なぜ優秀な人はメモを取りまくるのか? こだわりの “2冊持ち” で得られるメリットがすごい。

指導者のメモ01

ビジネスやスポーツの世界には、多くの優秀な人材を育て上げた「一流の指導者」が存在します。彼らが的確な指導を行なうことができた要因が、手書きのメモにある場合が多いことをご存知ですか?

社会人になり年月が経過すると、教えられる立場から教える立場へと変化してゆくもの。これから人材の育成を担当される方は、一流指導者のメモ活用術を参考にされてはいかがでしょうか。

(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)

指導者はメモをひんぱんに取る

プレジデント社が行なった調査によると、企業の指導者側であるエグゼクティブ層(役員)サラリーマン層(労働者側)では、メモの活用方法に明確な違いがあることが判明しました。エグゼクティブ層の多くが1日5回以上メモを取り、それをひんぱんに読み返す傾向がある一方、サラリーマン層はメモをあまり取らず、取ったとしても読み返さない傾向があるようです。

実際に、JR九州の唐池恒二会長SHOWROOMの前田裕二社長LIXILの創業者・潮田健二郎氏など、多くのエグゼクティブ層がメモを「仕事の大切なツール」と称しています。

私はメモ魔だ。当社の社員にも「メモ魔になるべし」と奨励している。

(引用元:DIAMOND Online|メモをとるサラリーマンが出世する理由

また、サラリーマン層はシステム手帳や三色ボールペンを好み、その場にいつも使っている手帳がなければメモを取らないなど、形式にこだわりがちな一方で、エグゼクティブ層はノートやメモ帳がなければコピー用紙や資料の裏にもメモを取る傾向にあるのだそう。 指導者になる人物は、とにかくメモを積極的に行なう傾向があるのです。

仕事や会議の場において、その場では覚えたつもりでも、重要な事がらを失念してしまうことは多々あります。詳細な内容を完全に把握するためには、メモを取ることが最良の方法です。優れた指導者になりたければ、同僚や部下のデータをメモに取り、把握しておく必要があると言えるでしょう。

指導者のメモ02

メモは2冊を使い分ける

では、実際に指導者たちのメモ活用法を見てみましょう。マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、現在は優秀な人材を育てることを目的とした「ラーンネット・グローバルスクール」を運営する炭谷俊樹氏は、小さいメモ帳と方眼ノートの2つを愛用しているのだそう。

炭谷氏のメモの使い方は次の通りです。アイデアを思いついた際には、小さなメモ帳にどんどん書き込んでいきます。そして、メモの内容をもとにして思考を展開したり、メモに書いた情報を整理したりするときには、方眼ノートに書き込んでいくのだそう。

自分のメモを見返したときに、情報が雑然としていて見づらい思いをしたことがある方は、多いのではないでしょうか。皆さんも、アイデアや改善点などの整理されていない情報をメモするときはメモ帳に、アイデアを広げたり情報を整理したりするときには大きめのノートに……。といった具合に使い分けることで、後から情報を見やすくなりますよ。

また、スクールの指導者となった炭谷氏は、自身が記したメモをスタッフにも見せることによって、考えや価値観、向かうべき方向を共有しています。組織に所属するビジネスパーソンは、必要な情報はメンバーと共有することによって、組織の運営が円滑になる可能性が高いでしょう。

指導者のメモ03

あらゆるデータを記してマニュアル化する

元プロ野球監督の野村克也氏「メモを取る選手は大成する」を持論としています。

野村氏がメモの重要性を知ったのは、プロ野球選手時代に同じチームに所属していた外国人選手から、「塁上に出た走者の位置に応じて打球を飛ばす方向を変える必要がある」という話を聞いたときだったのだそう。

このような考えは現在では常識になっていますが、当時としては画期的でした。その後、野村氏はメモを使用して、捕手として受けた投手の投球内容を詳細に記録し、データ分析を行なうようになります。

監督時代の野村氏は、メモを駆使して選手たちにプレーのマニュアルを徹底的に教え込みました。パワーやスピードなど選手個人の能力は才能で決まる面がありますが、例えば、速球が得意な打者に対し投手が変化球を投げ込むといった駆け引きは、努力すれば誰でも実行できます。野村氏はデータを駆使することにより、弱小だったチームを3度の日本一に導きました

職場でも、事務職ならばパソコンソフトのシステム、製造業なら製品の組み立て方など、仕事の方法を詳細にマニュアル化すれば、経験の浅い社員でも比較的スムーズに順応できるでしょう。その際には、「○○の作業と××の作業を同時に進めると効率が良い」「△△という機能を使うと数値を自動で入力することができて時短になる」といった、長年仕事を続ける中で身についた知識や、マニュアルに記載するようなことではないように思える暗黙知などもメモとして共有することがおすすめです。そうすることで経験の浅い社員も、熟練社員と同じような効率の良さで仕事を進めることができ、ミスや無駄な時間の削減に繋がります。

また、データ化することで非効率な作業も見つけやすくなります。システムを簡略化する、分担して作業するルールに変えるなどの改善策を加えることによって飛躍的に効率化する可能性も上がるでしょう。

「弱いチームが強いチームに勝つ」ためのメモ活用術は、ビジネスにも転用できるのです。

指導者のメモ04

現場のデータを書き込む

強豪・新潟明訓高校サッカー部の監督を務める田中健二氏は、ノートを用いて左ページに練習内容や選手たちに伝えるコンセプト、右ページには試合中に気づいたことを書き込んでいるそうです。

田中氏は、タブレットやパソコンを使用する指導者が増えているにもかかわらず手書きのメモにこだわる理由について、次のように話します。

書く行為は脳を活性化させ、自分を落ち着かせ、さらに記憶に残りやすいと感じているのです。

(引用元:ベースボール・マガジン社Web|ノートに記録し、育成に活かす。新潟明訓・監督のデータの取り方

実際に、2014年にアメリカのプリンストン大学とカリフォルニア大学が行なった実験によると、同じ講義の内容をパソコンで記したグループに比べ、手書きで記したグループの方が良い成績をおさめたという結果が出ています。手書きでメモを取る場合には、聞いた内容を要約したり図示したりといった前処理が必要となるため、結果的に脳が活性化されるのだそう。

また、田中氏曰く、自身のノートを見返して何も書かれていないことがあるそうです。その余白から、ハーフタイムに的確な指示を出せなかったため、試合中にノートを手放してテクニカル・エリアで指示を出し続けていたことが思い出せるのだと、田中氏は語ります。

メモは、書いた人物の心理状態を明確に反映させるものです。例えば、あなたが社内会議の場でメモを取っていた場合、互いの議論が白熱した際はメモを記すことを忘れがちになるでしょう。そのようなときにも冷静に詳細な状況を記せることが、成功の分かれ目になるのかもしれません。

また、継続してメモを取ることによって、年月が経った頃に自身の変移を感じることができるのもメリットです。メモを見返すことで「新入社員の頃の自分は、会議に出ても話題についていくことに必死だった」「○○さんと××さんの議論が白熱すると、いつも他の社員が置いてけぼりになっているのが気がかりだった」といった当時の状況や忘れがちな心情を鮮明に思い出すことができます。メモを通して、経験の浅い社員が会議に出た際には話題についていけるように補足を加えたり、一部の人だけで議論が白熱しそうなときには他の社員に意見を求めたり、といった気配りもできるようになるのです。

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デジタル機器の普及により、手書きのメモを取る機会は減少しています。しかし、優れた指導者はメモを活用して成功を納めている場合が多いのです。今後、あなたが指導する立場になった場合、メモを使用すれば、画期的な育成方法が見つかるかもしれませんよ。

(参考)
PRESIDENT Online|高年収エグゼクティブの「ノート習慣」
DIAMOND Online|メモをとるサラリーマンが出世する理由
EL BORDE|【前田裕二】日常すべてがビジネスアイデアに変わる戦略的メモ術
STUDY HACKER|成功者には「メモ魔」が多い。最大の効果を生み出す “メモ” のコツ。
DIAMOND Online|マッキンゼー出身者が実践する「アウトプット力・インプット力が上がる」まとめ方
Number Web|野村ノートの正体。~広澤克実、遠山奨志ら愛弟子の告白~
PRESIDENT Online|野村ID野球を成立させた「メモ」の中身
ベースボール・マガジン社Web|ノートに記録し、育成に活かす。新潟明訓・監督のデータの取り方
BUSINESS INSIDER|キーボード派?手書き派?脳を活性化し、ビジネスで勝てる「本当に正しいメモの取り方」とは
SBCr Online|プロのコンサルタントはどんなノートを使っているのか?

【ライタープロフィール】
亀谷哲弘
大学卒業後、一般企業に就職するも執筆業に携わりたいという夢を捨てきれず、 ライター養成所で学ぶ。養成所卒業後にライター活動を開始し、スポーツ、 エンタメ、政治に関する書籍を刊行。今後は書籍執筆で学んだスキルをWEB上で活用することを目標としている。

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