プライミング効果の意味とは? 仕事・勉強に応用する方法3つ

プライミング効果の意味1

心理学におけるプライミング効果とは、あらかじめ受けた刺激(情報)によって、行動が無意識に影響されること。「前もって教え込む」という意味の英単語・プライムに由来しています。

刺激(プライマー)によって、特定の概念が「活性化」させられ、関連する情報(ターゲット)を連想しやすくなります。たとえば、皆さんが子どもの頃に経験したであろう「ピザって10回言って」も、プライミング効果を利用した遊びです。

プライミング効果をうまく使えば、マーケティングで成功できるだけでなく、仕事や勉強へのモチベーションを保つこともできますよ。今回は、プライミング効果の例や、実際に応用する方法をわかりやすくご説明します。

プライミング効果の意味

行動経済学の専門家、ハワード・S・ダンフォード氏によると、プライミング効果とは、あらかじめ受けた刺激によって、無意識のうちに行動が影響を受けるという心理効果。プライミング効果の例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 道を歩いていたら、どこかからカレーの匂いが漂ってきた。
    →買い物をするとき、気づいたらレトルトカレーを手に取っていた。
  • テレビでお菓子のCMを見た。
    →いつもは食べないのに、なぜだかお菓子を買いたくなってきた。

子どものときによく遊んだ「10回クイズ」にも、プライミング効果が現れています。10回クイズとは、ある単語を10回言わせてから問題に答えさせる、ひっかけクイズの一種です。

A「『シャンデリア』と10回言って」
B「シャンデリア、シャンデリア、シャンデリア……」
A「毒リンゴを食べたのは?」
B「シンデレラ!」
A「残念。正解は白雪姫でした」

上記の10回クイズでは、「シンデレラ」と似た音の「シャンデリア」という言葉が記憶に刷り込まれ、プライミング効果が起こって、「白雪姫」ではなく「シンデレラ」という答えが誘発されやすくなっています。

プライミング効果の特徴は、プライミング効果を受けた本人に自覚がないこと。「さっきカレーの匂いを嗅いで食べたくなったから、カレーを食べよう」と意識するのではなく、ふと思いついたかのように、カレーを食べるという行動を選択してしまうのです。

なお、あらかじめ与えられる刺激を「プライマー」、プライマーによって影響を受ける後続の刺激を「ターゲット」と言います。カレーの匂いを嗅いだことでカレーを食べたくなった場合、「カレーの匂い」がプライマー、「カレー(を食べたい気持ち)」がターゲットです。プライマー/ターゲットは、プライミング効果の解説ではよく出てくるので、ぜひ覚えておいてください。

プライミング効果の意味2

プライミング効果の論文・実験

プライミング効果を実証した実験としては、心理学者のジョン・バルフ氏らが1996年の論文で発表したものが有名です。

バルフ氏らの実験では、大学生を2つのグループに分けました。一方には無作為に選んだ単語のセットを、もう一方には「高齢者」を連想させる単語のセットを与え、それらの単語を使って短文を作るよう指示。作業終了後、学生たちの歩く速度を測定したところ、「高齢者」を連想させる単語を配られたグループの歩行速度は、そうでないグループよりも遅くなっていたのです。

つまり、「高齢者」を連想させる単語から影響を受け、学生たちは無意識のうちに高齢者らしく振る舞ったというわけ。この場合、単語のセットが「プライマー」、学生の行動が「ターゲット」です。

単語のせいで無意識に歩く速度が変わるなんて、驚いてしまいますね。このように、プライミング効果は、気づかないうちにあなたの行動を左右しているのかもしれないのです。

プライミング効果の意味3

直接プライミング効果/間接プライミング効果

東京福祉大学で心理学を教える太田信夫教授によると、プライミング効果には「直接プライミング」と「間接プライミング」の2種類があるのだそう。

  • 直接プライミング:プライマーとターゲットが同じ
  • 間接プライミング:プライマーとターゲットが異なるが、関連している

たとえば、顧客にカレー(=ターゲット)を買ってもらいたいとします。直接プライミングを用いて販促をするなら、プライマーにはターゲットと同一の刺激が用いられるので、「カレーのテレビCMを打つ」「カレーのポスターを見せる」などの分かりやすい手段が考えられます。

一方、間接プライミングを使ってカレーの販促をするなら、カレーというターゲットに対し、プライマーとしては「インド」「香辛料」などが考えられます。顧客にインドや香辛料の情報を与え、カレーの購買という行動を選択してもらうのです。

ちなみに、先述した10回クイズの例は、ターゲットである「シンデレラ」と同じではないものの、音が似ている「シャンデリア」がプライマーなので、間接プライミングに該当しますね。

プライミング効果の意味4

プライミング効果の活用法

プライミング効果は、ビジネスや日常生活にどう活かせるのでしょうか? 3つの活用法をご紹介します。

マーケティング

プライミング効果はマーケティングに応用できるとすでに述べましたが、メディア広告などの直接的なPRだけではありません。間接プライミングを応用すると、顧客に気づかれず、さりげないやり方で商品をアピールできるのです。

たとえば、「商品に関連するアンケートを取る」という手段があります。

  • 自動車を売りたいとき
    →「半年以内に新車を買う予定はありますか?」
  • 健康食品を売りたいとき
    →「健康のために何か心がけていることはありますか?」

このような質問がプライマーとなり、「自動車を買う」「健康によい食品を買う」という行動に顧客を向かわせるのです。商品を直接アピールしていないので、顧客に抵抗を感じさせずPRできます。

夢や目標を叶える

プライミング効果を、夢や目標を叶えるのに利用してみましょう。プライミング効果は自分の口癖を変えるのに利用でき、口癖を変えれば夢・目標の実現に一歩近づけるからです。

学習コンサルタントの宇都出雅巳氏によると、「きっと○○できる」「○○になりたい」といったポジティブな言葉は私たちの記憶に影響を与え、前向きな思考・行動を形づくるのだそう。反対に、「どうせ無理だろう」「できないかもしれない」というような口癖や思考が習慣化すると、プライミング効果がネガティブに働き、目標の実現が遠ざかっていってしまいます。

口癖を変える方法としては、人材育成コンサルタント・永松茂久氏の著書『言葉は現実化する 人生は、たった“ひと言”から動きはじめる』(きずな出版、2017年)で紹介されている、「口癖にしたい言葉を、よく目にする場所に貼る」があります。特に、トイレの壁がオススメなのだそう。リラックスできる場所では、潜在意識の働きが活発化しやすいため、言葉の刷り込み効果が高まるのだとか。

口癖にしたい言葉は、壁に貼るだけでなく、スマートフォンのホーム画面・ロック画面に設定するのもよいでしょう。画像作成ソフトを利用し、口癖にしたい言葉を入力した画像を作ってホーム画面・ロック画面に設定すれば、スマートフォンを使うたびに目に入るため、どんどん無意識に刷り込まれていきます。

集中力を高める

プライミング効果は、集中力を高める目的でも活用可能。メンタリストDaiGo氏の著書『図解 自分を操る超集中力』(かんき出版、2017年)によれば、過去に「集中できた」と感じられた環境・時間帯などを記録しておくとよいそう。

これまでを振り返り、集中できたと感じる条件を記録してみましょう。

  • 自分の部屋で、6:00~7:00に集中しやすかった。
  • 近所の喫茶店で、13:00~14:00に集中できた。

すると、プライミング効果によって「自己暗示」がかかり、同じ条件下で自然と集中できるようになっていくのだそうです。

***
人間心理に大きな影響を与える、プライミング効果。仕組みがシンプルなだけに、応用しやすいテクニックなので、仕事や勉強にぜひ取り入れてみてくださいね。

(参考)
ハワード・S・ダンフォード(2013),『ポケット図解 行動経済学の基本がわかる本』, 秀和システム.
Bargh, John, Mark Chen, and Lara Burrows (1996), "Automaticity of social behavior: Direct effects of trait construct and stereotype activation on action," Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 71, No. 2, pp. 230–244.
J-STAGE|長期記憶におけるプライミング
リチャード・セイラー著, キャス・サンスティーン著, 遠藤真美訳(2009),『実践 行動経済学』, 日経BP.
東洋経済オンライン|「口ぐせが現実を変える」が科学的に正しい訳
永松茂久(2017),『言葉は現実化する 人生は、たった“ひと言”から動きはじめる』, きずな出版.
メンタリストDaiGo(2017),『図解 自分を操る超集中力』, かんき出版.

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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