「運動不足」は脳を退化させる可能性。夜30分の “あの運動” で今すぐ解消を。

社会人の運動01

「最近、運動不足で太ってきた」
「忙しくて運動する暇なんてない」

このように嘆いているビジネスパーソンは要注意。体を動かさないことによるデメリットは、肥満になることだけではありません。運動不足は脳の退化、記憶力の低下など、さまざまな悪影響を生じさせ、仕事に致命的なデメリットを与えている可能性だってあるのです。

以下で詳しくご紹介しましょう。

運動不足は「脳を退化させる」

多くのビジネスパーソンは、1日のなかで何時間も、パソコンとにらみ合いをしているのではないでしょうか。大量の情報を浴び、オンラインで常にやり取りをしているため、一見活動的にも思えますが、それはまったくの間違い。肉体はほとんど動いていないため、一点を眺めて座ったまま1日を過ごしている状態といっても過言ではありません

関西福祉科学大学教授・理学療法士の重森健太氏によると、このような “動かない毎日” を送っていると、脳が徐々に退化してしまうのだそう。

ずっと近くの変わり映えのないものばかり見ていると、脳に刺激が伝わらず、使わない部分がどんどん萎縮していきます。あらゆること、ものが効率化され、何をするにも便利になった現代では、普通に生活していては体も脳も衰えていく一方。意識的に体を動かさなければ、気がついたときには使い物にならない脳になってしまう可能性だってあるのです。

重森氏は、脳を効果的に鍛えるために、「1日20~30分 × 週3回 × 3カ月のランニング」をすすめています。デスクワークの多いビジネスパーソンは、脳の健康のため、意識的に運動しなければいけないのです。

「自分は大丈夫」と高をくくっている人も要注意。今は「大丈夫」でも、20年後に悪影響が生じる可能性があります。ボストン大学医学大学院のニコール・スパータノ氏の研究によると、運動不足は脳の老化を早める原因になり、現在の運動不足が20年後の脳細胞を減少させると考えられているそう。

脳が萎縮すると、認知能力が低下したり、認知症のリスクが上がったりするなどの悪影響が生じます。今は何の支障もなくバリバリ働けている人でも、運動をおろそかにしていると、数十年後に多大な「ツケ」が回ってくるかもしれません。

スパータノ氏によると、運動の習慣がついていれば、いずれ脳の老化を遅らせる効果が現れるのだそう。予防という観点で、今から体を動かす習慣を作りましょう。

社会人の運動02

運動で「記憶力が上がる」

脳の老化を防ぐ以外にも、運動にはメリットがあります。世界的な脳研究者であるアンダース・ハンセン氏によると、運動には記憶力を強化する効果があるのだそう。

「私たちの脳細胞は、毎日驚くべきペースで死んでいる」とハンセン氏は語ります。25歳を過ぎると、脳細胞は1秒あたり10万個のペースで死滅しているのだそう。しかし、運動をすることによって、脳細胞が死んでいくスピードを遅らせることができるのです。

体を動かすと、脳内で「BDNF」という物質が分泌されます。このBDNFは、脳細胞が死んだり、傷ついたりすることを防いでくれるのだとか。また、脳の細胞間のつながりを強くし、記憶力や学習能力を上げる効果もあるのだそう。さらには細胞を生まれ変わらせ、新しく生まれた細胞の生存もサポートしてくれるといいます。

ハーバード大学医学部の博士であるジョン・J・レイティ氏も、運動は脳の神経細胞や、脳に栄養を送る血管の形成を促すと述べています。レイティ氏は、脳を育てる運動として、心拍数を一定時間上げるタイプの運動を勧めています。例として挙げられているのは、早足でのウォーキングやランニング、エアロビクスやエアロバイクなどです。

最大心拍数の75.90%まで上がる運動を短めに週2回、65.75%までの運動をやや長めに週4回行なうのが、脳にとって理想的なのだそう。目安として、きつめの全力疾走をしたときは最大心拍数に対して80%以上、やや息が上がる走り込みは70%程度になります。

社会人の運動03

運動で「メンタルが強くなる」

さらに運動には、メンタルを強くしてくれるという効果もあります。メンタルが強くなれば、ストレスが溜まりにくくなりますよ。

仕事で精神的にストレスを抱えているビジネスパーソンは多くいますよね。2019年にチューリッヒ生命がビジネスパーソン1,000人を対象に行なった調査によると、ストレスを抱えている回答者の割合は8割近くに達し、過去3年で最高値を記録しました。

ストレスは、抽象的な思考や集中力、ワーキングメモリーなどにかかわる前頭前野の力を弱めます。心身の健康のみならず、脳の機能まで損なう、恐ろしいものなのです。

運動は、そんなストレスの解消にも役立ちます。体を動かしたあとに、気分がすっきりしたり、憂鬱な感情が軽くなったりした経験がある方も多いのではないでしょうか。運動でストレスを解消できるのには科学的な根拠があるのです。

プリンストン大学の研究によると、運動によって、脳の不安を制御する領域が変化し、興奮が鎮まるのだそう。運動は不安な感情をコントロールしてくれるのです。

また、デューク大学のジェームズ・ブルメンソール氏の研究によると、運動はうつ病にも効果があるのだそう。ブルメンソール氏は、うつ病患者を「運動と薬物治療を組み合わせたグループ」と、「薬物治療のみのグループ」に分けて観察しました。その結果、「薬物治療のみのグループ」のうつ症状の発現率が38%だったのに対し、「運動を組み合わせたグループ」は8%となったそう。

ストレスがたまっているビジネスパーソンこそ、積極的に体を動かすことが必須だといえるでしょう。

社会人の運動04

運動が苦手な人には「夕食後のウォーキング」がおすすめ

仕事が終わり、家に帰ってすぐにソファに寝転びたくなる人は要注意です。ダラダラすることによって、余計に疲労がたまる可能性があります。

順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏によると、特にデスクワークに従事する人が1日の終わりに感じている肉体疲労は、うっ血によるものなのだそう。動かないせいでたまった疲れを動かずに解消するのは難しいのです。運動はハードルが高いという人は、夜の散歩から始めてみてはいかがでしょう。

小林氏は、夕食後から寝る1時間前までの間で、30~60分ほどウォーキングすることをすすめています。軽い運動によって血流が良くなり、動かないよりも疲れがとれるのです。さらに、ウォーキングをしながら「呼吸」も意識すれば、副交感神経を活性化する効果も得られます。

呼吸は特に吐く息が重要になります。1で吸って、2で吐く、吐くほうを長くします。ゆっくり1数える長さで息を吸い、その倍の時間をかけて吐くだけです。これは息を吐くときには頸部(首・のどのあたり)にある受容体が反応して、それが自律神経を刺激して副交感神経を高めるからです。

特に日中、仕事の緊張により交感神経が高ぶっている人は、ウォーキングによって副交感神経を活性化させてリラックスするのがオススメです。さらに、血流がよくなるため眠りの質も上がり、肩こりや腰痛・首の痛みなどが軽減される効果も期待できますよ。

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「疲れているから運動なんてできない」という人は、逆に、運動不足が原因で疲れやすい体になっているのかもしれません。仕事をもっと頑張りたいという人こそ、体を動かす工夫をしてみてください。

(参考)
東洋経済Online|物覚えの悪い人が知らない記憶のカラクリ
東洋経済Online|仕事がデキる人は走りながら脳を鍛えている
All About|夜のウォーキングで自律神経バランスを整える
Newsweek|中年の運動不足が脳の萎縮を促す
The Atlantic|For Depression, Prescribing Exercise Before Medication
日本医療・健康情報研究所|運動はメンタルヘルスにも効果的 運動が不安やうつ状態を改善
プレジデントオンライン|脳細胞が増える運動「3つの条件」
PR TIMES|2019年ビジネスパーソンが抱えるストレスに関する調査
東邦大学|ストレスと脳

【ライタープロフィール】
Yuko
ライター・翻訳家として活動中。科学的に効果のある仕事術・勉強法・メンタルヘルス管理術に関する執筆が得意。脳科学や心理学に関する論文を月に30本以上読み、脳を整え集中力を高める習慣、モチベーションを保つ習慣、時間管理術などを自身の生活に取り入れている。

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