「ピラミッド・ストラクチャー」は、論理展開に役立つツールです。考えを磨き上げ、思考プロセスの矛盾を発見することができます。
それに、物事をわかりやすく伝える際にも欠かせません。
今回は、「説明がいまひとつ苦手だ」と感じている方に、わかりやすく伝えたいときの強力な助っ人、「ピラミッド・ストラクチャー」を紹介します。筆者も例題にて挑戦いたしました。
「ピラミッド・ストラクチャー」とは?
「ピラミッド・ストラクチャー」は、元マッキンゼーのバーバラ・ミント氏によって体系化されました。以下を可能にしてくれる、階層構造のツールです。
- 考えや伝えたいことを整理
- 考えや伝えたいことの論理性を確認
- 論理的な思考を深める
- 主張の説得力を高める
- 主張の問題点を探る
主にコンサルティング会社などで用いられていますが、同氏が著した『考える技術・書く技術 問題解決力を伸ばすピラミッド原則(1999)』をバイブルにしているビジネスパーソンは、決して少なくないはず。
なぜならば、「ピラミッド・ストラクチャー」は、どんな職業の人でも活用できるからです。
「ピラミッド・ストラクチャー」の基本構造は次のとおり。
(※『ダイヤモンド・オンライン|【3 ピラミッド構造】考え整理し論理深める 相手の説得にも効果大 | 1日1つ、1カ月で学ぶフレームワーク30』の図を参考に筆者作成)
まず最初は、一番上の「メインメッセージ」にイシュー(論点)を入れ、次に一段下、そのまた一段下、またその一段下に、2つから4つほどの「キーメッセージ」を入れていきます。
「キーメッセージ」とは、いわゆる根拠のこと。最終的に「メインメッセージ」が確固たる主張になるよう、ピラミッド型に根拠を整理し、並べていくわけです。
上下段の関係は次のように成り立っています。
- 上段から下へ行く際は「Why?(なぜ)」に答える
- 下段から上へ行く際は「So What?(だから何)」に答える
たとえば「この商品がおすすめです」のキーメッセージから、「Why?=なぜその商品がおすすめなのか?」と下に行き、「So What?=優れた機能性があるから、その商品をすすめる」と上に行く――といった具合です。
こうすることで、頂上にある「結論=主張=伝えたいこと」が、下層の「根拠」にサポートされて、強固なものになります。ちなみに根拠の下層は4段程度までが主流とのこと。
グロービス経営大学院教授でグロービス出版局長でもある嶋田毅氏によれば、もしもビジネスシーンにおいて、
- 相手を説得できない
- 反論を受けやすい
- 相手の話が理解しにくい
- 相手の話に納得できない
といったことがある場合、いずれの場合も論理の構造に不備がある可能性が高いとのこと。
また、Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一氏は、ロジカルに話そうと頑張っているのに、相手に言いたいことが伝わらない人は、ピラミッドのてっぺん部分「結論=主張=伝えたいこと」がないからだ、と述べます。
「シンプルに伝える」ということ
たとえばAさんが企画の立場にいるとして、働く女性をターゲットにしたシューズの来期企画に、新しいラインを追加したい場合。その承認を上司から得たいとき――
- 「いま、結構通販なんかで売れているらしいんです」
- 「このフロアの女性たちも、“そんなシューズがあったら欲しい”そうですよ」
- 「定番商品だけだと、〇〇層の女性を取り込めないと思うんですよね」
と伝えるだけでは、「ピラミッド・ストラクチャー」でいう頂上部分がありません。つまり、根拠だけで結論が見えないわけです。
伊藤氏の言葉を借りると、
そうなると、結論は「新ラインを加えたい(だからGOサインをください)」にほかなりません。
その結論で、相手に納得してもらい、動いてもらうには、強力なサポートとなる根拠(理由)が必要であり、根拠に支えられた確固たる主張が必要になるわけです。
ただし、根拠をたくさん並べてしまうと、かえって印象に残らなくなってしまうのだそう。話が長すぎて、何を言いたいのかわからない状態です。
そうしたことから伊藤氏は、
- 1段目に結論を置き
- 2段目で3つほど根拠を挙げ
- 3段目で「たとえば~」と話せる実例を
それぞれ1~2つほど挙げるようアドバイスしています。
(※『新R25 - シゴトも人生も、もっと楽しもう。|自分の話を“超一言”で包み込め。1分で人を動かし、記憶に残る「伝え方の極意」』を参考に筆者作成」)
また、確実に「目的を果たす=相手を動かす」ためには、相手が忘れられないほどシンプルで記憶に残りやすいキーワードが役に立つとのこと。
では、筆者も伊藤氏の3段「ピラミッド・ストラクチャー」を用いて、主張を確固たるものにしてみます。
「ピラミッド・ストラクチャー」を用いてみた
今回は例題にて実践です。
そこで、まずは「メインメッセージ」にイシュー(論点)を入れます。
こちらはアドリブですが、メモを残し、メインメッセージのイメージを「見える化」しておきます。
次に根拠となる「キーメッセージ」を書いていきます。
そして、最後に「たとえば~なんです」と説明できるような実例を挙げていきます。
その際には、先に紹介したように、上段から「Why?(なぜ)」に答えるかたちで下段へ行き、下段から上へ行く際は「So What?(だから何)」に答えるかたちで上がっていきます。
整理しつつ考えを深め、主張の問題点を探り、主張の説得力をより高めるためです。その結果、次のようにまとめることができました。
これでやっと、根拠に支えられた確固たる主張になった印象です。
なおかつ、複数の根拠の実例として紹介できるものの区別や、参考にすべきブランドなどが明確になりました。
そこで、(いいかどうかは別として)筆者が考えた一言のキーワードはこちらです。
よく知られた立ち食いステーキ屋さんみたいではありますが、パンプスを履かない人でも普段使いできるパンプスであることは……、伝わるかも?
「ピラミッド・ストラクチャー」を用いてみた感想
今回はじめて「ピラミッド・ストラクチャー」をやってみましたが、実はこんなに何度も書き直してしまいました。
しかし、何度も書き直すことで
- 自分が目指している方向
- 集めるべき資料は何か
- 掘り下げていくべきこと
などが明確になっていくのを感じました。つまり、GOサインが出たら、次にやるべきことがハッキリしたわけです。
ちなみに、グチャグチャ状態の頭の中を書き出すことから始まるので、最初からきれいに書こうとしないほうがいいでしょう。そこで、おススメはスケッチブックに書くことです。自分の頭の中を描くような気持で、ぜひ実践してみてください。
何をすべきか明確になるので、「さて、何から始めていいのやら?」といった停滞もなくなるはずです。
つまり、「ピラミッド・ストラクチャー」は、思考を整え、行動を促す、脳内ビジュアルです。
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ピラミッド・ストラクチャーの説明と、筆者が実践してみた感想などを紹介しました。論理展開のトレーニングにもなるので、ぜひ気軽に「ちょっと頼みにくいなぁ。どう言ったらいいのかな?」なんてときにもご活用くださいね。
(※記事中の人物の肩書は記事公開当時のものです)
(参考)
GLOBIS 知見録|ピラミッド・ストラクチャー: 研ぎ澄ました論理思考が人を動かす
ダイヤモンド・オンライン|【3 ピラミッド構造】考え整理し論理深める 相手の説得にも効果大 | 1日1つ、1カ月で学ぶフレームワーク30
新R25 - シゴトも人生も、もっと楽しもう。|自分の話を“超一言”で包み込め。1分で人を動かし、記憶に残る「伝え方の極意」
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。