集中するには23分必要なのに、11分に1回は邪魔が入る。本当に集中したければ「この3つ」を厳守せよ

井上一鷹さん「集中できない要因」01

仕事を効率的に進めるには、「集中」することが重要であることは言うまでもありません。でも、「集中が続かない……」と悩む人が多いのも事実です。特に、コロナ禍の影響により在宅ワークになったことで、そんな悩みを抱えている人が増えているとも言われます。

集中できない要因はどこにあり、どうすれば集中できるのか——。「集中」についての研究を行なう、株式会社Think Lab取締役の井上一鷹(いのうえ・かずたか)さんが解説してくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

95%の人が集中できない場所は「オフィス」

「オフィスではなかなか集中できない……」。そんな悩みを抱えている人はいませんか? それもそのはず、私が取締役を務める株式会社Think Labでは「集中」についてさまざまな研究を行なっており、じつは95%もの人の最も集中できない場所こそ、自分が所属している会社のオフィスだという調査結果があるのです。

その理由はとてもシンプルなもの。集中を阻害する因子にはいろいろなものがありますが、そのなかでも特に大きなもののひとつが「同僚」です。オフィスにはたくさんの同僚がいるのですから、オフィスでは集中できないのも当然と言えます。

集中をどう定義するかにもよりますが、私たちが言う深い集中状態に入っていくには、「よし、集中しよう!」と思ってその状態に至るまでに23分かかるもの。それなのに、11分に1回のペースで同僚から話しかけられたり、メールやチャットが届いたりすることが私たちの調査でわかっています。その都度、集中状態に至るプロセスが止められるわけです。同僚は同じミッションに向かって働いているわけですから、話しかけたりメールやチャットを送ったりする理由が無限にあります。これでは、なかなか集中できないのもうなずけますよね。

かといって、在宅ワークなら問題ないかというと、そうではありません。オフィスから離れて同僚と直接話すことがなくなった結果、会話であればひとことで済んでいたことも、メールやチャットでは細かいニュアンスを伝えるためにやり取りが増えるというケースもあるでしょう。そのため、11分に1回を上回るペースでメールやチャットのやり取りをしている人もいるかもしれません。

さらに、自宅の場合にはオンとオフの切り替えが非常に難しいということもあります。オフィスに通勤していたときなら、通勤するその数十分のあいだに、習慣として仕事に対する集中状態に入れていました。しかし、自宅ではそうはいかない。家事をしたりくつろいでいたりした次の瞬間に集中しなければならないからです。そのため、在宅ワークでは特に集中の「立ち上げ」に苦労している人が多いようです。

井上一鷹さん「集中できない要因」02

脳には「マルチタスク」はできない

また、もしかしたらみなさんの仕事の進め方も、集中できない、集中が持続しない要因になっているかもしれません。人手不足によってひとりあたりの仕事量が増えているとも言われているいま、メディアを通じてマルチタスクを奨励するような主張を見聞きすることもあります。

でも、集中という観点からすると、マルチタスクは完全にNGの行為です。なぜなら、脳は複雑な課題を同時に並列処理できないことがはっきりと証明されているからです。つまり、脳はシングルタスクしかできないわけです。

このことは、メールやチャットの扱い方にも関わります。先に集中を阻害する特に大きな因子として「同僚」を挙げましたが、じつは「スマートフォン」も同様に集中を阻害する大きな因子です。

スマートフォンにメールやチャットの通知が常に届くように設定していたら、集中しづらくなるのは当たり前。目の前の仕事を進めているのに、届いたメールやチャットに対応しようとするマルチタスクによって、集中が阻害されるわけです。

そう考えると、しっかりと集中するためにやることが見えてきます。まずは、同時にふたつの仕事を進めようとするマルチタスクを避け、ひとつずつ目の前の仕事に集中するシングルタスク化を図ることを意識しましょう。

そして、オフィスにおける同僚やスマートフォンによる集中の阻害を避けるために、チームのなかでルールを決めてほしいのです。そのルールとは、「集中しているときはスマートフォンの通知を切って裏返す」「スマートフォンを裏返している人には話しかけてはいけない」というものです。これだけで、集中を阻害する特に大きな因子である同僚とスマートフォンの両方をクリアすることができます。とてもわかりやすく、手っ取り早い方法だと思いませんか?

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在宅ワークでは、「仕事だけに集中する場所」を決める

また、在宅ワークではオンとオフの切り替えが難しいために、特に集中の「立ち上げ」に苦労している人が多いとお伝えしました。その理由は、かつての通勤という集中状態に至るための習慣や時間がなくなったことのほか、「場所」ごとの「目的」が明確でないことにもあります。

不眠症の人が、眠れないのにベッドにずっといると、「ベッドは眠れない場所だ……」と認識してしまい、ますます眠れなくなるという現象があります。それと同じように、普段リラックスしている場所で仕事に集中しようとしても、「ここはリラックスする場所だ」と認識しているために、集中しづらいのです。

また、そういうことを繰り返していると、脳が「ここはリラックスする場所なのか、それとも集中する場所なのか……?」と混乱してしまい、リラックスも集中もしづらい場所になってしまいかねません。わざわざ自宅を居心地の悪い場所にしようとしているのです。

そんな事態を避けるため、自宅のなかで「仕事だけに集中する場所」を決めましょう。そう決めた場所で仕事だけをしていれば、脳の学習効果によって、その場所に行けば自然と楽に集中できるようになります。

もっと言うと、パソコンやスマートフォンといったデバイスも、仕事用とプライベート用に分けることもおすすめしておきます。それらのデバイスは、ゲームもできれば仕事もできる、マルチパーパスのものです。そのため、同じデバイスでゲームも仕事もしていると、場所の使い方と同じように、脳が混乱して集中しづらくなるのです。多少の投資が必要ですが、新たにデバイスを購入して、仕事用とプライベート用に分けてください。しっかり仕事に集中できるようになるのなら、そんな投資は安いものです。

井上一鷹さん「集中できない要因」04

【井上一鷹さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「デキる人=〇〇を楽しめる人」はたった2割。8割のデキない人にならないために、高めるべき力
集中のプロが厳選「超集中テクニック」5つ。深い集中のために “これ” を視界に取り入れて

【プロフィール】
井上一鷹(いのうえ・かずたか)
1983年、東京都生まれ。株式会社ジンズ執行役員。JINS MEME事業部事業統括リーダー兼株式会社Think Lab取締役。慶應義塾大学理工学部卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心に事業・技術経営・人事組織戦略の立案に従事後、株式会社ジンズに入社。MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。商品企画部マネジャーを経てJINS MEME事業部統括、その後、ワークスペース事業Think Labを立ち上げ取締役となる。Newspicksプロピッカー(キャリア・教育関連)。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。著書に『深い集中を取り戻せ 集中の超プロがたどり着いた、ハックより瞑想より大事なこと』(ダイヤモンド社)、『集中力 パフォーマンスを300倍にする働き方』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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