「仕事も勉強もアウトプットが大事!」と聞くけど、アウトプットってそこまで重要なんだろうか? クリエイターでもなければ、論文を書くような勉強をしているわけでもないし……。
そんなあなたに、「アウトプットしまくる人はやっぱり強い!」と納得できる3つのメリットをお伝えします。
「やることが多すぎて手をつけられない」という悩みも、「頭のなかがいつもごちゃごちゃする」という悩みも、“アウトプット= 書くこと” で解消できるんですよ。さっそく説明しましょう。
1.「やるべきこと」を書き出しまくれば、行動力が高まる
「資料作成、リサーチ、計画立案……大事な業務ばかりで、どれからやろうか悩んでしまう」
「あの習い事もやってみたいし、このセミナーも興味がある。でも、結局行動できずに終わる」
このような人には、“やりたいこと・やらなければならないこと” を徹底的にアウトプットすることをおすすめします。書き出すだけで、格段に行動に移しやすくなりますよ。
そもそも、やりたいことがいっぱいあるのに行動できないのは、ToDoが具体化されていないから。戦略コンサルタントで『シンプルTODOリスト仕事術』著者のShin氏が、タスクの数々をうまく扱えず仕事が終わらなくなる原因のひとつとして、これを挙げています。
人間は、ぼんやりと「これをやらなきゃ」とは思っていても、実際にどのような動作で行動すべきなのかイメージしないと動けない、とShin氏。そのままでは、本当に大事なことをやりそびれてしまいます。
そこでShin氏がすすめるのが、やらなきゃと思っている事柄をとにかく紙に書き出して、具体的なToDoを洗い出すこと。
- 「資料を作成しなきゃ」であれば「表紙と序章を書く」というToDo
- 「あのセミナーに行ってみたい」であれば「セミナーに申し込む」というToDo
といった具合に書き出せば、作業レベルでToDoを見える化できて行動に移しやすくなるだけでなく、やる気まで湧いてくるのだそう。
Shin氏はここで「ロジックツリー」と「マトリックス」の活用をすすめます。それぞれのやり方は以下のとおり(ごく簡単な例とともに示します)。
- 「ロジックツリー」でToDoを洗い出す
- ToDoを洗い出したいトピックを決める。
- そのトピックについてやるべきことを、できるだけ漏れなく挙げ、分類し、最後に具体的なToDoを書く。
- 「マトリックス」でToDoに優先順位をつける
- コスト(金銭的・時間的・精神的な難易度)を横軸、コントリビューション(成果への直結度)を縦軸にしたマトリックスを描く。
- ロジックツリーで洗い出したToDoについて、コストとコントリビューションを評価し、マトリックス上にマッピングする。
- コストが低くコントリビューションが高いToDo(マトリックスの右上にマッピングするもの)から優先的に選び、行動に移す。
※成果が高くても実践できなければ意味がないので、コストは熟考すること!
「いろいろ勉強してみたいけど、何からやろう……」という状態だった筆者が、実際にToDoの洗い出しをやってみました。
(トピック)やりたい勉強
→(大項目)仕事に関係するかしないか
→(中項目)勉強したい分野
→(小項目)ToDo
という順にどんどんアウトプットしたところ、出てきたToDoは全部で14個。それらをマトリックス上にマッピングすると、コストが低くコントリビューションが高いものを4つに絞ることができました(紙面で赤く囲ったところ)。
いままでは「全部大事だから優先順位なんてつけらない……」と結局何もできずにいたのですが、かかる時間やお金、成果へのつながりやすさをよく考えたところ、優先事項を見極めることに成功。これなら、さっそく4つのToDoに取りかかれそうです。
筆者のように「ぼんやりと考えているけど行動には移せない」人は、ToDoをどんどんアウトプットして行動力をアップさせましょう!
2.「パッと浮かんだこと」をメモしまくれば、発想力が上がる
「次々とよいアイデアが思い浮かんできて喜んだのもつかの間、あとで思い出そうとしたときにはすっかり忘れていた。いい商品案がつくれると思ったのに!」
こんな経験がある人は、思い浮かんだそばからすぐにメモすることを習慣にしてください。
というのも、脳は、思いついたことをすべて記憶できるわけではないからです。脳神経外科医の築山節氏によると、脳には「マジック7」という性質があり、一度に脳内に留めておける要素はたったの3~7つだけなのだそう。たとえよいことを10個思いついたとしても、半分ほどは忘れてしまうということです。
そこで有効なのが、思い浮かんだことをどんどんメモするという策。そのままでは忘れてしまうことを文字情報として残せますし、ぼんやりとしかイメージできていなかった事柄も文字にすればより認識しやすくなるのです。
たとえば、「こんな商品があったらいいな」というアイデアが浮かんだら、その商品の詳細をどんどんメモしてください。形、色、大きさ、機能など、思いついたことはなんでも書き出します。
ここで大切なのは、単にメモするだけでなく、メモしながら考えること。メモしたものを、消したり並べ替えたりしてみると、断片的な考えが少しずつ整理され、アイデアどうしを組み立てやすくなるのだそう。最終的には、頭のなかだけで「こんな商品があったらいいな」と考えていたときよりも、ずっと具体的なアイデアがまとまるはずですよ。
ちなみに、精神科医で脳科学者の樺沢紫苑氏によると、脳は、気づきを得ても放っておくと30秒~1分で忘れてしまうのだそう。ですから、ペンとノートがない場合には、スマートフォンにメモしてもかまいません。とにかく「すぐに」メモすることが大切です。
小さなことでも思い浮かんだら躊躇なくアウトプットする習慣をつけ、創造力を鍛えましょう!
3.「心のモヤモヤ」を書きまくれば、気持ちを落ち着けられる
仕事、お金、人間関係、体調など……いろいろな不安が渦巻いて心がモヤモヤするときは、気持ちをあるがままに書き出すとスッキリしますよ。
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事の荻野淳也氏によれば、思いや考えをひたすら紙に書き出す行為は “書く瞑想” とも呼ばれ、「いまこの瞬間」に集中したマインドフルネスな状態をつくり出す効果があるとのこと。雑多な不安のせいで注意散漫になった状態から、本来やるべきことに集中できる状態に導けるのです。
加えて、紙に思いを書き出せば、自分の内面を客観視でき、気づきを得ることもできるそう。「こういう点で自分は不快になるんだな」「このこだわりをなくせば、心配事を減らせそうだ」といった感じです。これによって、否定的な感情を落ち着かせてポジティブな行動をとれるようになるのだとか。
荻野氏によると、気持ちを書き出す際のポイントは次の5つです。
- あるテーマについて決められた時間ずっと書き続ける
- 頭で考えずに手を動かす
- 気をそらせるものがないプライベートな空間で行う
- 脚色しないで事実や気持ちをあるがままに書く
- 誤字や脱字を気にしない
(引用元:NIKKEI STYLE|書く瞑想、ジャーナリング 集中力高め仕事効率を改善)
書くテーマは、自分について深く知ることができるものがよいのだそう。
たとえば、「なぜ仕事中にイライラするのか」をテーマに5分間書くとしたら、5分間は余計なことを考えず、思うがままに仕事の不安や不満を書きまくりましょう。誰かに見せるものではないので、「これは書いたらダメかな」と遠慮したり、誤字・脱字を気にしたりする必要はありません。
集中力が高まり、マインドフルネスな状態になれるだけでなく、書くうちに自分がイライラしやすいポイントが見えてきます。自分を労わることや、感情のコントロールもできるようになるはずです。
言いようのない不安や悩みが膨らんだら、気持ちを紙に徹底的にアウトプットして、心をリセットしましょう!
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アウトプットしまくる人の強さは、行動力、発想力、心の安定にあるということを説明しました。いまの自分より一歩でも二歩でも成長するために、アウトプットの習慣をつけてみてくださいね。
Shin(2018),『シンプルTODOリスト仕事術』, ポプラ社.
築山節(2006),『脳が冴える15の習慣 記憶・集中・思考力を高める』, NHK出版.
樺沢紫苑(2018),『学びを結果に変える アウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
NIKKEI STYLE|書く瞑想、ジャーナリング 集中力高め仕事効率を改善
日経ビジネス電子版|手を動かし、「書く瞑想」をしよう
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。