「根気が全然ない人」に足りないのは “あの脳内物質” だった。5つの朝習慣で執念深さが手に入る。

科学的に根気をつくり出すコツ -01

根気」とは、物事を途中で投げ出さず、飽きずに長くやり続ける、心と体の活動力のこと。最新の研究では、粘り強い行動に、わたしたちがよく知るホルモン・神経伝達物質が関係していると分かりました。

そこから見出した、「科学的に根気をつくり出すコツ」を紹介します。

根気は必要なのか?

経営コンサルタントの小宮一慶氏いわく、「習慣力は根気と関係ない」とのこと。続けやすい環境づくりこそが、習慣力の大きな要素であるからです。

一方で、アル・ゴア元副大統領のスピーチライターを務めていた作家のダニエル・ピンク氏は、ミネアポリス・カレッジ・オブ・アート&デザインの2008年度卒業式スピーチで、才能はあるけれど、根気のない人間が世の中にはあふれていると述べ、根気・執念がいかに大切であるかを説いています。

同氏はあるとき、非凡な才能をもつ人々が取り残されていくなか、才能はそこそこでも、毎日ひたむきに、楽しみながら仕事に取り組んでいる人たちが活躍していると気づいたそう。

ピンク氏は、どんな分野においても「執念は才能に勝る」と力説し、「根性の見返りは大きい」と繰り返します。

また、免疫を利用した癌治療法の発見で、2018年のノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑・京都大特別教授は、「アカデミア(学究的世界)から生まれた良い種は、必ず生かされるものなので、研究者は根気強く説明し続けなければならない」と伝えています。

目標を達成したいなら、成功を手にしたいなら、やはり根気・執念は必要かもしれません。

科学的に根気をつくり出すコツ -02

脳の海馬が根気の邪魔をする?

すると最近、興味深い研究が発表されました。

慶應義塾大学の田中謙二准教授ら研究グループは、マウスを用いた実験で、目標を達成するまで根気強く行動し続けるためには、脳の「腹側海馬」の活動低下が必要不可欠だと明らかにしたそうです(2019年4月15日(英国時間)に神経科学分野の専門誌『Nature Neuroscience』オンライン版に掲載)。

不安が高まると活性化するマウスの「腹側海馬」は、ヒトの「海馬前部」にあたります。この領域は、情動(喜怒哀楽の行動)を伴う記憶の形成に深くかかわるとのこと。

意欲行動の背景には、以下の2ステップがあります。

(1)目標を設定して一歩を踏み出す
(2)目標を達成するまで行動を継続

(1)に関しては、2017年に田中謙二准教授ら研究グループが、脳の外側にある「やる気ニューロン」の活動増加と、内側にある「移り気ニューロン」の活動低下が必要であることを見出しています。(2)のメカニズムについては、まだ解明されていなかったため、この研究を行ったのだとか。

その結果、根気強く行動を継続しているあいだは、「腹側海馬」の活動が“抑制されている”と分かったそう。逆に、挫折して目標が未達成の場合、「腹側海馬」の活動抑制が“解除”されていると分かったとのこと。

実験では、マウスが時間内にレバーを設定回数押すことができれば、エサを獲得できるようにしたそうです。レバーを押し続ける根気が続かないと制限時間になってしまうため、目標が未達成になるというわけです。この繰り返しで成功確率を出し、根気を評価したとのこと。

その際に、「腹側海馬」を人為的に興奮させると成功確率が 95%から 80%へ低下活動を抑制すると成功確率が上昇したそうです。

科学的に根気をつくり出すコツ -03

根気にはあの幸福ホルモンが必要?

田中謙二准教授ら研究グループは、セロトニンの神経核が活性化し、海馬で放出されたセロトニンが、受容体を介して海馬の神経細胞を抑制することも見出しました。

つまり、目標達成に向けて行動を持続する脳内メカニズムが、セロトニンによる「腹側海馬」の活動抑制であることが示されたわけです。根気の継続は、セロトニン神経の活性化でもたらされるということ。

セロトニンといえば、「幸福ホルモン」として知られる物質。アドレナリンやドーパミンが暴走しないよう調節し、神経伝達物質としても働いています。不足すると目覚めが悪くなり、感情にブレーキがきかなくなって、平常心が保てなくなるのだとか。自律神経のバランスも悪くなるといいます。

不安にかかわる「腹側海馬」が活動を低下させているときは、いわゆる安心している状態。これは、一般的に知られるセロトニンの効果と合致します。

「不安があると集中できない」「安心している状態であれば、根気よく物事を続けられる」といったことは、わたしたちの経験上でも知り得ることですが、この研究で、脳神経細胞のメカニズムを解明した、科学的根拠が示されたということです。

科学的に根気をつくり出すコツ -04

ドーパミンとセロトニンに必要なこと

田中謙二准教授らによる今回の新しい研究成果が加わったことで、意欲行動はそれぞれ以下が制御すると明らかになりました。

・目標を設定して一歩を踏み出す【やる気】:腹側線条体とドーパミン神経
・目標を達成するまで行動を継続【根気】:腹側海馬とセロトニン神経

やる気と根気では、かかわる脳領域や神経細胞が異なるわけです。

やる気】に必要なドーパミンは、ご褒美を用意したり、好きな音楽を聴いたりすると、分泌されるといいます。

根気】に必要なセロトニンの場合は、以下の行動で増えるとのこと。

・必須アミノ酸のトリプトファン(大豆・豆製品、乳製品など)と、ビタミンB6(玄米や小麦胚芽、牛、豚、鶏のレバー、マグロや鰹の赤身など)を摂取する。
・適度に日光を浴びる
・適度な運動を行う
・しっかりと朝食をとる
・しっかりと咀嚼する

天気のいい日、リラックスした気持ちで朝日を浴びながら、出勤がてらウオーキングを楽しむのも効果的です。休日なら、美味しいモーニングを目的に、朝早く散歩するのもおすすめですよ。

科学的に根気をつくり出すコツ -05

根気強くなるために、環境も整えよう

なお、経営コンサルタントの小宮一慶氏が述べた、習慣力の大きな要素となる「続けやすい環境づくり」は、「安心を生み出す」ことにも通じます。

目標を達成するために物事を継続的に行おうとしたとき、環境が整っていなければ、それは確実に不安要素となるでしょう。したがって、実は

整った環境づくり――安心――根気強さ――目標達成
整った環境づくり――習慣力が身につく――目標達成

と、観点や捉え方は違うけれど、根気と習慣力は、遠い親戚のような関係かもしれませんね。

***
科学的に根気をつくり出すコツを紹介しました。科学的根拠も示されたことだし、堂々と幸福感でいっぱいになりながら、成功をつかんでしまいましょう!

(参考)
小宮一慶著(2018),『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』,ディスカヴァー・トゥエンティワン.
慶應義塾|「根気」(こんき)を生み出す脳内メカニズムの発見-粘り強さは海馬とセロトニンが制御する-|190416-1.pdf
慶應義塾|柔軟な行動選択を行う脳内メカニズムの発見-目標行動を抑制する脳領域機能の一端を解明-
ログミーBiz|「世界は才能があっても根気のない人間だらけ」副大統領のスピーチライターが“執念”の大切さを説く 
時事ドットコム|ノーベル受賞者の“願い”を生かせるか 
東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-|空間的記憶や情動的記憶をつかさどる海馬を中心とした神経ネットワークの解明
大原薬品工業|「けんこう名探偵」- ワン太郎が教える「健康のヒミツ」vol.1(1)- 
STUDY HACKER|やる気のもと「ドーパミン」を脳内で増やす4つの方法。“やる気が出ない” は科学的に改善可能。 
一般財団法人 脳神経疾患研究所 総合南東北病院【地域がん診療連携拠点病院・地域医療支援病院】|心の安定 セロトニンを増やす方法

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