「なるようになる」の意味とは?ケセラセラ心理になれる2つの方法

「なるようになる」の意味1

「なるようになる」という気楽な考え方は、仕事や生活において意外に重要なもの。現実の人生では自分の思い通りに物事が運ぶとは限らず、いくら心配したところで解決しようのない問題がしばしば起こるからです。

特にきまじめな方ほど、未来についてあれこれと考え、不安にとらわれてしまうことは多いでしょう。もちろん、備えや努力は大切ですが、結果を100%コントロールできるわけではありません。どこかの段階で「なるようになる」と割り切ることも必要なのです。

今回は、「なるようになる」という言葉の意味や、「なるようになる」思考の利点、「なるようになる」心理を獲得する方法などを詳しく解説していきます。

「なるようになる」の意味

『明鏡国語辞典』(大修館書店)によると、「なるようになる」は、「物事というものは自然のなりゆきに従うもので、人為でどうこうなるものではない」という意味。「なるようにしかならない」という、より強い表現もありますね。

「なるようになる」という言葉は、相手を励ましたり勇気づけたりしたいときに使われることが多いでしょう。たとえば、大事な出番や試験前など、「なるようになるさ」と声をかけられて気が楽になった経験がある方もいるはず。

「なるようになる」には、いい意味で「割り切った」ニュアンスがあります。私たち個人の力は、社会全体・世界全体に比べてあまりに小さく、物事を100%コントロールすることなどまず不可能です。どれだけ徹底的に準備を重ねても、アクシデントで台無しになってしまうかもしれませんし、試験当日に体調を崩していつものパフォーマンスを発揮できなくなってしまうかもしれません。

このような「自分でコントロールできない領域」については、あれこれ思い悩んだところでどうにもならないもの。時間が浪費され、心理的につらくなるばかりで、得られるものは何もないはずです。ならば、いっそ「なるようになれ」と割り切ってしまい、余計な気苦労を追い払ってしまうことが、一番の解決策になるはず。

もちろん、「どうせ思い通りにならないのだから、努力しなくていい」という意味ではありません。大切なのは、「人事を尽くして天命を待つ」の精神。自分でコントロールできることは全力で取り組んだうえで、コントロールできない部分については、「なるようになる」と潔く天に委ねてしまう、という態度が望ましいのです。

「なるようになる」の意味2

「なるようになる」思考のメリット

「なるようになる」思考をもつと、具体的には以下のようなメリットが期待できます。

余計な悩みが減る

先述のとおり、「なるようになる」思考をもっていると、自分の力が及ばない物事について、余計な悩みを抱えずにすみます。

未来についてあれこれと想像をめぐらし、不安になってしまうことは誰しもあるはず。自分の力でコントロールできる心配事ならいいのですが、「もし急病になったら」「もし災害が起きたら」など、悩んだところで防ぎようがない物事については、できるかぎりの備えをしたうえで、「なるようになる」と割り切ってしまうのが得策です。

緊張が和らぐ

「なるようになる」という考え方ができると、大事な仕事や試験が控えているとき、それほど緊張せずすみます。そもそも、緊張は未来の不確定さから生じるもの。「仕事がうまくいくか」「試験に受かるか」がわからないため、不安になって身体がこわばるのです。

そんなときこそ、「なるようになるさ」と心のなかで唱えてみましょう。いい意味で開き直れ、余計な緊張がほぐれて、やるべきことに集中できるようになるはずです。

人生を楽しめる

「なるようになる」思考のメリットとして精神科医の頼藤和寛氏が指摘するのは、「いまを楽しめるようになる」ことです。

多くの方は、目標や夢を大なり小なりもっているでしょう。その目標に向かって日々努力を積み重ねていることと思います。

しかし、「目標を達成することだけが人生の意味である」と考えるのは、あまりおすすめできません。もしも夢が叶わなかったら、「私の人生はまったく無価値だった」ということになってしまうためです。そして、目標を達成できるかどうかは、先述した「自分の力ではコントロールできない要素」によって左右されることが多くあります。

たとえば、「社内での昇進」が目標の場合。より上のポストに就くには、上司との相性や運、ポストの空き具合、人事の方針などさまざまな要因が絡むため、頑張れは必ず昇進できるとは限りませんよね。

もちろん、目標をもつことや、目標に向かって頑張るのはとてもすばらしいことです。しかし、それ以上に大切なのは、「目標へ向かうプロセスそのものを楽しむ」ことではないでしょうか。仕事のやりがいや、まわりの人々の大切さなど、「いまこの瞬間」の幸せに目を向けられれば、夢が叶う/叶わないにかかわらず、人生は豊かになるはず。

「なるようになる」という考え方をもつことで、結果への過度な執着から解放され、いまを気楽に楽しむ余裕が生まれるのです。

「なるようになる」の意味3

「なるようになる」心理を得る方法1:不安を分類する

では、「なるようになる」思考を身につけるにはどうすればよいのでしょうか。まずは、「不安を分類する」という方法を紹介しましょう。心療内科医の川村則行氏によれば、自分の悩みや不安を4つのタイプに分類してみることで、各タイプに応じた対策を講じやすくなり、「悩みの堂々めぐり」から抜け出しやすくなるそうです。

まず、自分の悩みが「解決可能か」を考えましょう。「自分の力では解決しようのないことだ」と認識できれば、それ以上悩む必要がなくなります。反対に、「努力しだいで解決できる」とわかれば、解決に向けて具体的なアクションを起こせるのです。

次に、「問題が明確かどうか」を考えましょう。本当なら自分の力で解決できる問題でも、そもそも問題を明確に設定していないせいで、解決を困難に感じてしまうことがあるのです。

例として挙げられるのが、「部屋が散らかりすぎていて、どこから片づければいいのかわからない」という状況。部屋を片づける能力そのものはあるわけですが、「何をどう片づけるべきか」という課題を設定できていないため、問題を解決できない状態です。

このような場合、「まずは不要な物を捨ててから整頓や掃除をしよう」と問題を明確にすることで、解決へ向かえます。ゴミ袋を用意したり、掃除機をかけたりする能力はあるはずですからね。

以上、「解決が可能か」「問題が明確か」という2つの基準で判断すると、悩みを以下の4種類に分類できます。

  • 問題が明確で、解決できる悩み
  • 問題が明確でないが、解決できる悩み
  • 問題は明確だが、解決できない悩み
  • 問題が明確でなく、解決もできない悩み

問題が明確で、解決できる悩み

まずは、問題が明確で、かつ解決可能な悩み。「プレゼンテーションの準備が間に合うか不安」のように、具体的なものです。このような悩みであれば、対処法はシンプル。「作業を進める」「作業の効率化を図る」など、悩みを解決すべく、とにかく手を動かしましょう

例:プレゼンテーションの準備が間に合うか不安
対処法:問題を解決に向けて具体的な行動をとる

問題が明確でないが、解決できる悩み

2つめは、問題が漠然としているものの、解決は可能なパターン。「プレゼンテーションの準備として、何をすればいいかわからない」といった悩みです。

この場合、問題を明確にすれば、おのずと解決方法もわかり、具体的なアクションに移れます。プレゼンテーションならば、先輩に質問したり、関連書籍を読んだりしてみましょう。「スライドの下書きをつくる」「時間を計って練習する」など、やるべきことがわかるはず。

例:プレゼンテーションの準備として、何をすればいいかわからない
対処法:問題を明確にする

問題は明確だが、解決できない悩み

3つめは、問題は明確なものの、解決が困難な悩み。「プレゼンテーション当日に体調を崩さないか不安」のようなものです。

自分の体調は、ある程度なら管理できるとはいえ、急病などのリスクを0にすることは不可能です。「自分の力ではどうしようもない」悩みだと言えますから、万全の対策をしつつ、「なるようになる」と割り切りましょう。

例:プレゼンテーション当日に体調を崩さないか心配
対処法:できるかぎりの手を尽くしたら、それ以上は考えないようにする

問題が明確でなく、解決もできない悩み

最後は、問題が明確でなく、解決も困難な悩み。「プレゼンテーション当日に、何かトラブルが起きたらどうしよう」のようなものが挙げられます。

この場合、「もしPCとスクリーンの接続がうまくいかなかったら」「もし電車が人身事故で止まったら」のように、なるべく問題を具体化します。事前準備によって対処できる悩みも、自分ではどうしようもない悩みもあるはず。あらゆる事態を想定し、できるかぎりの準備をしたら、「なるようになる」と割り切りましょう。

例:プレゼンテーション当日に、何かトラブルが起きないか不安
対処法:問題をなるべく明確にし、できるかぎりの対策をする。手を尽くしたら、それ以上は考えない

上記のように不安を分類することで、自分の悩みが「これ以上考えても仕方がないもの」だと判明すれば、「なるようになるさ」という余裕が自然と生まれてくるはずです。

「なるようになる」の意味4

「なるようになる」心理を得る方法2:目の前の仕事を楽しむ

「なるようになる」という心理に到達するには、未来の目標にとらわれすぎず、目の前の仕事や生活を楽しむ余裕をもつことが大切です。それに、「やらなければいけない」という義務感で仕事に取り組む人よりも、仕事に楽しみを見いだしている人のほうが、パフォーマンスや成長度合いが大きくなるのではないでしょうか。

人材育成コンサルタントの村山昇氏によると、仕事に楽しみを見いだすには、常識的な「仕事観」を拡大し、趣味やゲームのような要素を探すといいのだそう。以下は、村山氏が紹介する概念図です。

「従来の仕事観」を拡大し、仕事を楽しめるようになれば、「なるようになる」と思える。

非競争/競争」および「遊び/勤勉」という基準で、グラフは4箇所に分かれます。一般的に考えられている「仕事」は、「他者と競争しつつ勤勉に取り組むべきもの」だと思いますので、グラフの左下に位置します。「従来の仕事観」だと、「競争に勝たなければ、まじめにやらなければ」という意識が強いので、なかなか仕事を楽しめないのです。

そこで、少し見方を変えて、「仕事」の定義を拡大してみましょう。普段の仕事のなかに、以下のようなおもしろみや意義を見つけられるはずです。

  • 自分の成長に資する要素→教養・学び
  • 楽しめる要素→スポーツ・ゲーム
  • 両者を兼ね備えた要素→趣味・アート

具体例としては、以下のようなものが考えられます。

  • Excelでのグラフ作成
    →Excelのスキルアップができる
    →教養・学び
  • 部内の業績争い
    →ゲームのように楽しめる
    →スポーツ・ゲーム
  • プレゼンテーションのスライド作成
    →PowerPointのスキルアップになるし、デザインを楽しめる
    →趣味・アート

仕事に「自分の成長」や「楽しみ」の要素を見いだせれば、心に余裕が生まれ、「なるようになる」と思える。

目の前の仕事に楽しみを見つけ、目的意識だけに縛られない働き方を心がけることで、「なるようになる」という楽観的な心構えになれるはずです。

「なるようになる」と油断しすぎないために

ここまで「なるようになる」というマインドの必要性を説明してきましたが、「なるようになるんだから、頑張らなくてもいいや」と油断してはいけません。未来を気にしすぎないことと、未来についてまったく考えないことは違います。「数年後にはこうなりたい」という理想はもちつつ、その目標に縛られすぎないバランス感覚が大切なのです。

経営コンサルタントの馬渡晃氏によると、最近では日本でも実力主義の傾向が強いため、目標意識・成長意識なしには生き残れない時代になりつつあるのだそう。自分のキャリアにある程度の見通しを立てておくことは、全ビジネスパーソンに不可欠なのです。

自分の成長目標を設定する方法として、馬渡氏は以下の「自問自答法」を推奨しています。

1. 自分のスキルを3種類に分けて考える

馬渡氏によると、ビジネスパーソンとして必要なスキルには、「専門能力」「対人能力」「概念化能力」の3種類があるのだそう。自分のスキルを、これら3つのジャンルに分類してみることで、具体的な成長目標を考えやすくなります。

専門能力

専門能力は、自分の担当する仕事に関わるもの。プログラマーならプログラミングのスキル、経理の担当者なら簿記などのスキルです。

対人能力

対人能力とは、いわゆるコミュニケーション能力ではなく、「他人に対してどれくらいの影響を与えられるか」を指します。いくら人付き合いがうまく交友関係が広くても、相手に影響を与え、動かすことができなければ、「対人能力がある」とは言えません。高い対人能力を発揮するには、自分の人間性を磨くとともに、相手と信頼関係を築くことが必須です。

概念化能力

概念化能力とは、仕事や組織全体を俯瞰的に見る能力のこと。経営者の視点で自分の役割をとらえたり、会社の現状をふまえて事業戦略を立てたりする能力です。社内でのポジションが高くなり、管理職としての役割の幅が大きくなるほど、概念化能力の必要性はより強くなっていきます。

2. 3年間の成長を振り返る

上記の「専門能力」「対人能力」「概念化能力」を意識しつつ、過去3年間に自身がどれだけ成長したかを振り返ります。

  • 3年前と比べ、どんな能力が成長したか?
  • 3年前から成長していない能力は何か?
  • 理想としては、この3年間でどんな自分に成長していたかったか?

といった質問を自分に投げかけ、3年間でできたこと/できなかったことを具体的に洗い出しましょう。

3. 3年後までの成長目標を立てる

振り返りを終えたら、得られた反省をもとに「3年後どうなっていたいか」という目標を考えます。振り返りのときとは反対に、

  • 3年間で、どんな能力を成長させたいか?
  • 能力をどれくらい成長させたいか?
  • 3年後には、どんな自分に成長していたいか?

と自問自答してください。「3年以内に○○の能力を伸ばす」という具体的な目標が定まることで、何を・どのように努力すべきかが明確になり、スピーディな自己成長が遂げられます。

つい「なるようになるさ」とだらけがちな方は、まとまった時間をとり、上記の要領で自問自答をやってみましょう。

「なるようになる」に関することわざ・四字熟語・フレーズ

最後に、「なるようになる」と同じ意味の言葉をご紹介します。座右の銘やスローガンなどのヒントとしてご活用ください。

人事を尽くして天命を待つ

まずは、冒頭で触れた「人事を尽くして天命を待つ」ということわざ。人事は「人の力でできること」、天命は「世のなかの道理や運」を意味します。『大辞林 第三版』では、「人としてできるかぎりのことを実行し、その結果は天の意思にまかせる」と説明されています。

行雲流水

「なるようになる」を意味する四字熟語として挙げられるのは、「行雲流水」。『新明解四字熟語辞典』によると、「空行く雲や流れる水のように、深く物事に執着しないで自然の成り行きに任せて行動するたとえ」です。のんびりとした自然を表現した美しい言葉ですから、座右の銘などにはぴったりでしょう。

ケセラセラ

「ケセラセラ(Que será, será)」は、1957年の米国映画『知り過ぎていた男』の主題歌の歌詞として広まり、日本でも流行した名言です。「ケセラセラな生き方」「ケセラセラの精神で挑む」のように使われます。スペイン語で「なるようになるさ」を意味する「lo que será, será」から来ているそうです。

***
「なるようになる」という考え方が身につくと、不要な悩みやストレスが減り、より楽に生きられるはず。将来への不安に押しつぶされそうになったときは、本記事をヒントにしてみてください。

(参考)

頼藤和寛(1994),『ちょっと“ひと息”ついてみたら? 幸せに気づく心理学』, PHP研究所.
コトバンク|人事を尽くして天命を待つ
goo辞書|「行雲流水」の意味・使い方
コトバンク|ケセラセラ
川村則行(2009),『不安な心が軽くなる本』, PHP研究所.
ITmedia ビジネスオンライン|楽観主義が仕事を変える
馬渡晃(2006),『きっと月曜日が待ち遠しくなる』, 自由国民社.
Harvard Business Review|Skills of an Effective Administrator

【ライタープロフィール】
佐藤舜

大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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