仕事で成果を出すのに不可欠な「先の先まで見通す力」。磨くには “あのゲーム” が最強だ

西成活裕先生「常にもう1段先を考える多段思考力」01

「仕事で求められる力」にはじつにさまざまなものがありますが、多段思考力という力がそのひとつだと語るのは、『東大教授の考え続ける力がつく 思考習慣』(あさ出版)という著書を上梓した、東京大学先端科学技術研究センター教授・西成活裕(にしなり・かつひろ)先生。多段思考力とはどんな力でありなぜ必要なのか、どうすれば身につけられるのか、詳しく伺いました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「多段思考力」とは、常にもう1段先を考える力

しっかり考えて仕事で成果を挙げようと思えば、多段思考力が欠かせないと私は見ています。多段思考力とは、ひとことで言えば常にもう1段先を考える力のことを指します。

私は一般企業に呼ばれていろいろなプロジェクトに参加することもありますが、そういった場でこの力がある人とそうでない人の違いは一目瞭然。多段思考力がある人の場合、目標達成のためにやるべきことがきちんと見えますから、「では、プロジェクトを進めるにあたって、フェーズを5つに分けましょう」と上るべきステップをきちんと設定できます

一方、多段思考力がない人は、行きあたりばったりなのです。いわば、勢いでなんとかしようとするような人です。どちらがより大きな成果を挙げられるかは考えるまでもないでしょう。行きあたりばったりの人でも、運よくある程度の成果を挙げられることもあるかもしれませんが、多段思考力によって先を見通して段取りを考え、徹底的に準備した人にかなうわけがありません

でも、目標達成までの道のりをただステップに分けることができればいいというものでもない。2、3段のステップを上って諦めてしまっては意味がないですよね。たとえ壁にぶつかってもめげずにどんどんステップを上っていく力、目標達成まで考え続けて上り続ける力も必要です。

つまり、目標達成までの先を見据えてシミュレーションし、その道のりを段取りというかたちでいくつかのステップに分け、さらに目標を達成するまで考え続けられるという総合的な力が、多段思考力と言えます。

西成活裕先生「常にもう1段先を考える多段思考力」02

目標達成まであきらめず考え続けることが最重要

この多段思考力が欠けている人には、どんな特徴や行動例があるでしょうか。私は、「後悔することが多い」のではないかと見ています。

自分としてはきちんと考えたつもりでも、多段思考力が欠けているのですから、目標達成に必要なステップをきちんと踏んでいないということが起きます。そのため、思った結果を出せず、「あれ? こんなはずじゃなかったのに……」と後悔してしまうのです。自分では「これがベストだ」と考えたことにチャレンジした結果、全然うまくいかなかったというような経験がある人は要注意かもしれません。

また、多段思考力については、じつはいわゆる頭のいい人が陥りがちな罠もあります。頭がよくて物事の先の先まで見通せるがゆえに、途中で行く手を阻む壁も見えてしまい、「あ、これは無理だな」と、チャレンジする前にすぐに諦めてしまうということがある。

でも、「宝」はその壁の先にあるかもしれないのです。先まで進んでみなければ本当のことはわかりませんが、その前に諦めてしまっては、宝があろうがなかろうがそれを手にすることは絶対にできません。そう考えると、複数の要素を含む多段思考力のなかでも、目標達成まで考え続ける力がより重要と言えます。

西成活裕先生「常にもう1段先を考える多段思考力」03

複数の思考のステップが求められるゲームが多段思考力を伸ばす

では、どうすれば多段思考力を磨くことができるでしょうか。私からは、「ゲーム」をおすすめします。もちろん、単純なゲームではなく、複数の思考のステップを踏まなければ勝てないようなゲームです。

将棋などはその典型でしょう。将棋は、相手との先の読み合いであり、多段思考力が直接問われるゲームです。3手先しか読めない人と20手先まで読んでいる人のどちらが強かは、言うまでもありません。

ただ、先にお伝えしたように、いくら物事の先の先まで見ることができたとしても、目標達成まで考え続けるという力が欠けていては、本当の意味での多段思考力が身についているとは言えません。その力を磨くため、みなさん自身が「本気で取り組める」ゲームをすることが大事です。好きで本気で取り組めるものなら、楽しみながら考え続けることができるでしょう。

私の場合、競馬がそれにあたります。競馬の勝ち負けを読むには、それぞれの出走馬の体重の増減やその日の馬場の状態など、さまざまなファクターを考慮しなければなりません。そして、どのようなレース展開になるかと、何段も先まで読む必要もあります。もちろん、私のなけなしのお小遣いを使いますから、それこそ本気です(笑)。だからこそ、考え続けることができます。

みなさんも、私にとっての競馬のような、複数の思考のステップを踏まなければ勝つことが難しく、かつ本気になって取り組めるゲームを探して熱中してみてください。それによって身につけた多段思考力が、きっと仕事においても大いに役立つはずです。

西成活裕先生「常にもう1段先を考える多段思考力」04

【西成活裕先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
とことん頭を使える人がもつ「7つの考える力」。特に社会人が高めるべきは “この2つ”
東大教授が説く。思考力が乏しくて失敗しがちな人には「これ」が見えていない

【プロフィール】
西成活裕(にしなり・かつひろ)
1967年1月8日、東京都生まれ。東京大学先端科学技術研究センター教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了、博士(工学)の学位を取得。その後、山形大学、龍谷大学、ドイツ・ケルン大学理論物理学研究所を経て現職。ムダどり学会会長、MUJI COLOGY!研究所所長などを併任。専門は数理物理学。さまざまな渋滞を分野横断的に研究する「渋滞学」を提唱し、著書『渋滞学』(新潮社)は講談社科学出版賞などを受賞。2007年JSTさきがけ研究員、2010年内閣府イノベーション国際共同研究座長、文部科学省「科学技術への顕著な貢献2013」に選出、東京オリンピック組織委員会アドバイザーにも就任している。日本経済新聞「あすへの話題」連載、日本テレビ「世界一受けたい授業」に多数回出演するなど、多くのメディアでも活躍している。近著に、『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!』『東大の先生! 文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』(ともにかんき出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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