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こうして年始には必ず意気込むものの、その思いが長続きせず挫折した経験をもつ人は多いことでしょう。そこで今回は、「年始の意気込みがその場限りになる人」にありがちな3つの特徴と、決めたことをやり通すための改善策もあわせてご紹介します。
【1】複数の習慣を同時に身につけようとする人
年始だからこそ「今年は資格試験の勉強をしよう、せっかくだから読書も習慣化させるぞ」と多くのことを意気込んでいませんか? 習慣化コンサルタントの古川武士氏は、著書『習慣化のプロが教える 幸福感を高める7つの小さな習慣』のなかで、「複数の習慣を一度に身につけよう」とするのは「無謀」だとしています。
なぜなら、生物がもつ「ホメオスタシス」によって、以下ふたつの働きをもつ「習慣引力」がかかるからです。
- 「新しい変化に抵抗する」
- 「『いつも通り』を維持する」
「環境の変化などに対して生理状態を一定に保つように」働くホメオスタシスは、体内環境だけでなく、習慣化のプロセスにも影響を与えるもの。
「一度に2つ、3つの習慣に同時に取り組むこと」による、「2倍、3倍の引力を振り切るためには、莫大な推進力が必要」だと古川氏は述べています。(古川氏著『30日で新しい自分を手に入れる 「習慣化」ワークブック』より)
改善策:興味をもったものからひとつずつ習慣化する
この習慣引力の影響をふまえて、古川氏はこう伝えています。
「習慣化」の際は、複数の習慣を同時に身につけようとすることなく、興味を持ったものから1つひとつ身につけていくことを心がけてほしいと思います。
(引用元:プレジデントオンライン|年始に始める「新習慣」が、だいたい挫折で終わる根本原因)
たとえば、年明けから資格試験の勉強と読書を始めたい場合。両方を比べてみて「転職に役立つ資格のほうが興味深い」と思ったら、まずは資格試験の勉強から習慣化を目指しましょう。逆もしかりです。
もうひとつ大切なのが、「ルールはシンプルに」すること(『30日で新しい自分を手に入れる 「習慣化」ワークブック』より)。
たとえ資格試験の勉強に的を絞ったとしても、通勤中にオンライン講座を視聴して、昼休みは一問一答に取り組んで、夜は……というように、「複雑なルールがあると、習慣化は困難になりがち」だと古川氏。「何をやるのがもっとも効果的なのかを考えて、行動を1つに絞って」みると続きやすいそうです。
たとえば、「まずは通勤中にオンライン講座を視聴して概要をつかもう」と決めたなら、それだけに専念しましょう。慣れてきたと感じたら、昼休みの一問一答にも取り組めばいいのです。
年始はやる気満々で張りきっているために、つい欲張って多くのことを習慣化させようとしがち。ですが、意気込みがその場限りにならないよう、まずはひとつのことに集中しましょう。
【2】新しい習慣をつくろうとする人
「お正月には必ず『新しいことをやろう』と決めるのに、なぜか毎年三日坊主に終わっている気がする……」そう悩む人もいるかもしれませんね。
それもそのはず。脳研究者の池谷裕二氏いわく「脳は飽きっぽくできています」(引用元:プレジデントオンライン|池谷裕二が指南!やる気が出る「脳」のだまし方)。
著作家で脳科学に詳しい星渉氏は、脳には「順化」という性質があるとし、その流れをわかりやすくこう示しています。
新しい習慣を始めた→ 新しい刺激で脳が活性化。やる気満々に! →同じことを繰り返す→ 脳が刺激に慣れて、活性化せず
(引用元:東洋経済オンライン|「3日坊主の人」が劇的に変わるたった1つのコツ)
「新しいことをやるぞ!」と決めた直後の数日間は新鮮味があっても、そのうち脳が飽きて、面倒になりやめてしまう……というわけですね。
こう聞くと、「新しい習慣がNGなら、何も始められないじゃないか」と思うかもしれません。では、新しいことを習慣にしたい場合はどうしたらいいのでしょうか?
改善策:タイニー・ハビットを実践する
星氏は、新しい習慣は「すでに習慣になっているものに付け加える」ことで身につけられるとしています(同上資料より)。読書の習慣をつけたいなら、毎晩の歯磨きに付け加えて、“歯磨きとセットで読書をする” という具合です。
これを実践する際は、行動科学者のBJ・フォッグ氏が考案した「タイニー・ハビット」も参考にするとよいでしょう。
タイニー・ハビットは、4万人以上を対象とした実験で効果が実証された習慣化メソッド。その特徴は、「望む行動を1つ選び、それを『小さい行動』に分解」すること。その小さい行動は「30秒もかからずにできる」ものにすること。(フォッグ氏著『習慣超大全――スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』より)
たとえば、読書の習慣を身につけたい場合なら「1段落読む」くらいの小ささです。
そして、この「小さい行動」は既存の習慣とセットで、次の3ステップのなかで行ないます。(以下枠内:同上著書を参照し手順をまとめた)
- アンカーの瞬間
すでに習慣になっている日課を「アンカー」とし、アンカーによって小さい行動を思い出す。
例)歯磨き、入浴、朝のコーヒー など - 小さい行動
アンカーの直後に、小さい行動を実践する。
例)歯磨きの直後に、本を開いて1段落読む など - 祝福
小さい行動をとった直後に、自分を「祝福」する。
例)歯磨きの直後に本を1段落読めたら→ガッツポーズをする、心のなかで「よし!」と言う など
3の祝福について補足しましょう。祝福とは「ポジティブな感情を生み出す行動」のこと。これが必要な理由は、「いい気分になると、脳の報酬システムを支配するドーパミン」の生成が促されるため。
私たちがどんな行動でいい気分を得られたのかを記憶するように、そしてそれを繰り返すように後押しする
(引用元:BJ・フォッグ (2021), 『習慣超大全――スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』, ダイヤモンド社.)
という効果があるそうですよ。
「長期的な変化を望むなら、小さいことから始めるのが最善だ」とフォッグ氏。年始だからと思いきったことをするのではなく、すでにある習慣に30秒くらいで完結する小さい行動を付け加えることから始めてみましょう。
※タイニー・ハビットについてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。よろしければぜひお読みください⇒『4万人超の実験で効果実証済み! 習慣化メソッド「タイニー・ハビット」をやってみた』
【3】数値化できない抱負を立てようとする人
今年はビジネス書をたくさん読む。教養を深める1年にする――じつはこのような新年の抱負は、立てたその場限りになりやすいようです。
行動習慣研究所代表の佐藤伝氏は、「『具体的な数値で表せない、抽象的な目標』はNG」だと言います。その理由として、数値がないと「目標を達成できたかどうかの判断もできません」と佐藤氏。(プレシャス|「新年の抱負」立てる?三日坊主になる、やってはいけない新年の抱負の立て方8選 より)
明確なゴールがない状態では、いくら目標を立てても、その取り組みは長続きしないということですね。
たとえば「たくさん本を読む」という抱負では、何をもって「たくさん」だと判断するのか難しいでしょう。それならば「30冊以上ビジネス書を読む」というように、数字を用いた目標を考えたほうが達成しやすいというわけです。
改善策:数値化した目標を小刻みに設定する
スポーツ心理学者・メンタルカウンセラーの児玉光雄氏は、著書『「やる気はあるのに動けない」そんな自分を操るコツ』のなかで、
- 「どれくらい」という数値化した目標
- 「いつまでに」という期限
をセットにすることをすすめています。
さらに、「目標は、できるだけ小刻みに設定したほうが行動に移せる」ので、年間単位の目標を月間・週間、さらには1日単位まで小刻みにするとよいとのこと。
「今年はビジネス書をたくさん読みたい!」という人の場合なら、次のようになります。
1年間の目標:30冊のビジネス書を読む。
1か月間の目標:2.5冊のビジネス書を読む。
1週間の目標:1冊の6割を目安にビジネス書を読む。
1日単位の目標:1冊250ページと想定して、1日20ページ読む。
目標を達成するまでのハードルが低くなるので、続けやすく感じますよね。
1年通して何かに挑戦し続けられるほど、人間の意思は強くありません。実現が困難に思えてしまうような目標を掲げて、3日坊主に終わるくらいなら、より簡単に見える目標に置き換えるべきです。
(引用元:児玉光雄 (2017), 『「やる気はあるのに動けない」そんな自分を操るコツ』, SBクリエイティブ.)
児玉氏はこうも述べています。年始の意気込みがその場限りになる人は、数値を用いた年間目標を立てたうえで、1日単位まで目標を小刻みにしてみましょう。
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年始に新しく身につけたい習慣や目標を考えるときは、欲張りすぎないことや、漠然とした内容にならないことに気をつけたいですね。今年こそ「新年の抱負を達成できなかった」と後悔することがないように、できることから始めてみましょう。
(参考)
プレジデントオンライン|年始に始める「新習慣」が、だいたい挫折で終わる根本原因
古川武士 (2016), 『30日で新しい自分を手に入れる 「習慣化」ワークブック』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
東洋経済オンライン|「3日坊主の人」が劇的に変わるたった1つのコツ
プレジデントオンライン|池谷裕二が指南!やる気が出る「脳」のだまし方
BJ・フォッグ (2021), 『習慣超大全――スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』, ダイヤモンド社.
プレシャス|「新年の抱負」立てる?三日坊主になる、やってはいけない新年の抱負の立て方8選
児玉光雄 (2017), 『「やる気はあるのに動けない」そんな自分を操るコツ』, SBクリエイティブ.
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【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。