自分の体調は100%の状態だと思って仕事の予定を組みます。でも、「今日はちょっとしんどいな」と思うと、「これは明日やろう」というふうに翌日に仕事を回してしまうこともあるのではないですか?

でも、そもそも体調が100%のつもりで仕事の予定を組んでいたら……? 明日の自分は100%の体調でやってようやくできる仕事に加えて、余分に仕事をやらなければならなくなる。当然、そんなことは無理ですよね。こうして、どんどん仕事を後ろに回していく悪循環にハマることになってしまいます。そうではなくて、骨が折れそうな仕事は余裕を持って予定を組むなど、社会人であれば自分の体調に目を向けることも必要です

自由に使える朝には真っ先にやりたい仕事をやる

先に、少し時間による仕事の使い分けについてお伝えしました。社会人にとって最も自由に使える時間が朝の始業前でしょう。この時間にやるべきことは、「自分が本当にやりたい仕事」です。

会社に勤めていれば、「やらないといけない仕事」はいくらでもあります。でも、なんのために仕事をするのか、生きているのかと考えれば、いちばん元気でパワーがあふれている朝には、たとえ5分でも10分でもいいので、やりたい仕事をやるべきではないでしょうか。

僕は花王に勤めていたサラリーマン時代から、出勤前に本を書いていました。それが仕事になったいまは、もちろんいつ執筆をしてもいいのですが、「やりたい仕事を最初にやる」という原則は変わっていません

また、会社に勤めている人へほかにアドバイスできることがあるとしたら、出社して始業までの時間を自分のアピールに使うということ。たとえば、なにかの資格の勉強をする。そういう姿をまわりの人間が目にすれば、今後、その資格に関するプロジェクトが立ち上がったときには真っ先に声がかかるでしょう。でも、いくら勉強をしていても、それが周囲に知られなければそのチャンスを手に入れる可能性も低くなってしまいます。

なにに使ってもよくて、パワーにあふれた始業前の時間をどう生かすか。これもまた、社会人として生きていくために重要なことです

【美崎栄一郎さん ほかのインタビュー記事はこちら】
結果を出す人はノートに何を書いているのか? アイデアマンが「手書き」にこだわる深い理由。
「週1日は “仕事をしない日” をつくる」チャンスを確実にモノにできる人がやっていること。

『面倒くさがりやの超整理術 「先送り」しないための40のコツ』

美崎栄一郎 著

総合法令出版(2018)

【プロフィール】
美崎栄一郎(みさき・えいいちろう)
1971年6月24日生まれ、神奈川県出身。商品開発コンサルタント、ビジネス書作家、講演家、起業家。2009年に上梓した初の著書『「結果を出す人」はノートに何を書いているのか』(ナナ・コーポレート・コミュニケーション)がビジネス書大賞1位に。その後、花王で商品開発に携わったサラリーマン経験を元に、仕事術をまとめた著書は30冊を超える。『[書類・手帳・ノート・ノマド]の文具術』(ダイヤモンド社)は文具本で異例のヒット。『iPadバカ』(アスコム)はiPad関連書籍で最も売れた記録を持つ。2013年よりビジネス手帳の監修も手がける。講演テーマは、時間術、仕事術、アイデア発想術からノート術、デジタルツール活用術など。企業勤務経験から企業内研修の依頼も多い。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。