「何かが惜しいプレゼン」に欠けている3つのこと。飽きられる “8分の壁” をどう乗り越えればいいのか?

魅力的でないプレゼンの3大NG点01

魅力的なプレゼンテーションの条件とは何でしょうか。話がわかりやすい、はきはきと話している、スライドが見やすい……。さまざまな答えが考えられますね。

しかしこれらは、内容を最低限伝えるための大前提に過ぎません。聴き手が思わず惹きつけられるような “魅力的なプレゼン” としては、まだ足りないかもしれないのです。

記憶に残らない。聞き手の心を動かせない。そんな “何かが惜しいプレゼン” のままでは、企画を通したり、コンペに勝ったり、新入社員のモチベーションを上げたりするなどの最終的な目標に一歩及ばない可能性があります。

本記事では、NG例を3つ紹介しながら、聴衆の心を動かせる “魅力的なプレゼン” の作り方を学んでいきます。 

【NG1】魅力的でないプレゼンには「私たち」がない

「私たち」という主語は、「私たち日本人」「私たちA社員」「私たち家族」というふうに、同じグループに所属している人たちのことを指すものです。したがって、プレゼンや会話の中でこれを使うことによって、「私とあなたは同じグループに所属していますよ」という仲間意識を共有することができます

逆をいえば、「私」や「弊社」など単数の一人称ばかりを使ったり、主語を明示することなく話したりしては、聴き手と話し手とがまるで別のグループにいるかのような印象を与えかねません。その結果、話に共感してもらいにくい、警戒心を抱かせてしまう、といったデメリットも生じてしまうのです。

たとえば、新入社員への研修の場面で、「新入社員の皆さん、頑張ってください」と話したとしましょう。ここには、「あなた方は新入社員だが、私は新入社員ではない」というニュアンスが暗黙裡に、しかし明確に込められてしまっています。これがもし、「私たちA社員、みんなで頑張りましょう」という文言だったらどうでしょうか。押しつけがましさがなくなり、親近感も沸いてきますよね。

この「私たち」を主語に使う技術により人気を博したのが、アメリカのオバマ前大統領です。博報堂スピーチライターのひきたよしあき氏によると、オバマ氏はスピーチの中で「we」「our」「us」を多用することで有権者の共感を呼び、味方につけることに成功したのだそう。オバマ氏の名文句「Yes, we can」の中にも、「we」という言葉がしっかり入っていますよね。

プレゼンや仕事の中で活かすとすれば、以下のような言い換え方が考えられます。

  • 「今回のプロジェクトは……」→「私たちのプロジェクトは……」
  • 「次のスケジュールは……」→「私たちのスケジュールは……」

日本語は特に主語を省略しがちな言語ですが、あえて「私たちは」と明示してみましょう。言葉の印象が柔らかくなり、聴き手の反応もガラリと変わるかもしれませんよ。

魅力的でないプレゼンの3大NG点02

【NG2】魅力的でないプレゼンは「聴衆への質問」が皆無

よく、プレゼンやスピーチの登壇者が聴衆に質問を投げかけている場面を目にしますよね。あれは、単なる息抜きや遊びでやっているのではありません。じつは、質問を投げかけることには、聴き手の集中力を維持するという重要な役割があるのです。

受動的に話を聞いていられる限界は「8分間」とするのは、トレーナー育成・研修デザインの専門家、ボブ・パイク氏です。受動的というのは、聴き手が自分で何かを考えたり行動したりしていない状態のこと。つまり、聴き手とコミュニケーションを取らず一方的に話してばかりいては、聴き手はあっという間に集中力を失ってしまうのです。

これを防ぐのに最適なのが「質問」です。コクヨ株式会社ワークスタイルコンサルタントの下地寛也氏は、次のように述べています。

人は、問いかけられると考えてしまう生き物です。テレビでも「明日の天気はどうでしょうか?」「なぜ真面目な社会人の彼が犯行に及んだのでしょう?」と問われると、思わず自分なりにその答えを考えてしまいます。問いかけには、つまらない勉強であっても楽しくする力があるのです

(引用元:プレジデント・オンライン|プレゼン上手は「10位」から話を始める ※太字は筆者が施した)

「未完成なパズルを差し出されると思わず埋めたくなる」という性質が人間にはあり、これは心理学では「ザイガニック効果」と呼ばれています。つまり、内容はともかく「問い」を与えさえすれば、それだけで関心を惹きつけることができるのです。

たとえば、「弊社のシェア率は50%です」と言うところを、あえて「何%だと思いますか?」とクイズにしてみましょう。そう訊かれると、シェア率についてそれほど興味がなかった人でさえ、「さて、何%くらいだろう?」と考えたくなるはずです。

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さらに、質問に対して「挙手」で答えてもらうことで、より聴き手の参加意識を高めることができます

とはいっても、「わかった人は手を挙げてください」のような出題の仕方は避けるべきです。なぜならば、答えが無数に考えられる質問(オープン・クエスチョン)の場合、不正解を出して恥をかくリスクが高くなり、ほとんどの人は手を挙げないから。それに、プレッシャーや緊張感も与えてしまいます。気楽に参加してもらうには、Yes/Noで答えられるものや3択など、答えの数が限られた質問(クローズド・クエスチョン)が最適ですよ。

そこで使えるのが「グー・チョキ・パー質問」です。これは、質問の答えを3択にし、Aだと思ったらジャンケンのグーの手を、Bだと思ったらチョキを、Cだと思ったらパーを挙げてもらう方法のこと。組織の問題解決を支援する「ビーユアセルフ」の代表・岩下宏一氏によると、これなら全員が手を挙げることになるので恥ずかしさがなくなり、挙手の心理的ハードルがぐっと下がるのだそうです。

前出の質問で言えば、「シェア30%だと思う方はグーを、50%だと思う方はチョキを、70%だと思う方はパーを挙げてください」という具合になります。

魅力的でないプレゼンの3大NG点04

【NG3】魅力的でないプレゼンには「アイコンタクト」がない

最後は「目線」についてです。大勢の人の前で話していると、どうしてもひとりひとりの聴き手を意識することができなくなってしまいます。つまり、漠然とした「聴衆」を相手に話している感覚になり、目線が定まらなくなってしまうのです。

しかしそれでは、聴き手は「自分に向かって話してくれている」という感覚を持ちづらくなります。そのため、聴き手としっかりアイコンタクトをとり、「あなたに対して、1対1で」話しているのだと目で伝えることが重要なのです。

岩下氏は、自民党の小泉進次郎議員を好例として挙げています。

小泉進次郎議員の場合、どんなに聴衆の数が多くても、話す際は常に一点を明確に見据えて言葉を発しています。1つの文章、主語述語のまとまりの中で視線が泳ぐことはまずありません。そうやって語られることで、何百人、何千人といる聴衆が「私に向かって語ってくれた」という実感を持ち、それが重なっていくことで会場全体の熱につながるのです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|プレゼン効果を「その場」で倍増させる3つの実践ノウハウ ※太字は筆者が施した)

単に目を合わせるだけでなく、一定時間、視線を泳がさずに相手を見つめるのが重要です。たとえば、「ひとつの文章を話している間は、ひとりの人を見つめ続ける」などのマイルールを決めておけば、技術として取り入れやすくなるでしょう。

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思い当たるNG点はありましたか。

人前で話すのに慣れたら、次のステップは「聴き手の心を動かす」こと。今回ご紹介したテクニックを踏まえ、聴き手が思わずのめり込んでしまうようなプレゼンを目指してみてください。

(参考)
東洋経済オンライン|「口下手の人」が実はプレゼンで有利な深いワケ
ダイヤモンド・オンライン|なぜあなたのプレゼンは10分で飽きられてしまうのか
プレジデントオンライン|プレゼン上手は「10位」から話を始める
ローリエプレス|「ザイガニック効果」という相手を惹きつける魔法が、世の中にはあって
ダイヤモンド・オンライン|プレゼン効果を「その場」で倍増させる3つの実践ノウハウ

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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