4万人超の実験で効果実証済み! 習慣化メソッド「タイニー・ハビット」をやってみた

「タイニー・ハビット」で新しい習慣を定着させてみた01

「本を毎日読もうと決めたのに、また三日坊主で終わってしまった……」
「朝の勉強習慣を定着させたいのに、なぜかいつも1週間と続かない……」

このような習慣化に関する悩みをもつ人に試してほしいのが、4万人以上を対象とした実験で効果が実証された「タイニー・ハビット」です。

『習慣化大全』著者で行動科学者のBJ・フォッグ氏によれば、タイニー・ハビットは人の心理にのっとったメソッドなので、習慣を無理なく身につけられるとのこと。さっそく、具体的な方法と筆者の実践例をご紹介しましょう。

なぜ私たちは習慣化に失敗するのか?

今回こそは……と思いながらも、結局続けられず習慣化に失敗するのはよくあること。そんな失敗の原因は、習慣化コンサルタントの古川武士氏いわく「脳にいつも通りを維持しようとする本能があるから」だそう。これを「習慣引力」と呼ぶそうです。

この習慣引力によって、脳は変化に抵抗します。たとえば、私たちは「朝起きたら顔を洗って歯を磨いて身支度する」という行動を、無意識にできますよね。そこへ「朝に本を読む」というような新しい習慣を取り入れようとしても、脳の仕組み上なかなか定着させられないのです。

こうした習慣引力の特徴をふまえて、古川氏は「ひとつの行動を小さく始める」ことをすすめています。取り組みやすい小さな行動を続けて、脳に「いつも通り」と認識させれば習慣化に成功できるとのこと。

これにはフォッグ氏も同意見。最初から大きなことをしようとすると、難しい、時間がないなどの理由から焦燥感に駆られたり、諦めてしまったりするので、習慣化には「小さい行動」から始めることが重要だと説きます。

「タイニー・ハビット」で新しい習慣を定着させてみた02

習慣を形成する「タイニー・ハビット」とは?

そこで、脳科学的にも行動科学的にも習慣化の成功が期待できる方法が、小さい習慣を意味する「タイニー・ハビット」

フォッグ氏が提案するこの方法は、次の3ステップで構成されます。

  1. アンカー:習慣化したい「小さな行動」を思い出させるきっかけを決める。
  2. 小さな行動:「アンカー」の直後に行なう、30秒くらいで完結する行動を決める。
  3. 祝福:「小さな行動」ができた直後に、自分をほめる。

それぞれのステップで具体的な行動を決めておけば、スムーズに習慣化できるのだそう。では、詳細を説明しましょう。

1. アンカー

最初に「アンカー」となる行動を決めて、紙に書きます。一例は日課。すでに習慣化している日課と新たに習慣化したい行動をセットにすると、脳の抵抗が少なくなるとフォッグ氏は言います。

たとえば、次のような感じです。

NG:朝に本を読む
OK:朝食をとったら、本を読む

もし、ちょうどいい日課が思い当たらない場合は、フォッグ氏が示す次の7つの場面を振り返ってみましょう。

  • 職場に到着するまでの朝の日課
    例)歯を磨く、朝食をとる
  • 昼までの日課
    例)デスクを整理する、メールボックスを見る
  • 昼食時の日課
    例)電子レンジで温める、食器を洗う
  • 昼食直後の日課
    例)仮眠をとる、トイレに行く
  • 職場で仕事を終えるときの日課
    例)資料を整理する、パソコンの電源を切る
  • 職場をあとにしてからの日課
    例)駅まで歩く、電車に乗る
  • ベッドへ入る直前の日課
    例)入浴する、歯を磨く

そして日課を書き出せたら、絶対に忘れない、確実な日課をひとつ選んで、アンカーにしてください。

2. 小さな行動

アンカーを決めたら、習慣化したい行動を、30秒程度で完結する「小さな行動」に分解します。

例)
1週間で3冊の読書を習慣化したい→まずは「1段落だけ読む」ことから始める。
1日1時間の勉強を習慣化したい→まずは「テキストを開く」ことから始める。

小さな行動は「○○(=アンカー)をしたら、△△(=小さい行動)をする」という書式で記録しましょう。

たとえば、朝の読書を習慣化したいなら

朝食をとったら、本を1段落読む

というように記録します。

フォッグ氏いわく、小さな行動を続けて成功体験を積み重ねると、行動の規模が大きくなっても習慣化できるとのこと。たとえば、最初は本を1日1段落しか読めなかった人でも、徐々に読めるページが増え、やがて目標としていた「1週間で3冊の読書習慣」が身につくことでしょう。

3. 祝福

小さな行動を決めて、実際に行動へ移せたら、自分をほめましょう。ほめるといっても心のなかで「よし!」と言ったり、小さくガッツポーズしたりといった、簡単なものでかまいません。

自分をほめる「祝福」には、脳内の報酬システムに関わる神経伝達物質・ドーパミンの生成を促し、新しい習慣を脳に定着させる働きがあるとフォッグ氏。ドーパミンは、私たちがどんな行動でいい気分を得られたのかを脳に記憶させ、その行動を繰り返すようあと押ししてくれるので、習慣化に役立つそうですよ。

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「タイニー・ハビット」を3週間やってみた

さっそく筆者も、タイニー・ハビットを実践してみました。筆者が習慣化したいのは、「デスクワーク中のストレッチ」

東京医科大学整形外科准教授の遠藤健司氏によると、座りっぱなしで血行が悪くなると「疲れ物質」がたまるそう。肩や首のコリでその自覚はあったので、パフォーマンスを落とさないためにも適度にストレッチをして、疲れ物質をため込まないようにしたいと考えたのです。

臨床心理学者のマクスウェル・マルツ氏いわく、習慣化にかかる期間の目安は21日間とのこと。そこで、期間を3週間に設定して実践することに。

まずはアンカーを決めるため、次のように、メモ紙へ日課を書き出してみました。

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(テレワークをする日の日課です)

筆者は「昼食にスープを飲むために湯を沸かす」という日課が5年以上続いているので、「ポットのスイッチを入れる」をアンカーに。続いて小さな行動を「背伸びとアキレス腱伸ばし」のように設定して、祝福は「カレンダーに印をつける」と決めました。

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アンカーと小さな行動を実践後、祝福として印をつけた様子は、以下のとおりです。

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前出の古川氏いわく、数値と感情を記録して進捗を可視化すると、習慣化がしやすいそう。数値については、実践した日数をカウントして記録することにしました。感情の書き方に決まりはないので、筆者は顔文字や絵文字で表現カレンダーの空いたスペースに記録しました。

特に気持ちよくストレッチができた日:笑顔マークや花丸
ストレッチの効果はいまひとつだったが、継続できたことを祝福したい日:汗をかく顔文字

このようにして、3週間続けた結果がこちら。タイニー・ハビットをいつでも確認できるよう、3つのステップを書いたカードをカレンダーのそばに貼っています。

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「タイニー・ハビット」で、簡単に習慣化できた!

タイニー・ハビットを3週間実践して、感じたことや提案したいことをまとめます。

「祝福」が習慣化をあと押ししてくれる

1回30秒で終わる行動だと、あまりにも簡単に達成できて手ごたえがなく、正直「これだけで本当に大丈夫?」と心配になるほどでした。

しかし1週間ほど経ち、カレンダーに書いた累計日数の数字が大きくなってくると「ちゃんと続いてる」と、成功実感を得られるように。さらに、2週めからはときどきですが、昼食時以外にも自主的にストレッチをするようになりました。

「祝福」は “記録して可視化” がおすすめ

フォッグ氏は「祝福」について、「よし!」と心のなかで言うだけでも問題ないと述べました。ただ個人的には、記録をつけるかたちで祝福することをおすすめします。どちらの方法も試してみましたが、進捗を可視化できるほうが、成功体験が記憶により残りやすいと感じたためです。

カレンダーに印をつけるといった簡単なことでかまわないので、ぜひ目に見えるかたちで「祝福」を取り入れてみてください。

行動に移しやすいように、環境を整えるのも大事

行動科学マネジメントの第一人者である石田淳氏によると、習慣化には行動をあと押しするような工夫を設けると効果的だそう。筆者の場合、靴下でアキレス腱伸ばしするとフローリングで足が滑るので、小さなマットを置くことで快適な環境をつくりました。

ほかにも、勉強を習慣化するなら目につきやすい場所にテキストを置く、ランニングを習慣化するならシューズを玄関に出しておくといった工夫ができるでしょう。スムーズな行動のために準備できることがないか、考えてみてください。

***
人の心理に逆らわず、無理なく習慣化できる「タイニー・ハビット」。興味がある方は、ぜひ試してみてくださいね。

(参考)
BJ・フォッグ (2021), 『習慣超大全――スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』, ダイヤモンド社.
古川武士 (2016), 『30日で新しい自分を手に入れる 「習慣化」ワークブック』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
菅原道仁 (2018), 『なぜ、脳はそれを嫌がるのか? 』, サンマーク出版.
東洋経済オンライン|実は重労働「デスクワーク」疲れを楽にするコツ
石田淳 (2013), 『行動科学で人生がみるみる変わる! 「結果」が出る習慣術』, 角川マガジンズ.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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