なぜか聴き続けたくなるプレゼンには「数字」と「○○」が入っている。

プレゼン成功のカギを前田鎌利さんが語る01

外国人に比べてコミュニケーション能力が劣っているといわれることも多いわたしたち日本人。話下手を自覚し、さまざまな仕事のなかでも特にプレゼンに対して恐怖心すら持っている人もいるかもしれません

そこで、「プレゼンのプロ」にアドバイスをしてもらいました。お話を聞いたのは、その名もずばりの「プレゼンテーションクリエイター」である前田鎌利(まえだ・かまり)さん。現在、年間200社を超える企業を相手にプレゼンの研修や講演を行なっている、まさに「プレゼンのプロ」です。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

先々のステージを想定して未来像を示す

若き日の僕がそうであったように、失敗するプレゼンのひとつの特徴としては「ゴールイメージができていない」ということが挙げられます(『効果音入れすぎ “最悪プレゼン資料” をつくった男は、どうやって「プレゼンのプロ」に成り上がったのか?』参照)。

誰に対して何を伝え、最終的にどんなアクションを取ってほしいのか。もちろん、プレゼンター本人はそのゴールを持てていると思っているでしょう。でも、実際のプレゼンではそれがぼやけていることも多いのです。

そういうケースによく見られるのは、「これが課題です」「これが原因です」「これをやります」と、本来は一連の流れであるべきことが分断されているというもの。決裁者は前に話した内容は意外なほど忘れていくものですから、これでは内容をしっかり伝えられません。しかも、このプレゼンではその先の未来像、つまりゴールも示せていません。決裁者からすると、「それで結局どうなるの?」と聞きたくなるのです。

そうではなくて、これが課題です」「これが原因ですからこう解決します」「するとこの課題がクリアになりますという流れにすれば、決裁者に「そもそもの課題はなんだったか」と思い出させることができる。加えて、「さらにその先にどうしたいのか」ということまで踏み込むべきです。

決裁者から「これをやったらどうなる?」「うまくいったらどうする?」「うまくいかなかったらどうする?」と質問をされたとき、なんのカウンターも用意していなければ、「やってから考えるのか?」なんて思われてしまうでしょう。ビジネスはその場のショットでは終わりません。次のステージ、さらにその次のステージまで想定しておくことが大切です。

プレゼン成功のカギを前田鎌利さんが語る02

聴衆に自分事にさせる「数字」と「質問」の力

同じプレゼンでも、社内で決裁者に向けて行なうプレゼンではなく、不特定多数の聴衆に向けて行なう場合は、また別の視点を持っておく必要があります。

社内の決裁者など特定の人間が対象であれば、その人がどんなタイプでどんな癖を持っているのかということを知っておけば、より的確なメッセージを伝えることができます。でも、不特定多数の聴衆が相手となると、まずは話を聞いてもらわないことにはプレゼンになりません

そのためには、「相手の感情を動かす」工夫が必要です。映画館で100人が100人寝ないで最後まで観られる映画があるとすれば、その作品には映像や音楽、効果音、カット割りなどさまざまな演出が施されているはずであり、それらの演出が観る者の感情を動かすのです。

では、具体的にどうすれば聴衆の感情を動せるのでしょうか。映画でいえば「感情移入させる」ということになるでしょうが、プレゼンにおけるその答えは「相手に自分事にさせる」ということです。

そのための具体的なテクニックをお伝えしましょう。それは、「数字」と「質問」を入れ込むということ。

たとえば、「今期は売上を増やします」というよりも「今期は売上を3倍にします」という。「3倍」という具体的な数字を示されれば、聴衆は反射的に「3倍に? どうやって?」と考え、プレゼンの内容を自然に自分事としてとらえるのです。

また、「質問」にも数字と同じような効果があります。たとえば「みなさんだったらAとBのどちらを選びますか? 手を挙げてください」と質問を投げかけてみる。二択ですから、手を挙げないという選択肢はありません。聴衆は手を挙げれば意思表示をしたことになる。自らの意思を示したその瞬間に自分事になるのです。

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認知心理学に基づいたプレゼンテクニック

ここまでお伝えしたこととは別の視点から、具体的なテクニックもいくつかお伝えしておきましょう。

ひとつは「キーメッセージは13文字以内にする」というもの。人間がひと目で内容を理解できる文字数の上限が13文字だとされているからです。これは「Yahoo!」などニュースサイトのトピックにもいえること。タイトルの文字数が13文字を超えた途端にクリック率が下がるということがわかっているのです。

また、1枚のスライドを20秒以上見せると聴衆は眠気を感じるといわれています。そうさせないためには、文字数が多い文章を見せるべきではありません。そういう点からも「キーメッセージは13文字以内にする」ことが大切なのです。

ふたつ目のテクニックは「プレゼン資料は7±2枚」にするというもの。スライドの枚数を5枚から9枚のあいだに収めるのです。

これは、ジョージ・ミラーというイギリスの心理学者による「人間の短期記憶の容量は7±2」という発見に基づいています。プレゼンがあまりに長いと、最初になにを話したのかを聴衆は覚えていられません。その限界がスライドなら9枚だということです。

もちろん、プレゼンの内容によっては、もっとボリュームが必要な場合もあるでしょう。そういうときは、「補足資料」を用意しておけばいい。プレゼンのあとで聴衆から質問があると思われることを想定して、それに答えられる資料を用意しておき、質疑応答のなかで見せていくのです。

これらふたつのテクニックは、いずれも認知心理学の視点からのものです。心理学のほか、脳科学にもプレゼンに生かせることはたくさんありますから、それらの勉強をすることもおすすめしておきます。

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なによりも「プレゼンを任されるポジション」をつかむ

ただ、プレゼンのスキルを上げようと思うのなら、どんなテクニックを駆使するよりも「実地で学ぶ」ことが重要です。万全の準備をしていたはずなのに、いざプレゼンを始めたら多くの聴衆が眠そうにしていた。あるいは、思ってもいなかった質問が飛んできて返答に窮してしまった……。そんな経験がある人もいるかもしれません。

そういうときに重要となるのは、事前の練習などではありません。プレゼンの練習をすれば流暢に話すことはできるようになるでしょう。でも、その場で起こったことに対して柔軟に対応するための引き出しというものは練習では増やせません

聴衆が寝ているのなら、予定を変えて質問をぶつけてみる。想定外の質問に対してカウンターで切り返す。そういうふうに相手の反応や対応に対してインタラクティブなやり取りをすることがなによりも大切であり、これはもちろん実際のプレゼンの場でしか学べないことなのです。

であるならば、とにかく場数を踏むことが大切です。毎日のようにプレゼンをするという人はそう多くはないでしょう。しかし、そのままでは実地で学ぶことはままなりません。まずは、プレゼンを任されるポジションをつかむ。それこそが大事なのではないでしょうか。

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【前田鎌利さん ほかのインタビュー記事はこちら】
効果音入れすぎ “最悪プレゼン資料” をつくった男は、どうやって「プレゼンのプロ」に成り上がったのか?
最高のリーダーが “たった2分” で決断できるカラクリ。「自分の軸」がないと何も決まらない。

プレゼン資料のデザイン図鑑

プレゼン資料のデザイン図鑑

  • 作者:前田 鎌利
  • ダイヤモンド社
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【プロフィール】
前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年5月5日生まれ、福井県出身。プレゼンテーションクリエイター、書家。株式会社固-KATAMARI-代表取締役。一般社団法人継未-TUGUMI-代表理事。一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事。i専門職大学客員教員予定。サイバー大学客員講師。東京学芸大学卒業後、光通信入社。2000年にジェイフォンに転職して以降も、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)と計17年にわたって通信事業に従事。営業プレゼンはもちろん、代理店向け営業方針説明会、経営戦略部門にて中長期計画の策定、渉外部門にて意見書の作成など幅広く担当。2010年にソフトバンクグループの後継者育成機関であるソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンにて第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンをして数多くの事業提案を承認された他、孫社長が行うプレゼンの資料作成にも参画した。ソフトバンク社内におけるプレゼンの認定講師として活躍したのち、2013年12月にソフトバンクを退社し独立。ソフトバンク、ヤフーなどIT関連企業の他、年間200社を超える企業においてプレゼン研修や講演、資料作成、コンサルティングなどを行っている。著書に『最高のリーダーは2分で決める』(SBクリエイティブ)、『最高品質の会議術』(ダイヤモンド社)、『社内プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)、『社外プレゼンの資料作成術』(ダイヤモンド社)、『プレゼンの資料のデザイン図鑑』(ダイヤモンド社)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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