仕事が忙しくてたまらない。ひとつひとつ頑張ってこなしているつもりなのに、いつまでたっても忙しいまま。この忙しさ、どうにかならないものか……。
このように感じている方は少なくないでしょう。忙しいあまり体調を崩す羽目になった経験のある真面目な方もいらっしゃるかもしれませんね。
成果を出すために一生懸命仕事をすることはもちろん大切ではありますが、そのせいで心身の健康まで阻害してしまうのは考えもの。そこで今回は、忙しさを上手に解消して仕事を完遂するコツについてお伝えします。
「忙しすぎる!」のはなぜか
冒頭に挙げたように、仕事に忙殺される状況に陥ってしまうのはいったいどうしてなのでしょうか。その理由を2点挙げてみます。
1. 無駄な仕事をしているから
仕事が忙しくてたまらないのは、無駄な仕事に精を出しすぎているからかもしれません。アーキテクチャを軸としたコンサルティングを手がける株式会社アークウェイの代表取締役・森屋英治氏は、一般的なビジネスパーソンの仕事の中には、無駄なものが5割ほどもあると断言しています。
たとえば、ファイル共有で済むはずの資料を会議用に紙でも用意する、メールで送った上司への報告を対面でも行なう、似たような資料をいくつも用意する、といったものはその典型と言えるかもしれませんね。
こうした仕事を抱え続けていたら、ほかのやるべき仕事になかなか手が回らないのは当然のこと。強いストレスを感じることにもなってしまいます。
2. 優先順位をつけていないから
優先順位を考えず仕事を請け負った順に進めていると、忙しさはどんどん増してしまいます。
長くコンサルティングに従事してきた中村真司氏(現・デロイト トーマツ コンサルティング執行役員)は、コンサルタントとして結果を出せずに行き詰まってしまう人の傾向として、ワークプランニングの能力が未熟であるかその重要性に気づいていない、という点を挙げています。
ワークプランニングとは、やるべき業務を、どのような優先順位で、誰がいつまでに行なうのかを明らかにすること。これがうまくできていないと、仕事がスムーズに進まずに残業が続いてしまうほか、アウトプットの質が落ちてやり直しが増え、焦るあまり仕事の質がますます低下する……といった悪循環につながるのだといいます。
たしかにこのような取り組み方をしていたら、忙しいわりに仕事が終わらないということになってしまいますよね。結果的に自分の首を絞めることになるというわけです。
忙しさを上手に解消するコツ1:無駄な仕事を切り捨てる
では、私たちはどのようにすれば「忙しい」を言い訳にすることなく仕事を完遂することができるのでしょうか。まず、思い切って無駄な仕事をなくしていきましょう。言い換えると、生産性を下げている仕事をやめるのです。
人事制度や採用・組織改革のコンサルティングを行なうユニティ・サポート代表の小笠原隆夫氏によれば、生産性を下げている仕事とは「やらなくてもそれほど影響がないもの」。会議、書類、報告、電話、メール、重複作業などには、慣習としてやっているだけのものもあるかもしれません。そうした仕事のなかから、やらなくてもたいして問題ないものを減らしていけば、仕事の量はだいぶ軽減されるはずだといいます。
「そうは言っても、必要な仕事なのか無駄な仕事なのか、その見極めが難しい」と思う方もいることでしょう。そこで、会議に的を絞り、必要な会議と無駄な会議の選別の仕方をご紹介します。『ラクして速いが一番すごい』の著者・松本利明氏曰く、
【出席すべき重要な会議】 1. アイデアを出す会議 2. 物事を伝達する会議 3. 意思決定する会議
単刀直入に言えば、これ以外の会議はすべて無駄です。そして、ものごとを伝達する会議でも、議事録を読めば済むようなものなら出席する必要はありません。
(引用元:STUDY HACKER|無駄な仕事はとことん切り捨てる! ラクして速く仕事を終わらせるための「捨てる技術」)
とのこと。無駄な会議の多くは、ただおしゃべりをしているだけのものがほとんどだそうです。「それでもやっぱり会議には欠席しづらい」と考える人に松本氏がアドバイスするのは、会議よりもっと重要な予定を入れてしまうこと。これで誰にも文句をいわれることなく、無駄な会議に出なくて済みますよ。
忙しさを上手に解消するコツ2:ワークプランを作成する
次に、優先順位よりも請け負った順に仕事を進めがちな無計画な人は、先に紹介した中村氏が言っていたワークプランニング(ワークプランの作成)をしてみましょう。やり方は以下のとおりです。
- 今抱えている作業を洗い出す
- 各作業の重要度を評価する
- 各作業の緊急度を評価する
- 役割分担を決める
- ワークプランをアップデートする
ステップの2と3で評価した「重要度」と「緊急度」が、そのまま作業の優先順位へと直結します。そして「4.役割分担」では、自分が持っている作業をするのによりふさわしい人が周りにいる場合には、その人に仕事を任せます。さらに、状況の変化に応じて「5. ワークプランのアップデート」も適宜行なうのです。
このワークプランの作成法を、具体例を用いながら考えてみます。
【状況】
いま抱えている業務は、「企画書Aの作成」と「プレゼン資料Bの作成」の2つ。重要度は同じくらいだが、緊急度は「企画書Aの作成」>「プレゼン資料Bの作成」であるため、企画書Aに取り掛かっていたところ、この2つの業務より重要度・緊急度がともに高い「書類Cの確認」を上司から指示された。
【ワークプランのアップデート】
この場合、あとから指示された作業だからといって、書類Cの確認を後回しにすべきではない。ワークプランをアップデートして、優先順位を「書類Cの確認」>「企画書Aの作成」>「プレゼン資料Bの作成」に設定し直し、企画書Aはいったん切り上げて書類Cに取り掛かるべき。
ワークプランを練り直すなんて面倒だ、仕事を片っ端からこなしていくほうが効率的だ、と思う人もいるかもしれません。ですが、書類Cの確認を後回しにしたせいで慌ててしまってミスをしたり、上司からの指示をすっぽかして信頼を失ったりするよりも、ほんの2、3分使ってワークプランを練り直すほうが、かえって効率的だと言えるはずです。
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企業研修を手掛けるベンチャーマネジメントが、「忙しい、忙しい」を口癖にしている人の20の特徴をまとめています。そのうちの3つがこちらです。
- 本当ならやらなくてもよい仕事を多く抱えている
- 段取りの時間は短く済ませようと考えている
- スケジュールを立てたとしても、トラブルなどで乱れっぱなし
これらはつまり、
- 必要な仕事と無駄な仕事を選別できていない
- 優先順位の見極めを疎かにしている
- 臨機応変にワークプランをアップデートできていない
ということ。まさに今回お伝えした、「仕事が忙しくなってしまう理由」にあてはまるものです。さらに同社は、次のようにも言っています。
『忙しい人』は、「忙しい状態」を甘んじて受け入れてしまっている。
(引用元:ベンチャーマネジメント|忙しいだけの人とできる人 20の違い)
「忙しくてたまらない」とはいうものの大して状況が改善しない人は、心のどこかで「忙しいけど、まあ仕方ないか」と思っているのかもしれませんよ。ぜひ今回お伝えしたことを実践して、今度こそ忙しさから脱する努力をしてみませんか。
(参考)
ITmedia ビジネスオンライン|「今の仕事は5割が無駄」コンサル式働き方改革論
Googleブックス|Think! 2012 Spring No.41 書籍のプレビュー
ダ・ヴィンチニュース|「生産性を上げる」ではなく「生産性を下げる仕事をやめる」
STUDY HACKER|無駄な仕事はとことん切り捨てる! ラクして速く仕事を終わらせるための「捨てる技術」
ベンチャーマネジメント|忙しいだけの人とできる人 20の違い
【ライタープロフィール】
三島春香
神戸大学経営学部所属。京都市立西京高等学校卒業。海、宇宙、音楽、レモンが好き。旅行も大好き。大学生のうちにいろいろな所へ出かけて見聞を広めたい。