当てはまったらマズい! 生産性を下げる「4つの間違った怒り方」

戸田久実さんインタビュー「4つの間違った怒り方」01

ビジネスシーンでも、「アンガーマネジメント」という言葉をよく見聞きするようになりました。「怒りと上手に付き合う」ためのメソッドであるアンガーマネジメントですが、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事である戸田久実(とだ・くみ)さんによれば、「アンガーマネジメントができているかどうかで生産性が大きく変わる」そう。その理由を、「間違った怒り方」とともに教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

怒りとうまく付き合えないと、生産性が大きく下がる

よく勘違いされるのですが、「アンガーマネジメント」とは、「怒らない人間になろう」といったものではありません。程度の違いこそあれ、怒りという感情はどんな人でももつ感情だからです。アンガーマネジメントとは、そんな誰もがもってしまう感情である「怒りと上手に付き合うための心理トレーニング」なのです。

このアンガーマネジメントはあらゆる人にメリットをもたらしますが、なかでもビジネスパーソンには非常に有益なもの。なぜなら、アンガーマネジメントによって仕事の生産性を上げることができるからです。

逆に言えば、きちんと怒りと付き合えないと生産性が下がるということ。たとえば、いつもイライラして仕事で関わる周囲の人に八つあたりをしていたとしたらどうでしょう? 人間関係が悪くなり、チームや取引先との報連相が滞るといったことが考えられます。それでは、生産性が上がるはずはありません。

ほかにも、リーダーなど組織のなかで力をもっている人が頻繁に部下を怒鳴りつけていたとしたら? 部下たちはリーダーの顔色をうかがったり、萎縮したりしてしまうでしょう。そんな組織では当然ながら生産性は上がりませんし、新しい仕事の発想を生む気力やモチベーションも上がりませんよね。リーダーの怒りによって、その組織は成果を挙げにくい組織になってしまうのです。

戸田久実さんインタビュー「4つの間違った怒り方」02

自分のなかの「こうすべき」を伝える「適切な怒り方」

また、怒りに限らず感情には「周囲に伝染する」という特徴があります。リーダーのような立場が上にある人が常にイライラしていたなら、部下たちも「どうして上司はいつもイライラしているんだろう……」なんて考えてイライラしてしまうことになるのです。

そう考えると、組織のなかで大きな力をもっている人にとっては、特にアンガーマネジメントが重要になってきます。もちろん、先にもお伝えしたように、「怒らない人間になろう」などと考える必要はありません。怒りを感じたなら、「適切な怒り方」を意識すればいいのです。

怒りが周囲に悪影響を与えるのは、先に例として挙げた「どうして上司はいつもイライラしているんだろう……」と思うといった具合に、「どうして怒っているのかがわからない」場合がほとんどです。そして、怒りを感じるその背景には、「締め切りは厳守すべき」「自己判断をせずに相談すべき」などのような、自分のなかの「こうあるべき」という要素があります。

だとしたら、「私はこういう理由で怒っている」「だからこうしてほしい」というふうに、「こうあるべき」を含めて「リクエスト」として怒りを表現すればいいだけのこと。それこそが、適切な怒り方です。

戸田久実さんインタビュー「4つの間違った怒り方」03

「適切ではない怒り方」チェックリスト

それでは、逆に適切ではない怒り方とはどんなものでしょうか? みなさんのなかに、次のような怒り方をしてしまっている人はいませんか?

戸田久実さんインタビュー「4つの間違った怒り方」04

これらが、「適切ではない怒り方」です。1つめはものにあたる。機嫌が悪くなるとドアを力いっぱい閉めるようなこと。2つめは他人に対して攻撃的な言動をする。手を上げることはもちろんですが、「おまえは本当にバカだな」「使えないな」といった人格攻撃のような言葉も含まれます。3つめは過去のことを蒸し返す。相手が完全に忘れてしまっていることを、突然思い出して怒り始める人もいますよね。

こういった怒り方をしては、怒っている理由や「こうしてほしい」ということは周囲に伝わらないですし、それこそ、怒りが伝染して周囲の人も怒らせてしまうことにもなりかねません。

最後の「適切ではない怒り方」が自分を責めすぎるです。自分を振り返るのは悪いことではありません。たとえば、「どうしてあんなミスをしてしまったんだろう」と自分を振り返り、「だったら今度はこうしよう」というふうに改善策を考えられれば、自分をいい方向に導くことができます。

ただ、「自分を責めすぎる」ことはよくありません。自分を責めすぎた結果、身体に悪いとわかっているのにイライラしてお酒に依存し、身体に不調をきたしたり、自律神経のバランスを崩したり、なかには自傷行為に走ってしまう人もいます。そうなると、すぐに病院で診療を受ける必要がある。そんな状態では、生産性を上げるどころではありませんよね。特にまじめな人には自分を責めすぎる傾向があります。この記事を読んでくださっている勉強熱心でまじめなみなさんは、ここまでのことをインプットしてもらい、いいアンガーマネジメントができるようになってほしいと思います。

戸田久実さんインタビュー「4つの間違った怒り方」05

【戸田久実さん ほかのインタビュー記事はこちら】
あなたがいつも怒ってばかりなのは “○○” を言語化できていないから。
常にイライラしている厄介なあの人には、こう対処するのが正解だ!

アンガーマネジメント (日経文庫)

アンガーマネジメント (日経文庫)

  • 作者:戸田 久実
  • 日本経済新聞出版社
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【プロフィール】
戸田久実(とだ・くみ)
アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役。一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事。立教大学文学部卒業後に大手企業勤務を経て、2008年にアドット・コミュニケーション株式会社を設立。研修講師として、銀行、製薬会社、総合商社、通信会社など大手民間企業や官公庁で「伝わるコミュニケーション」をテーマに研修や講演を実施。対象は新入社員から管理職、役員までと幅広い。アンガーマネジメントやアサーティブコミュニケーション、アドラー心理学をベースとしたコミュニケーション指導に定評があり、これまでの指導人数は22万人に及ぶ。近年は、大手新聞社主催のフォーラムへの登壇やテレビ、ラジオ出演など、さらに活動の幅を広げている。『一瞬でいい関係を築く コミュニケーション大百科』(かんき出版)、『働く女の品格 30歳から伸びる50のルール』(PHP研究所)、『「つい怒ってしまう」がなくなる 子育てのアンガーマネジメント』(青春出版社)、『誰とでも気軽にうちとける自分になれる本 気持ちのいい関係をつくる「話し方」「つき合い方」』(三笠書房)、『苦手意識がなくなる会話術』(大和書房)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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